【2022年11月25日(金)1面】 防衛省は11月18日、北朝鮮が同日午前10時14分ごろ、首都平壌近郊から東方向の日本海に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)級1発を発射したと発表した。ミサイルは約69分間飛翔(しょう)し、北海道渡島(おしま)大島の西約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したとみられる。北朝鮮のミサイルが日本のEEZ内に落下したのは、今年3月24日以来11回目。浜田靖一防衛大臣は会見で、弾頭重量などによっては、射程は米国全土を収める1万5000キロを超える可能性があると述べた。

北海道沖EEZ内に落下 米全土が射程内の可能性

 防衛省によると、ミサイルは11月18日午前11時23分ごろ、渡島大島沖に落下したとみられ、発射された弾道ミサイルは、最高高度約6000キロ程度で約1000キロ程度飛翔したと推定。通常より意図的に角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射されたとみられる。

 船舶などへの被害は確認されていないという。

 北朝鮮のミサイルが日本のEEZ内に落下した3月にもロフテッド軌道でICBMを打ち上げ、最高高度が過去最高の約6000キロ程度、過去最長の約71分間飛翔した。今回のミサイルは、最高高度がほぼ同じで、このときに次いで過去2番目の飛翔時間だった。

 北朝鮮は11月17日にも弾道ミサイル1発を発射しており、今月だけで6回目=表参照。巡航ミサイルも含めると、今年34回目の発射となった。

画像: 北海道沖EEZ内に落下 米全土が射程内の可能性

 また、ICBM級の可能性がある弾道ミサイルを発射したのは、11月3日以来、10回目。

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 首相官邸ホームページによると、岸田文雄首相は日本時間の午前11時すぎ、訪問先のタイの首都バンコクで、「(北朝鮮は)これまでにない頻度で挑発行動を繰り返している。断じて容認できない」と強く非難。政府は外交ルートを通じて抗議した。

 また、防衛省によると、午後0時20分ごろから臨時記者会見を行った浜田大臣は、「今回のICBM級弾道ミサイルは、飛翔軌道に基づいて計算すると、弾頭重量などによっては、1万5000キロを超える射程となり得るとみられ、その場合、米国本土が射程に含まれることになる」と説明した。

 北朝鮮は、米本土に到達するICBMの開発を加速させており、米国に対する抑止力を強化する狙いがあるとみられている。

 浜田大臣は、Jアラート(全国瞬時警報システム)で情報発信を行わなかったことについては、「(Jアラートは)わが国本土に落下する場合に出すことが基本。海上に落下する場合は出さない。発射時点から計算した上で常に考えている」と述べた。

画像: 会見する浜田大臣(防衛省・自衛隊ツイッターから)

会見する浜田大臣(防衛省・自衛隊ツイッターから)

 さらに、首相官邸ホームページによると、松野博一官房長官は会見で、岸田首相の指示に基づきNSC(国家安全保障会議)の4大臣会合を開催したと説明。会議では、朝鮮半島の緊張の高まりに関して集約するとともに、さらなる事実関係の確認をし、分析を行ったことを明らかにした。

 一方、松野長官は「破壊措置については実施していない」と述べたほか、海上に落下したとみられる今回のミサイルの回収については、「海域の状況を踏まえ、技術的な観点などを総合的に勘案した上で判断する必要がある」とした。

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 松野長官は11月21日の会見で、「18日に発射されたミサイルは新型ICBM級『火星17号』と同型のものと推定される」と述べた。

 北朝鮮は9月以降、ミサイルを異例の頻度で発射している。防衛省は、「一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり、強く非難する」とした上で、「引き続き、米国などと緊密に連携し、情報の収集・分析および警戒監視に全力を挙げる」としている。

今回発射に関連か、空中で確認

 北朝鮮が11月18日午前10時14分ごろ、平壌近郊から1発のICBM級弾道ミサイルを、東方向に発射したことを受け、防衛省・自衛隊は空自2航空団所属のF15、航空救難団所属のU125A、海自2航空群所属のP3Cを発進させ、被害情報の収集を行ったと発表した。

 その際、F15が、今回発射された弾道ミサイルに関連していると推定されるもの=写真(防衛省発表)=を空中で確認したことを明らかにした。

画像: 今回発射に関連か、空中で確認

日米が共同訓練 翌日はB1Bも参加

 北朝鮮が11月18日、ICBM級ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾させるなど、日本を取り巻く安全保障環境がより一層厳しさを増す中、空自と米軍は同18、19の2日連続にわたり、日米共同訓練を実施した。

 統幕の発表によると、18日は日本海上の空域で空自6航空団のF15戦闘機4機と米軍第35戦闘航空団のF16戦闘機4機が参加した。ミサイル発射の即日訓練を実施することで、日米同盟の対処力を示す狙いがあるとみられる。

 また、19日には、九州北西の空域で空自8航空団のF2戦闘機5機と米軍第28爆撃航空団のB1B戦略爆撃機2機が参加した。ともに、各種戦術訓練を行った。

 統幕は「強固な日米同盟の下、あらゆる事態に対処する日米の強い意思と自衛隊と米軍の即応態勢を確認するとともに、共同作戦能力のさらなる強化を図った」としている。

 自民党安全保障調査会長で元防衛相の小野寺五典氏は自らのツイッターで連日の日米共同訓練に言及。「弾道ミサイル発射を続ける北朝鮮に日米同盟の抑止力を見せつける重要なミッション」とツイートした。

 日米は、北朝鮮のミサイル発射に対し、けん制のため空自戦闘機と米爆撃機が11月5日にも九州北西で訓練している。

海自イージス艦、ハワイ沖で弾道弾の迎撃試験に成功

 海上幕僚監部は11月21日、海自が米ミサイル防衛庁、米海軍の支援の下、新型イージス艦(護衛艦)「まや」と「はぐろ」の弾道ミサイル防衛に係る機能確認のため、発射試験を実施し、成功したと発表した。

 日米が共同開発した弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」を海自の艦艇が発射したのは初めて。海幕は「今回の成功によって、わが国の弾道ミサイル迎撃能力がより一層向上した」としている。

 発射試験は、米ハワイ州周辺の海空域で「まや」が11月16日、「はぐろ」が同19日、同州カウアイ島の太平洋ミサイル射場から発射された弾道ミサイル標的に対し、SM3による迎撃を行う試験を実施。「まや」がSM3ブロックⅡA、「はぐろ」がSM3ブロックⅠBを発射し、ともに大気圏外で標的に命中、成功したという。

 護衛艦2隻が同時期にSM3発射試験を実施したのは初めてで、実発射を伴わない追尾試験(11月21日)を実施し、新規機能を確認した。

画像: 「まや」から発射されたミサイル(海幕提供)

「まや」から発射されたミサイル(海幕提供)

画像: 北朝鮮、ICBM発射 69分間飛翔「ロフテッド軌道」か

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