ソマリア沖アデン湾の海上交通路(シーレーン)で海賊対処にあたった海上保安庁の第45次派遣捜査隊の8人が12月18日、石井昌平長官に無事の帰国を報告した。派遣された隊員は海上自衛隊の護衛艦「いかづち」に乗艦し、同海域で海賊対処の任務に従事した。
派遣期間は令和5年6月3日から12月6日までの197日間。派遣中はソマリア沖アデン湾で、海賊被疑者の逮捕などの司法活動に備えたほか、海上自衛官とともに海賊行為の監視・情報収集を行った。具体的には直接護衛2回のほか、多国籍部隊と一定の海域をパトロールする「ゾーンディフェンス」にも76日間参加した。
石井長官は帰国した隊員8人を前に訓示。「海賊を生み出す根本的な原因は依然として解決していない。最近も、ソマリア周辺海域で、民間船への襲撃事案が発生するなど、海賊の脅威はいまだに存在している」と厳しい現状を報告した。その上で、「世界の海上輸送にとって、極めて重要なソマリア周辺海域の安全確保に大いに貢献した」と隊員たちをねぎらった。
45次隊の宮本幹央隊長は「通常の海上保安業務では経験できないことが経験できた」と強調した。さらに続けて「今後、さらなる連携強化を図る海上自衛隊のことを知ることができたのが一番の成果。グレーゾーン事態、統制要領などのさまざまな場面で海自と共に任務を遂行していきたい」と話した。
海保がソマリア沖アデン湾へ派遣捜査隊を初めて派遣したのは平成21年3月で、今年で15年目を迎えた。現在、派遣中の46次隊まで、368人の海上保安官が海賊対処にあたってきた。日本を含む国際社会の取り組みにより、ソマリア周辺海域での海賊事案は低水準で推移している。だが、活動範囲外ではあるが、周辺海域でイエメンの親イラン武装組織フーシによる商船襲撃が頻発化しており、国際社会にとっても海賊対処の任務は重要なものとなっている。
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全て防衛日報社が撮影