画像: 自衛隊大規模接種センターが任務完了|防衛省

 【2021年12月7日(火)1面】 新型コロナウイルスワクチンの接種を推進するため、自衛隊が東京と大阪に開設した大規模接種センターが11月30日、すべての任務を完了した。5月24日の開設以来、両センターでは、約半年間に国内全体の約1%に当たる延べ約196万回の接種を実施した。派遣された医官、看護官だけでなく、民間のスタッフも加え、日本中が注目した「官民共同作戦」。自衛隊史上例のない、前代未聞の一大オペレーションに立ちはだかるさまざまなハードルを乗り越え、191日間の任務を完遂した。

東西で196万回の接種 動員隊員は延べ5万人

見事に運営した

 11月30日、東京、大阪の両センターをオンラインでつないで開かれた任務完了式。東京の式典には、岸信夫防衛大臣のほか、開設を指示した菅義偉前首相も出席した。

 4月27日の閣議後、岸大臣に対し、「自衛隊はわが国最後の砦(とりで)だ 」と強調した菅前首相は、半年間にわたって闘い続けた隊員らスタッフに対し、「防衛省・自衛隊にとって初めての取り組みでさまざまな苦労や試行錯誤があったと思う。官民一体となって191日間の長きにわたり見事に運営してくれた。国民の期待、信頼を裏切らない素晴らしい成果をあげていただいた」と謝意を述べた。

 また、岸大臣が接種にあたった隊員らを表彰したほか、看護師の派遣や会場の運営に協力した民間企業などに感謝状を手渡し、労をねぎらった。

画像: 防衛省・自衛隊ホームページより
防衛省・自衛隊ホームページより

 防衛省が11月29日に発表した開設の5月24日から11月28日までの累計の接種回数は、約196万回(東京約131万8000回、大阪64万6000回)だった。同省などによると、この間、動員された隊員は延べ約5万人、民間の看護師や運営スタッフ延べ約22万人が協力して業務にあたった。

課題を乗り越え

 センターでは、自衛隊の医官や看護官、民間の看護師らが1日当たり、東京で1万人、大阪で5000人の予約枠を設けて接種にあたった。

 東京会場は、医官50人、看護官・准看護官130人、民間看護師110人、民間スタッフ270人。大阪会場は、医官30人、看護官・准看護官70人、民間看護師90人、民間スタッフ220人。態勢が決まった。

 ところが、センターでは、初期の予約システムの不備などをはじめ、いくつかの問題が浮上した。

 設置期間は、予定の「3カ月間」から「9月25日ごろまで」、さらに「11月30日まで」と2度にわたって変更。対象地域や年齢を変えるなどの対応もあった。防衛省では、副大臣を本部長とする対策本部で議論を重ね、その都度、的確な指示を発信し続けた。

吉村知事も謝意

 何よりも、現場のスタッフの苦労は並大抵のことではなかった。岸大臣は11月30日、自身のツイッターでこう記している。

 「前例のない官民共同の活動で、誰もが手探り状態の中、皆様(スタッフ)の献身的な努力により、国民全体のワクチン接種の推進に大きく寄与することができました」

 さらに、報道などによると、大阪府の吉村洋文知事も11月30日の記者会見で、「自衛隊の皆さんの迅速な接種が感染を防ぐことに大きく寄与したと思う。感謝申し上げる」と述べたという。

 自治体のワクチンの予約がなかなか取れない中、センターへの期待は大きかった。そして、開始当初、接種に訪れた人たちからは現場での案内などスムーズな対応に驚き、スタッフの笑顔に癒されたという声が聞かれた。

 自治体による接種で起こりうる目詰まりやトラブル。その対策として、接種業務そのものを国が設置する。そこで白羽の矢が立ったのは、自衛隊だった。医療人材を豊富に抱え、組織力がある。指示・命令で100%に近い行動を取れる組織だ。

 全国の自衛隊病院などで勤務する医官ら人員を必死に集め、大きな期待を背負って臨んだ防衛省・自衛隊。「自治体の接種の後押し」という本来の目的を果たし、国の一大プロジェクトで大きな成果を出した。

大臣会見『最後の砦』として、国民の期待に応えていく

 無事、運営を完了できたことについて、大変うれしく思います。地方自治体のワクチン接種を国として強力に後押しし、国民全体のワクチン接種の推進に大きく寄与できたと考えます。

 センターの運営・設置は、防衛省・自衛隊にとっても初めての取り組みでした。会場の設営や効率的な接種業務の遂行に係る工夫、さまざまな試行錯誤がありました。

 一方で、民間事業者と一体的に活動し、会場での受け付けや誘導、各種資材の調達、会場の確保、人材の派遣、予約システムの構築、コールセンターの設置など、民間の有するノウハウを取り入れたことで、円滑に接種を行うことができました。

 民間には民間のノウハウがあり、自衛隊には自衛隊の得意な分野があります。大きな組織を動かしていくこと自体は、自衛隊が得意としている分野かもしれません。一方で、接種を受けに来られた方々との接点など、そういう作り方は民間の業者の方がよくご存知な部分だと思います。そうしたところが、非常に融合できてスムーズにいけたところだと思います。

 わが国における新型コロナウイルスとの闘いは続いています。今後とも、防衛省・自衛隊は、わが国の「最後の砦」として、国民の期待に応えていく所存です。

 (11月30日の任務完了式典後の臨時会見から)

菅前総理「素晴らしい成果」

 自衛隊東京大規模接種センターの任務完了式に出席した菅前首相は11月30日、自身のツイッターでも触れ、「素晴らしい成果」と担当者らをたたえた。

 菅前首相は、センターの設置・運営を指示した当時、1回目のワクチンを接種した国民が0.4%だったと説明。「コロナは完全に終息したわけではない。防衛省・自衛隊には、引き続きわが国の『最後の砦』として、国民の期待、信頼に応える活躍を期待している」と締めくくっていた。

対策本部会議は計17回に

 菅首相(当時)から4月27日、大規模接種センターの開設を指示された後、防衛省で緊急の幹部会議が開かれ、「大規模接種対策本部」が立ち上がった。本部長に就いたのは、中山泰秀防衛副大臣(同)。約1カ月の「突貫工事」を経て5月24日、開設にこぎつけた。

 以降、対策本部はセンターのかじ取りを一手に引き受け、担当職員らの業務は困難を極めた。会議での決定内容など、一連の動きをまとめた。

画像: 対策本部会議は計17回に

This article is a sponsored article by
''.