【2022年1月13日(木)1面】 岸田文雄首相とオーストラリアのモリソン首相は1月6日、自衛隊とオーストラリア国防軍との共同訓練や災害救助に関する「円滑化協定」にテレビ会議方式で署名した。協定は、相手国に滞在する自衛隊と豪州軍の課税免除や事件・事故の裁判管轄権など法的地位を事前に定める内容で、相手訪問のたびに調整する必要がなくなる。日米地位協定を除き、日本が同盟国ではない国とこうした協定を持つのは初めて。入国手続きを簡素化し、共同訓練の機会を増やすことで、海洋進出を強める中国の抑止を念頭に、防衛協力を加速させる狙いがある。

相互訪問しやすく

 外務省によると、協定は「両国部隊間の協力活動の実施を円滑にし、両国間の安全保障・防衛協力をさらに促進するとともに、日豪両国によるインド太平洋地域の平和と安定への一層の貢献を可能にするもの」とし、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続き、同部隊の地位などを定める内容となっている。

 具体的には、物資の取り寄せにかかる税金の免除などのほか、滞在先の国の法令を尊重する義務を明記した上で、船舶や航空機で部隊が入国する際の手続きを省略するほか、活動中に車両を運転したり武器を使用する際のルールも定める。

 また、滞在中に部隊の構成員らが関係した事件・事故が発生した際の対応も盛り込み、公務中の犯罪については派遣国が裁判権を持ち、公務外の犯罪は受け入れ国が裁くことにしている。

 両国は、日米地位協定と同様に協議機関としての合同委員会を設置し、運用の見直し、調整などを協議するとしている。

 日豪間をめぐっては、2007年3月の「安全保障協力に関する共同宣言」を発出して以降、自衛隊と豪国防軍との共同訓練や災害救助などを通じた協力が緊密化しており、これらの活動を円滑に実施するため、14年7月の日豪首脳会談で各種手続きや法的地位などについて定めるため、協定交渉の開始を決定していた。

「共同声明」で中国に懸念

 岸田首相とモリソン首相は円滑化協定への署名に合わせた共同声明を発表。「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調することなどを盛り込んだ。

 外務省によると、共同声明で両首相は、円滑化協定を「画期的」とした上で、「現在、将来の脅威と課題に対処するために安全保障・防衛協力を一層深化し、拡大することを誓約した」とした。 

 また、「中国の不法な海洋権益に関する主張や活動に対する強い反対を再確認し、力により現状を変更するあらゆる一方的な試みに強く反対した」とし、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。両岸問題の平和的解決を促した」などと表明した。

 両首相はさらに、北朝鮮で進行中の核兵器、弾道ミサイル開発を非難し、北朝鮮に対し、関連国連安保理決議の下での義務を遵守するよう求めるとともに、国際社会による関連国連安保理決議の完全な履行の重要性を強調した。

 【ツイッターで歓迎】日豪の円滑化協定への署名について、防衛省・自衛隊は1月7日、公式ツイッターで「7年以上の交渉を経て、ついに協定に署名しました。協定は、自衛隊と豪軍の共同訓練や災害救助などの活動が円滑化され、相互運用性の向上を図るもの。今後も、日豪間の安全保障・防衛協力を新たな次元へと引き上げていく」などのコメントを掲載した。


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