【2022年11月1日(火)1面】
自衛隊が伝える「防災」の取り組み
頻発する地震、この夏、全国に猛威をふるった台風によるさまざまな災害。普段からの備えや、いざというときの対応は重要だ。事前準備や「自助・共助」の大切さ、災害時に役立つ心構え、応急手当ての実習、水難防災の教育…。防災への関心が高まる中、さらなる意識の向上を図ってもらうため、自衛隊は毎回、さまざまな取り組みを実施している。各地の様子をまとめて紹介する。
静岡地本
富士所「命を守る」を講話
三島所「自助・共助」が重要に
静岡地本富士地域事務所(所長・本間3陸尉)は10月16日、「富士山こどもの国」(富士市)で開催されたイベント「はたらく車大集合」に参加した。イベントは、幼児や小学生らを対象に「さまざまな現場で活躍する働く車と仕事について詳しく聞こう」がテーマで、同施設が2年ぶりに開催した。
会場には自衛隊車両のほか、消防車や救急車、ごみ収集車、積載車、ショベルカー、高所作業車が展示され、イベントを楽しみにしていた多くの家族連れが訪れた。
富士所は、小型・中型トラックを展示するとともに子供用迷彩服試着コーナーも設置し、自衛官気分で運転席に座ったり、写真撮影を楽しんでもらった。
子供たちからは「後ろの荷台には何人乗れますか」「一番大変だった災害派遣はいつですか」などの質問があり、広報官が「東日本大震災は規模が大きくて大変だったよ」と答えると、「僕も人の役に立ちたい」とうれしい言葉を聞くことができた。
また、同施設内の研修室では「こども防災寺子屋」が開催され、依頼を受けた本間所長が「災害から命を守る」をテーマに、幼児から小学校低学年の親子を対象に講話を行った。
本間所長は、命を守るための準備や災害時に取るべき行動について話した後、「命を守る簡単○×クイズ」を行い、事前準備の大切さや慌てず行動するための意識付けを図った。最後は、避難時に役立つ安全な姿勢を紹介し、姿勢による安定性の違いを体験してもらった。
富士所は「今後も地域のイベントなどで自衛隊の活動や魅力を発信するとともに、身近に感じることができるような広報を実施していく」としている。
三島募集案内所(所長・松本2陸尉)は10月13日、三島市立長伏小学校で「命を考える日」というテーマで児童に対して防災教育を実施した。
1、2年生約80人、3、4年生約80人、5、6年生約120人の3回に分けて行い、低学年は講話と質疑応答、中学年は講話と質疑応答のほか、はさみなどを使わないビニール紐(ひも)の切り方・毛布を使った寝袋作成体験、高学年は中学年の内容に加え、応急担架の作成と搬送体験を行った。
講話では、自衛隊の災害派遣の流れや実際に県内で災害が発生した場合の対応などを紹介。日頃の備えや自分たちでできることを行うなど、「自助・共助」が大切であることを伝えると、児童たちは真剣な顔つきで聞き入っていた。
また、中・高学年の教育では、クラスの代表者が3人1グループで、毛布をビニール紐で縛って作る寝袋や、2本の棒と毛布を使った簡易担架の作成・搬送体験を行った。
簡易担架に乗る患者役を希望する児童も殺到し、「身近にあるものでつくった担架でも、しっかり人を運べるんだ」「寝袋もすごく暖かい」と、体感しながら役立つ知識を身に付けていた。
三島所は「今後も学校などで防災教育を行い、子供たちに災害対策の重要性や知識を伝えられるよう努めていく」としている。
福島地本
福島所 役立つテクニックを体験
相双所 水難防災の基礎を伝授
福島地本福島募集案内所(所長・麓3陸佐)は9月25日、福島県営あづま総合運動公園内で44普連の協力の下、小学生、保護者らを対象とした防災教室を支援した。
テーマは「防災に役立つテクニックを親子で学ぼう!」。ロープワークや新聞紙でスリッパを作成するなど、簡単で災害時に活用できることを体験するとともに、自衛隊車両の展示・体験搭乗やミニ制服の試着を実施して、自衛隊を身近に感じてもらった。
体験した親子は、「災害時以外にも日常の生活に活用できるテクニックを体験できた」「ロープで簡単な結び方を覚え、自分でできることが一つ増えた」「自衛隊の車両は見たことはあったが、初めて乗ってみて力強さを感じた」などの喜びの声が聞かれた。
福島地本は「今後も各種団体、学校などと連携し、防災意識の向上、自衛隊に対する理解を深めてもらうため、広報活動を通じて自衛隊の魅力を発信していく」としている。
相双地域事務所(所長・永井3海佐)は9月26日、相馬市立中村第一中学校の生徒137人への防災教室を支援した。今回は水難防災教育がメインで、福島地本として初の試み。
当初、体育館で結索法、索具投てき法を教育し、その後プールで実施する水難防災の基礎を学んだ。また、防災講話を実施するとともに支援物資運搬法を教育し、水害などによる災害時における心構えを付与した。
引き続き、相馬市民プールに移動。溺者救助・心肺蘇生法を模範展示、索具投てきによる溺者救助体験、日用品(ペットボトル、ビニール袋)による浮力保持体験、海自救命胴衣の浮力体験を実施した。
教諭からは、「中学校の周辺地域は豪雨災害などで洪水や浸水被害が多いため、今回の教育は非常にためになった」、生徒たちからは「さまざまな体験を通じ、防災に対する意識の向上につながった」という声が相次いだ。
京都地本宇治所
心構えをアドバイス
京都地本宇治地域事務所(所長・大石3陸佐)は10月12日、京都府向日市に所在する京都府立向陽高校で同校初となる防災講話を実施した。
講話は、同校が今秋、修学旅行先として海自佐世保基地を見学するのに先立ち、少しでも自衛隊の活動について理解を深めてもらおうと、授業の一環として行われた。
大石所長は、自衛隊の概要や任務などについて説明した後、自ら出動した災害派遣の経験を基に、災害派遣時における活動内容や災害時に役立つ備えと心構えについてアドバイスし、生徒たちはその内容に真剣に耳を傾けた。
終了後、過去に被災経験のある教諭は、「授業、修学旅行を通して、災害などの際に困っている人や助けを必要とする人のために力になりたいと思える生徒を引き続き育てていきたい」と感想を語った。
宇治所は「より多くの生徒たちに防災に対する関心を持ってもらうとともに、引き続き機会を捉え、自衛隊に対する理解を深めていきたい」としている。
兵庫地本
土嚢(のう)作成・応急手当て 地域住民の実習を支援
兵庫地本姫路地域事務所(所長・後藤田1陸尉)は10月13日、姫路市家島地区で実施された防災訓練で地域住民約200人に対して、土嚢(のう)作成や応急手当ての実習を支援した。
防災訓練は、離島である家島地区の特性を踏まえて行われ、幼児から高校生、その保護者らを含む多くの地域住民が参加して行われた。
広報官が土嚢作成の要領、止血法や応急担架の作成要領について展示・説明し、その後、生徒たちがグループに分かれて、身の回りの物を活用した実習を行った。
生徒たちからは、「応急手当ての実習で得たことは、もしもの時はしっかりと生かしていきたい」との声を聞くことができた。
兵庫地本は「今後も防災教育や訓練を支援し、生きる力の育成に寄与して地域、学校との連携を深めるとともに、自衛隊への理解深化を図りたい」としている。
<2面にも防災関連記事>
(美幌駐6普連、倶知安駐)部隊の隊員が高校生に「災害対処」「防災」伝える