渡河作業の練度向上を目的に、岩見沢駐12施設群の若手隊員が茨戸川で初めて臨んだ生地(河川)訓練を、防衛日報社が密着した。軽門橋の構築から漕舟競技まで、現場には真剣な表情と熱気があふれ、隊員たちの息の合った掛け声が川面に響いた。経験を重ねることでしか得られない技術と絆の姿を追った。
渡河作業の練度向上を目的に、岩見沢駐12施設群の若手隊員が茨戸川で初めて臨んだ生地(河川)訓練を、防衛日報社が密着した。軽門橋の構築から漕舟競技まで、現場には真剣な表情と熱気があふれ、隊員たちの息の合った掛け声が川面に響いた。経験を重ねることでしか得られない技術と絆の姿を追った。
岩見沢駐12施設群(群長・福永1陸佐)は5月27、28の両日、茨戸川渡河訓練場(石狩市)で「令和7年度第1回小隊訓練(渡河)」を実施した。訓練は、398中隊(中隊長・香田1陸尉)と399施設中隊(中隊長・松村1陸尉=当時)の若手隊員を対象に、渡河作業に必要な練度の維持・向上を目的として行われた。今回参加した隊員たちにとって、生地(河川)での実施は初めて。
軽門橋を構築、細心の確認作業
初日は軽門橋訓練を実施。班長の命令下達を受けた後、隊員らは、アルミ導板の運搬に取り掛かった。この日の軽門橋は渡河ボート3舟とアルミ導板4枚を組み合わせて構築する3舟4導板(さんしゅうよんどうばん)門橋で実施。
施設科号令のもと「上げるよーい、いちに」「あーげ、いちに」と班全員が気合を一致させ、呼吸を合わせアルミ導板を運搬し、渡河ボートへ搭載していった。
ボート間の連結が不十分であったり、アルミ導板が導板規制金具に適切に装着されていなかった場合には、車両積載時に転覆の恐れがあるため、先輩隊員が連結部や装着状況を細かく確認し、不備があれば指導が行われた。
車両積載と運搬訓練
3舟4導板の軽門橋構築完了後は試運転を実施。
続いて誘導員の指示に従い、1/2トントラックを進行させた。
積載時にはわずかなずれも重大な事故につながるため、目視を繰り返し、細心の注意が払われた。
車両積載が完了すると、3舟4導板(さんしゅうよんどうばん)門橋による軽門橋運搬訓練を開始。
手旗の指示に従って直進や旋回を繰り返しながら進行。
岸に戻った後、車両を下ろし、構築時と逆の手順で解体を行い、訓練は終了した。
初めての生地(河川)での訓練を終えた松村中隊長(当時)と参加した若手隊員たち
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【解説】軽門橋とは
軽門橋は、アルミ導板と渡河ボートを組み合わせ、橋のない河川などで車両を対岸へ運搬することを目的に構築される。
渡河ボートの舟数やアルミ導板の枚数を増やすことで、より重量のある車両の輸送が可能となる。最も軽量な場合は渡河ボート3舟とアルミ導板4枚を組み合わせた「3舟4導板」で構成され、最大6舟6導板門橋にまで拡張することができる。
一方で、70式自走浮橋や81式自走架柱橋、92式浮橋のような重量級車両を積載することはできないが、短時間で構築できるという利点を持つ。この即応性は、演習や有事のほか、災害派遣など緊急時の活動においても大きな強みとなっている。
【解説】施設科号令
施設科には共通の掛け声「施設科号令」がある。「上げるよーい」(予令)に続き、「あーげ、いちに、いちに」(動令)で持ち上る。
また、「置くよーい」(予令)、「いちにおーけ」(動令)で装備品を下ろす。号令には他にも種類があり、施設科隊員であれば初対面でも、共通の掛け声を用いることで即座に連携し、息の合った動きを行えるのが特徴だ。
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汗をにじませながら車両運搬を終えた若手隊員たちは、安堵の表情を浮かべつつも次の挑戦に気持ちを切り替えていた。翌日は、生地(河川)で初めてとなる漕舟訓練が待っている。
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