キャリアインタビュー第4弾
元自衛官キャリアインタビュー、ライターの太田です(私の経歴は以前の記事をご覧ください)。
いつもご覧いただきありがとうございます。今回は、航空自衛隊を退職後、日系の総合コンサルティングファームで働く本田大輔さんのインタビューです。(コンサルティングファームとは、事業戦略や業務オペレーション改革、システム構築など、企業の抱える経営課題に対して解決に導く企業のこと)
本田さんは、総合コンサルティングファームのコンサルタントとして現在ご活躍していますが、防衛大学校卒業後、航空自衛隊幹部として活躍し、その後民間企業に転職しています。
本日はそんな本田さんの自衛隊時代のエピソード、自衛隊への思い、また自衛隊で培われた能力から仕事観までお話を伺いました。
経歴
ーー本日は退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、本田さんの経歴を教えていただけますか。
本田さん:2017年に防衛大学校を卒業後、航空自衛隊幹部候補生学校を経て、高射整備幹部として第1高射群に配属されました。
部隊では、小隊長として勤務していました。2019年8月に自衛隊を退職し、10月より日系総合コンサルティングファームに入社し、戦略、DX(デジタルトランスフォーメーション)、IT 等に関するプロジェクトに従事しています。
ーー自衛隊に入隊された背景と在職時の職務内容を教えていただけますでしょうか。
本田さん:私は、防衛大学校から自衛隊を経験しています。防衛大学校を選択したのは、経済的な理由です。もともと医師を志望しており、学費が掛からない自治医科大学を受けたものの合格できず、同じく学費が掛からないため受験した防衛大学校に入学しました。
防衛大学校卒業後は、航空自衛隊幹部候補生学校に入校し、ここには2017年3月から10月まで在籍しました。航空自衛隊の幹部候補生学校は、航空自衛隊奈良基地に所在し、幹部自衛官になるべくいくつかの課程に分かれて教育を受けるための機関です。
卒業後の職種の一つにパイロットがありその身体適性もあり希望するか迷いましたが、そちらの道は自分から辞退しました。課程教育としては、防衛関係教養について学んだり、訓練や体力練成を行いました。
幹部候補生学校卒業後は、高射整備幹部という職種に就き、防空システムの一つである高射器材の整備に携わりました。聞き慣れない用語かと思いますが、ペトリオットミサイル(PAC3)がその装備品の一つで、こちらは聞いたことがある人も比較的多いのではないかと思います。他国から発射された弾道ミサイルを地上から迎撃する地対空誘導弾及びその防空システムのことです。
高射関連の部隊では主に、部隊の組織(小隊)運営や、整備・品質管理に関する系統の取りまとめを行っておりました。
若くても責任ある職を経験させてくれた自衛隊
ーーPAC3は最後の要のミサイルですね。空自幹部自衛官として勤務していた中で、在職中の思い出・エピソードを教えていただけますか。
本田さん:当初は前向きな入隊ではありませんでしたが、今となって振り返ると大半が大変良い経験でした。中でも、部隊で初めて行った本格的な基地警備訓練は印象深いです。
私の所属していた基地は陸上自衛隊が合同で所在しており、その内空自エリアで空自の指揮系統のみで警備訓練を行いました。しかし夜間に当直勤務で見回りをされていた陸自の方も不審者と間違えられることもあり、見回り中に誰何(すいか)されて非常に驚いていましたね。
ただ、いろいろな状況を想定して訓練の内容が組まれますので対象外と勝手に判断した結果、実は取り逃していたなんてこともある為、全員真剣に取り組んでいました。
その訓練の中で私は基地司令(指揮官)に意見具申する指揮所長というポジションを、他の訓練要員との兼ね合いもあり3尉ながらに務めました。私が所属した基地は規模が小さかったのですが、このように小さい規模の基地で勤務する若手幹部はしっかり幹部として扱ってもらえるため、やりがいを感じやすいことは、私が持つ小規模部隊への印象です。
実際当時の小隊長の役職は、建制順で基地内のNo.4に位置する役職ですので、得難い経験ができました。
加えて職場の人間関係にも恵まれていたお陰で、日々の業務や業務後の時間も充実したものでした。
ーー若くても機会があれば要職につけるのですね。期待されていた自衛官キャリアですが、なぜ自衛隊から民間企業へ再就職されようと思ったのでしょうか。
本田さん:広く社会に求められる能力を持つ人間になりたかったこと、また成果報酬や実力主義に近い条件で働けるような環境で勝負したかったことが理由です。
収入に差がないことは公務員であれば致し方ない側面ですが、どのような結果を残しても給与がほぼ一律に上がっていくことが面白味を欠いていると感じました。
自衛官は、安定感や階級序列が明確なので将来が見えやすい一方、何年後に自分がどのポジションにいていくら貰っているかが大体同じで、予想できてしまうことが性に合わなかったです。
たしかに自衛官はやりがいある仕事でしたが、ずっと続けていく仕事かと考えた中で、自分は思っていたより安定志向というよりも野心家でした。
ーー防衛大学校在学中は、そう思われなかったのでしょうか?
本田さん:防衛大学校、幹部候補生学校での過程では、自衛官としての人生があまり見えていなかったです。部隊に行き、実務を経験して上司、同僚含め現場の実務を担当している方々との交流により、「仕事」と向き合うことが、キャリアチェンジを考える契機になりました。
自衛官が民間企業で通用する能力とは
ーーいろいろな経験を若い内から得られそうですね。本田さんが考える、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等ありましたら教えてください。
本田さん:私の経験に照らし、若手自衛官に特化してお話ししたいと思います。まずはビジネススキルに関しては、活用できるものは正直ほぼありません。基本的ビジネススキルは大半が新卒と変わらないなと感じました。
自衛官は戦略や作戦を考えるから戦略的思考が備わっていると主張する意見も目にしますが、体系的に論理的思考を学ぶ機会がほぼない自衛官の思考力は属人的であると言わざるを得ません。
あくまで若手幹部しか経験していない私の個人的偏見ですが、入社後に会った戦略案件に強いコンサルタントの方たちの様な戦略的思考力を備えた自衛官には会ったことがありません。特段能力が高い自衛官はその限りではないですが、一般的に見たときに強みと考えるべきポイントはそこではないと思います。
自衛官だからというより、これまで自主的に養ってきた能力は活用できるのではないかと思います。
しかし補足するなら、民間で私はまだ下位職の勤務経験しかないため、これが部下をもつようになった際に、自衛隊経験が活きるものがあるかもしれないと感じています。
自衛官のみなさんは特にリーダーシップや組織マネジメントの手法は自衛隊の各教育課程をはじめ部隊経験を通して習得している事と思います。ただし、ビジネスに関する能力は自分で掴み取る覚悟と努力が必要です。
一方で、マインドセットや人間性については、活かせるものが多々あるのではないかと思います。月並みな言葉に聞こえるかもしれませんが、特に規則正しく、ある程度厳しい環境に身を置いた経験は社会人としての土台になります。
私も自分は比較的ストレス耐性があると感じますし、何をするにしても最後は根性や忍耐は必要だと思います。とくに歩合で上を目指しやすい営業など、向いている方は多いのではないかと思いますし、実際営業職に転職した自衛官を何人も知っています。
自衛官の転職にありがちなのですが、今持っている運転資格等にとらわれず、幅広く自分の価値を活かせる業種・職種を考えることが良いと思います。
ーーなるほど、セカンドキャリアで何をしたいのかどのようなことが生かせるのかを明確にすることが、企業への再就職、転職の際にまず求めれることですね。本日は、元自衛官のキャリアに関してお聞かせいただきありがとうございます。
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