元自衛官が多く所属する全電協株式会社(本社・東京都中央区)。かつて日本の国防を担っていた彼らは今、電気を守ることで国民の生活を守っている。「生涯現役」をうたう全電協、それを体現している86歳現役の小林さんはじめ、技術者として活躍している彼らに、自衛官時代に培った経験から今に活かされていること、そしてこれからを聞いた。50代半ばで定年を迎え再就職に臨む自衛官たち。特集「今も昔も、そしてこれからも」では、第二、第三の人生を歩む自衛官OBから後輩へ、エールとメッセージが送られている。
自らの行動で「働き方改革」|柴戸 哲さん(元航空自衛官)
・年齢 63歳
・入隊 1983年4月
・初任地 北部航空警戒管制団第42警戒群(大湊分屯基地)
・最終任地 第3補給処(入間基地)
・退官 2015年7月(55歳)
・全電協入社日 2019年3月(56歳)
「どんな人でも一人前に育成できる。「人材を育てる」ということにおいて、自衛隊ほど優れた組織はないと思います」と語る柴戸さんは、防衛大学校出身で、定年までの32年間、航空自衛官として国防に従事した。
自衛隊では、どんな勤務環境でも耐えていける忍耐力を得て、その経験は今の職場でもいきている。また、対人関係において、自己主張と譲歩のバランスを保てるコミュニケーション力も磨いてきたという。現在の仕事はサービス業。「電気保安の知識技術のみならず、接客の技術も必要であり、自衛隊時代に得た、対人コミュニケーション術が日々の業務にいかされている」と話す。
人生を見つめなおす
退官後は、再就職支援組織の紹介により製造業の会社に就職した。そこで仕事をしながら自分の人生を改めて見つめなおした。そして、今後の人生のために役立つ資格をもちたいと考え、第三種電気主任技術者(以下、電験3種)の資格を取得。実務経験なしでも採用してもらえる会社を探し、全電協に再就職した。
全電協の社員として働きながら実務経歴を取得し、今は保安業務従事者として、顧客の受変電設備の保安業務を担う。「様々な顧客の対応をする中で、時には過酷な現場もありますが、自分の裁量でスケジュールを組み、仕事ができます。私自身にとって良い『働き方改革』ができた職場です。」
仕事の成否は、自分の腕ひとつ
自衛隊時代は幹部だったので、自ら現場で作業をすることはなかった。その点、今の仕事場は、真逆とも言える。「チームで動くこともありますが、ほとんどは自分一人でお客様を訪問し、点検作業をして、結果を報告するという仕事です。仕事の成否は自分の腕一つにかかっています。苦労は多いですが、自分とは直接関係のないところでの責任を負ったり、誰かに振り回されるということは全くありません。それが私にとっては、とても心地よい勤務環境となっています。血圧や肝機能などの数値も飛躍的に改善するなど、心身の面でも良い影響が表れていると感じています。ストレスフリーな生活を獲得できたという点で、今の仕事を得られたことは、私の人生の中での成功の一つです」
70歳まで走り続ける
趣味は、ウォーキングと食べ歩きという柴戸さん。1日1万歩のノルマを課し、達成すれば好きなものを食べて良し、という生活習慣を続け、体重は20代の頃と変わらない。生涯現役を掲げる会社での今後の目標を尋ねると「社長は「82歳までmustだ!」と言われていますが、取りあえず70歳までは今のペースで走り続けます。その後は、健康状態や家族の状況をみて、そのまま走るか、ペースを落とすか、判断したいと思います」と答えが返ってきた。
自力で再々就職という道も
再就職や転職を考えている後輩へのアドバイスを伺った。「退官直後の就職先は、援護組織に委ねる部分が大きく、選択肢が少ないかもしれません。一度就職したその後、自力で再々就職を試みるのも手段の一つです。私は、個人の時間を確保しつつ、社会貢献に通じる今の仕事に満足しています。また、仕事に見合った報酬を得られると実感できることも、仕事のやりがいにつながっています」
充実した日々を送っていると話す、柴戸さんの歩みは留まることを知らない。
座右の銘 泰然自若(何事が起こっても落ち着き払って、少しも動じないさま)
ドローンのスペシャリストを目指して|小堀 風神さん(元航空自衛隊)
・年齢 26歳
・入隊 1916年4月
・初任地 第2教育群(熊谷基地)
・最終任地 第2教育群(熊谷基地)
・退官 2021年3月(23歳)
・予備自衛官 23歳~
・所属 東京地方協力本部
・全電協入社日 2021年4月(23歳)
現在も予備自衛官として席を置く小堀さん。普段は、全電協で点検支援要員として業務にあたる。自衛隊では、ドローンパイロットのライセンスを取得していた。その技術を生かせる職場を探していたところ、ドローン操縦者の求人を出していた全電協と出会った。
電験3種に挑戦中
いつまで全電協でチャレンジし続けたいか、と尋ねたところ「会社と業務について、全てやり切ったと思える日まで。そのような日が来るかは、わからないですけど」と、答えが返ってきた。その言葉通り、現在は第三種電気主任技術者試験に向けて勉強を続けている。小堀さんのチャレンジは始まったばかりだ。
過去に小堀さんを取材した「日本を護るVOL.01」も併せてご覧ください。
会社員と予備自衛官「二足の草鞋を履く」|安達 功一さん(元予備自衛官)
・年齢 55歳
・予備自衛官 2019年11月~2022年11月(53歳)
・所属 東京地方協力本部
・全電協入社日 2018年1月(48歳)
全電協に入社後、元自衛官の上司から紹介されて予備自衛官として1任期(3年間)訓練を積んだ。全電協は、予備自衛官等協力事業所として認可されており、訓練に参加する期間は会社が業務をサポートする体制が整っている。
チームワークは自衛隊も会社も同じ
「予備自衛官になる方は職業も年齢もバラバラで、様々な方々と出会えたことが一番よかったです」と話す安達さん。現在は、全電協で自家用電気工作物の保安管理業務を担っている。自衛隊で学んだ、規律・チームワーク・仲間への思いやりは、今の仕事に直接生かされているという。
人生は長い!
予備自衛官として3年間は、志をもって国の任務にあたったと自負する。「常に規律を重んじて行動するなど、普段の日常生活ではなかなか経験できることではありません。若い世代のできるだけ多くの方々に是非経験いただき、今一度自分の母国とは何かを考える機会ができればと思います」
生涯現役を掲げる全電協。安達さんは、健康で周りに迷惑をかけない70歳を目指す。「人生は長いので、まだこれからです。頑張って下さい」と後輩にもエールを送る。
数年前に父を亡くした安達さん。「自分自身も死を意識するようになりました。一度だとしても出会いを大事にしたいです」と話す安達さんの座右の銘は「一期一会」。
座右の銘 「一期一会」
生涯現役を体現する86歳|小林 進さん(元航空自衛官)
・年齢 86歳
・入隊 1958年8月
・初任地 中部航空警戒管制団基地業務群通信隊
・最終任地 中部航空警戒管制団業務隊本部(入間基地)
・退官 1990年10月(52歳)
・全電協入社日 2005年4月(68歳)
若い頃から電気関係の仕事に就きたいという夢があった。小林さんは、20歳で自衛隊へ入隊してから86歳を迎えた現在まで、国防の最前線、そして全電協のお客様を相手にその夢を叶え続けている。自衛隊時代に叩き込まれた「即時現場へ急行」という行動規範は、全電協入社後も小林さんが大切にしてきたことだ。
感謝の気持ちをもって日々を過ごす
現在、全電協で最高齢の86歳。「民間企業のお世話になり、33年が過ぎようとしています。自衛隊に奉職した32年という年月を超えたことを思えば感無量の心境です。感謝の気持ちをもって日々を過ごすことができるのは、幸せです」と小林さん。
一つの判断ミスが命にも関わる
自衛隊時代には、日航機事故で救難支援にあたったことをはじめ、様々な経験をつんだ。その1つ1つが、現在の仕事にも役立っているという。全電協はどのような職場か、一言で教えて下さい!と伺うと、「今まで生活の中で得たことをいかせる職場です。ぜひ一緒に働きましょう!」と返ってきた。「仕事は、責任が果たせると思う年齢までは、現役でチャレンジし続けたい」と今後の抱負を語る小林さん。再就職を考えている後輩には「今までの生活の中で得たことを活かせる現場で働いてください」とエールを送った。
仕事以外の時間も、充実した毎日を過ごして、何事も幅広く楽しみたいと話す眼差しは、しっかりと前を向いている。
座右の銘 「己の信ずるところ」のものを持って!(依って立て)
過去に小林さんを取材した「日本を護るVOL.05」も併せてご覧ください。
5月に行われたOB会の様子や山口社長のインタビューなどを特集としてまとめていますので、併せてご覧ください。
<タイトルの写真について>
使用した写真は行天さんにご提供いただきました、小隊長時代のお写真です。ご提供いただきありがとうございました。
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