元自衛官が多く所属する全電協株式会社(本社・東京都中央区)。かつて日本の国防を担っていた彼らは今、電気を守ることで国民の生活を守っている。「生涯現役」をうたう全電協で、電気主任技術者として活躍している彼らに、自衛官時代に培った経験から今に活かされていること、そしてこれからを聞いた。50代半ばで定年を迎え再就職に臨む自衛官たち。特集「今も昔も、そしてこれからも」では、第二、第三の人生を歩む自衛官OBから後輩へ、エールとメッセージが送られている。
自分で切り開く第二の人生|行天 浩三さん(元陸上自衛官)
・年齢 60歳
・入隊 1986年3月
・初任地 第1電子隊(北海道東千歳駐屯地)
・最終任地 陸上自衛隊幹部学校
・退官 2018年7月(55歳)
・全電協入社日 2024年2月(60歳)
全電協への入社のきっかけは、多くの元自衛官の先輩がいたから、という行天さん。現在は、保安業務従事者(電気主任技術者)として仕事に従事している。自衛隊時代から第二の人生を考え、計画的に動いてきたことが、結果的に大正解だったと振り返る。
自衛隊勤務中に資格を取得
自衛隊を55歳で定年退職し、第二の人生として次の仕事を見つけるのは大変難しいことだと、自身も自衛隊を定年まで勤め上げた行天さんは実感を持って話す。「実際に私の同期の中でも、定年後の次の職場で2~3ヶ月で早期退職した者も多くいます。先輩の話を聞いたりする中で、定年時に次の仕事を見据えた資格を保有することが大切だと思いました。入隊中に、第三種電気主任技術者(以下、電験3種)の資格を取得したことは、今振り返ってみても、とても良い選択をしたと思います。」
実務経験取得の壁
電験3種を無事に取得した行天さんだが、思わぬ壁が立ちはだかった。「すぐに資格をいかして働けると思っていたのですが、保安業務従事者(電気主任技術者)になるには更に実務経験を5年積む必要があるということを知り、目の前が真っ暗になったことを覚えています。将来が見えなくなったと言っても過言ではありません」
それでも、「5年後の60歳になれば実務経験を取得でき、その後、保安業務従事者(電気主任技術者)として10年以上働けると思えば必要な期間だ」と前向きにとらえるようにしたという。工場の電気主任技術者として5年間働き、実務経験を取得し、現在は保安業務従事者(電気主任技術者)として忙しい日々を送っている。
長く働ける会社という選択
「電験3種は、合格率が10%から16%まで上昇していますし、実務経験証明書の取得期間も5年から3年に短縮されたので、保安業務従事者(電気主任技術者)を目指しやすくなりました。何よりも、全電協は、長く働ける会社であることがとても魅力で、特に健康な心身を育成した自衛官の再就職先として、大変良い選択先ではないかと思います。保険の外交員や警備員として再就職する道もありますが、電験3種を取得し全電協に入社する第二の人生はとても有意義です」と、自信をもって話す。
目標は、最低70歳
自衛隊時代、高等工科学校で教官として高校生の先生として教育したことが、特に印象に残っているという。なぜなら、多くの学生が経済的に困窮していることを目の当たりにし、心が痛んだからだ。高校3年生の時に父親が他界し、経済的に苦しい時期を過ごした行天さん自身の経験と重なった。
「今は未来のことを考えるのも難しいほど、大変な時期かもしれない。だからこそ若い後輩達にも、自衛隊時代、そして第二の人生で様々な可能性があることを知ってほしい。最低70歳までは働きたい。最高健康寿命(自動車免許証返納)まではがんばりたい」と力強く目標を掲げる。
座右の銘 できる、できる。余裕、余裕。世界のために最高の自分を発揮します。とつぶやくこと
キーワードは「初心に返る」|田中 秀樹さん(元陸上自衛官)
・年齢 58歳
・入隊 1981年4月
・初任地 東部方面武器隊第306武器野整備中隊(霞ヶ浦駐屯地)
・最終任地 システム通信団システム開発隊(市ヶ谷駐屯地)
・退官 2021年3月(55歳)
・全電協入社日 2021年4月(55歳)
自衛隊時代に印象に残っている出来事は、「指揮システムの導入と改修に携われたこと。特に指揮システムAP2000(Advanced Paradigm 2000)の誕生を目の当たりにできた事は良い思い出です」と話す田中さん。現在は、第三種電気主任技術者の資格をいかして、電気保安業務を担う。自衛隊時代に学んだ「何事も諦めずに耐え忍ぶ。知恵を絞り出す」という精神は、現在の仕事にもいかされている。
心に留める「まだ若い」
後輩に伝えたいことを尋ねると「初心に返って働くと、とても楽しく働けます」と答えが返ってきた。全電協に入社して数日後に、「まだ若いから、これから頑張りなさいよ」と、80歳超の方から励まされ、とても若返った気分になったという。「お陰様で極めて自然に初心に返ることができ、変な見栄を張ることもなく、様々なことを聞いて教えてもらうことができました。大変有り難い一言だったと思います」と、頼もしい先輩からの一言を教えてくれた。
田中さんに何歳まで働きたいか尋ねたところ、「まずは65歳、その後は5年刻みで考えます」と答えが返ってきた。今後も「まだ若い」と思いながら人生を楽しみたいという。
座右の銘 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
第三の人生でも健康第一|近藤 力三さん(元航空自衛官)
・年齢 67歳
・入隊 1979年
・退官 56歳
・全電協入社日 2020年2月(63歳)
自衛隊を定年退職した後、民間企業に勤め、その後63歳で全電協に入社した近藤さん。健康な体に感謝し、充実した生活を送っている。
民間企業は利益が優先
自衛隊は、部隊の精強化を図るため日々厳しい訓練を重ねている。その結果、体力が向上し、自然に健康が維持できることが当たり前であった。ところが、民間企業に勤めると、それがいかに当たり前ではなかったかと痛感した。「体力向上、健康維持は完全に各人の自主性に任されます。そのため、勤務時間外に自ら進んで時間を作り、運動をしなければなりません。これが思う以上に難しいのが現実です」と、民間企業に働き始めたばかりの頃を振り返った。
また、自衛隊と民間企業の異なる体質にも気づいた。自衛隊時代には、利益を考えて動くことはあまりなかった。「民間企業では利益が優先されます。その利益を生み出すためにも健康は重要です」仕事もプライベートも、人生を充実させるためには健康は最も重要な基盤であると、実感する毎日を送っている。
素晴らしい経歴よりも健康第一
近藤さんは、自衛隊について全く知識がないまま、高校の先生に反対されながらも入隊した。健康を維持しながら仕事に従事できる今、結果的に自身にとって正しい選択であったと振り返る。
「どんなに素晴らしい自衛隊時代の経歴も、定年して外へ出れば基本的に関係はない。残りの人生をいかに健康で、充実して送れるか。色々な世界を自分自身の目で見て、その土地の文化に触れ、残り少ない人生をエンジョイできたら、思い残すことなくゴールに向かえると確信しています」と、後輩にもメッセージを送った。
社会に役立っていると実感できる会社|林 秀樹さん(元陸上自衛官)
・年齢 71歳
・入隊 1976年4月
・最終任地 システム通信団システム開発隊(市ヶ谷駐屯地)
・全電協入社日 2014年12月(62歳)
全電協への入社のきっかけは、「自衛隊時代に第三種電気主任技術者を取得していたこと。そして、自衛隊退職後に勤めた職場を定年になったこと」だった。つまり、他の会社で定年退職を迎える年齢であっても、働く意欲のある人を受け入れるのが、全電協である。
いかされる自衛隊時代に学んだ心構え
現在は、点検報告書の報告という業務を担っている林さん。70歳を超えた今、全電協という新しい人生のステージに立っている。自衛隊時代に心に残っていることは、陸上幕僚監部勤務で素晴らしい上司(元化学兵器禁止機関(OPCW)査察局長の秋山一郎さん)に巡り合えたこと。そして、優秀な後輩に出会い、その仕事ぶりを学べたことだという。
「自衛隊は、外から見るとやりすぎではないかと思うほど教育訓練を実施していますが、過酷な訓練を積み重ねているからこそ、実際の現場で想定を越えることはありません。そのような心構えは、現在の仕事でもいかされています」日頃から準備を怠らず、どんな状況でも冷静に対応できる力こそ、元自衛官の強みの一つだろう。
やりがいを大切に
「65歳を超えても、社会に役立っていると思えることは楽しいし、やりがいがあると思います。私も健康が続く限り全電協でがんばりたいと思います」と、抱負を述べる林さんのチャレンジは、まだまだ続く。
座右の銘 至誠(この上なく誠実なこと。まごころ。)
5月に行われたOB会の様子や山口社長のインタビューなどを特集としてまとめていますので、併せてご覧ください。
<タイトルの写真について>
使用した写真は行天さんにご提供いただきました、小隊長時代のお写真です。ご提供いただきありがとうございました。
全電協株式会社
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-1-13
03-3808-2411
https://www.zendenkyo.co.jp/