海上自衛隊は、主力部隊・自衛艦隊の創設70周年を記念し、6月27日、横須賀基地の「海上作戦センター」(神奈川県横須賀市)を初めて報道陣に公開した。

 同センターは、国内外における部隊を運用する拠点。公開された「第1作戦室」は24時間態勢で運用されており、北朝鮮の弾道ミサイル発射などの警戒監視のほか、有事や大規模災害といった緊急事態が発生した場合に重要な役割を果たす。

 海上作戦センターは令和2年10月1日に発足。自衛艦隊や護衛艦隊など6つの司令部を1つの庁舎に集約し、運用の効率化を図った。現在は約600人態勢で運用されている。

 地下に設けた第1作戦室は24時間態勢で運用されており、広さは約1000平方メートル。正面には各司令官の席が設けられている。有事の際はもちろん、大規模災害などが発生した場合、最大で百数十人を収容できる。

画像: 最大で百数十人収容可能

最大で百数十人収容可能

 室内には台湾有事を想定したとみられる、台湾・南西諸島周辺の大きな地図が広げられていたほか、壁一面には大小のモニターが並ぶ。また、陸、空の各自衛隊に加え、海上保安庁や米海軍などとの連携拠点にもなっている。

 同センターの幹部は「あらゆる情報がセンターに集まってくる。これらを分析し、即座に対応できるように米海軍などとも情報共有できる態勢を整えている」と話す。

 このほか、自衛艦隊司令官室や幹部が打ち合わせなどに使用する作戦執務室も公開された。

 自衛艦隊司令官を務める齋藤海将は同日の記者会見で、今後の戦闘の在り方に触れ、「情報戦が主体となり、領域横断作戦や無人アセットなどに注力する必要がある」と説明した。海上作戦センターの今後について「作戦の長期化や大規模化に備え、在日米軍の幕僚らが寝泊まりや食事をできるような施設の建設を進めているところだ」と明かした。

画像: 自衛艦隊司令官:齋藤海将

自衛艦隊司令官:齋藤海将

<編集部より>

 陸海空自衛隊が発足してこの7月1日に70年を迎え、その節目に合わせ、自衛隊ではさまざまなイベントを実施しています。この日、海上自衛隊の自衛艦隊は神奈川県横須賀市の横須賀基地に停泊している護衛艦「いずも」艦内で記念式典を行いました。式典に先立って報道陣に初めて公開されたのが「海上作戦センター」でした。

 防衛日報では本日(7月10日付)2面で記者の取材を基に、その存在が日本にとって極めて重要なものであるということを担当者の説明を受けて伝えました。何よりも、自衛隊の中で「作戦」と名の付く場には、一般人だけでなくメディアでも足を踏み入れることはなかなかできないのは当然のこと。記者の気合はいつも以上に入っていました。

 横須賀市には、海自をまとめる自衛艦隊司令部のほか、護衛艦などの艦艇部隊を一元指揮する護衛艦隊司令部、そして岩手県以南から三重県以北までの太平洋側の防衛警備を担当する横須賀地方総監部など重要な施設が集まっています。

 センターはその中で6つの司令部を庁舎内に置くだけでなく、同じ横須賀市を拠点とする米海軍の少佐も連絡官として常駐し、日米間の連携も取りやすくしているといいます。海自の‶心臓部〟という役割だけでなく、国内外における部隊の運用の拠点です。その中心となるのが、新聞でも写真を大きく使って紹介した地下の「第1作戦室」でした。

 広さ約1000平方㍍、最大13枚に分割された大型モニターや小型モニターが中央にどーんと置かれ、有事の際は百数十人が詰めることができる机やいすが並んでいました。担当者曰く、「あらゆる情報が集まってくる」という拠点です。記者もその圧倒的な迫力に驚かされたといいます。

 当然ながら公開時のモニター画面は機密性のない、ありきたりの内容ですが、これがいざ、任務開始となると、さまざまな情報が目の前の画面につぶさに映し出され、司令官らが作戦指揮を執ります。24時間態勢で周辺海域に展開する艦艇に指示を出すなど、映画さながらの様相となる拠点です。それこそが、作戦室の作戦室たるゆえんですから。

 グレーゾーン事態を含む平時から有事に至るあらゆる不測の事態に対して、ほかの自衛隊や米軍、関係省庁との緊密な連携の下で即応できる態勢を確立した海上作戦センター。海自の作戦中枢として、大きな期待が寄せられています。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報7月10日付PDF


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