<宮城>船岡駐2施設団(団長・黒羽陸将補)は5月11日から6月3日の間、モンゴル国エルデネト市近郊に所在する第234部隊で、測量、道路構築に関する能力構築支援事業を行った。事業は、モンゴル軍工兵部隊のPKO派遣に向けた施設分野における人材育成を目的として、2014年から開始され、2施設団は18年から隊員を派遣している。

 今年度は、事業開始から10年という節目の年であり、測量、道路構築の集大成という位置付けの中、2施設団隷下の10施設群の土屋2陸佐以下9人の隊員が参加した。

 活動の舞台となる第234部隊が所在するエルデネト市は、モンゴル国の首都ウランバートルから約400キロ北西に位置し、世界5大銅山である「エルデネト鉱山」を有するモンゴル第3の都市。モンゴル最大級のセレンゲ川が悠々と流れ、水辺と草原のコントラストが美しい地域だ。

画像: 道路測量指導

道路測量指導

 令和6年度の事業内容は、アスファルト道約550メートルの構築と暗渠などの排水設備の構築。モンゴル人は、ほとんどすべての者が工事に関する基本的な知識、技能を有しており、自ら住む家屋を家族で作り上げるほどの技術を有すると言われている。

 その半面、派遣における工事内容であるトータルステーションを使用した屈曲部を有する道路測量技術やアスファルト舗装などの専門的な器材と技術を有する特技の保有は限定的で、自衛官による専門的な指導・助言をもとに工事を進める必要があった。

画像: アスファルト舗装指導

アスファルト舗装指導

 このため、事業に参加したモンゴル軍の要員50人は、モンゴル国内各地より施設技術を担う基幹要員が集められていた。

 このような状況の中、事業に参加した自衛官は、最年少が20歳という若さ。海外派遣はもとより海外旅行に行ったことがないという隊員も多数散見されたが、これまで部隊などで学んだ測量や工事施工に関する知識を最大限に発揮し、外国でも臆することなくモンゴル軍の指導・助言に励んだ。

 工事実施間は、アスファルト舗装を行う際に使用する乳剤を散布する器材の故障やアスファルト合材の運搬遅延、激しい雷を伴う降雨など、工事を実施していく中でいくつもの困難な状況に遭遇したが、その都度、自衛官とモンゴル軍が相互に知恵を出し合い、協力することにより全ての工事を無事完成させ、5月30日の訓練閉講式の日を迎えることができた。

 派遣隊員は、派遣活動を通じてモンゴル軍の施設技術能力向上に寄与するとともに、文化・言語の違いを超えて指導する難しさなどを実感し、視野を広げ、達成感を持って帰国した。

画像: 訓練開講式

訓練開講式

 2施設団は「引き続き派遣活動で得た成果を今後の各種活動に生かしていきます」としている。

画像: モンゴル相撲

モンゴル相撲


◆関連リンク
陸上自衛隊 船岡駐屯地
https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/funaoka/camp_funaoka/index.html

<編集部より>

 防衛省・自衛隊が積極的に取り組んでいる「能力構築支援」は、平素から継続的に安全保障・防衛関連分野における人材育成や技術支援などを行い、支援対象国自身の能力を向上させることで地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するための取り組みです。

防衛日報の本日(7月3日付)2面のトップ記事は、船岡駐屯地2施設団隷下の10施設群の9人がモンゴルで軍工兵部隊の指導を行った報告を取り上げました。事業開始から10年。今回は道路の構築の集大成として、測量技術や舗装作業、排水設備などの技術を「伝授」しました。

 施設部隊はどちらかといえば前線で戦う部隊が、より戦いやすい環境を整えるための「裏方」の役目ですが、海外ではまだまだ技術的に十分ではない国・軍も多く、指導者自体も少ないのが現状といわれています。そこで施設部隊の登場です。こうした取り組みでは欠かせない存在ですから、海外ではよりその技術が生かされ、軍同士、国同士の交流が増し、もっと言えば相手国の平和や地域の安定の手助けにもつながるわけです。

 それは、インド太平洋地域の安定、日本にとっても望ましい安全保障環境の創出にも大きく貢献することになるのだと思います。海外での支援は施設部隊が国内とは別の場で輝く舞台といえるのかもしれません。

 今回はモンゴル軍から総勢50人もの要員が参加したようです。自衛隊員はこれまで部隊などで学んだ知識を最大限に発揮し、逆にモンゴル軍からの意見もあるなど、相互に知恵を出し合うことも報告にありました。「教えながら、自らも学ぶ」。これこそ、どんな職業でもある話ですから、最年少で参加したという20歳の隊員は、指導する難しさも指導しながら学ぶこともすべて、大きな勉強となったに違いありません。

 防衛省によると、能力構築支援事業は、インド太平洋地域を中心に、16カ国・1機関に対し、人道支援・災害救援、PKO(国連平和維持活動)、海洋安全保障、音楽隊などの分野で行っています。相手国との2国間関係の強化が図られるほか、地域の平和と安定に積極的・主体的に取り組む日本の姿勢が内外に認識されることで、防衛省・自衛隊を含む日本全体への信頼が向上するといった効果もあるとしています。

 船岡駐のように、能力構築支援活動の報告と写真を見るとき、いつも思うことがあります。相手国の兵士たちの真剣な表情、作業を終えた際の素直な笑顔です。現場には国と国というレベルではなく、人間と人間との、教える側と教えてもらう側との普通のコミュニケーションがあります。2国間関係の強化が育まれる瞬間でもあります。

こうした自衛隊が海外で力強く活躍する姿を、今後も積極的に紹介していきたいと思います。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報7月3日付PDF


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