【特集:第12施設群Vol.2】漕舟競技で白熱の勝負 若手隊員が技量競う

岩見沢駐屯地

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激しいレースを繰り広げる若手隊員たち


 岩見沢駐12施設群の若手隊員が初めて臨んだ生地(河川)訓練に防衛日報社が密着。訓練2日目は398、399施設中隊の若手隊員を対象に漕舟訓練を実施。訓練は、隊員同士の連携や息の合った動きが求められ、訓練後の競技会では掛け声が川面に響き渡り、白熱したレースが展開された。


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勝負の前の静けさ...


 岩見沢駐12施設群(群長・福永1陸佐)は5月27、28の両日、茨戸川渡河訓練場(石狩市)で「令和7年度第1回小隊訓練(渡河)」が行われ、 2日目は漕舟訓練を実施した。

 

 漕渡作業は渡河任務遂行に不可欠であり、隊員の練度維持・向上を目的として行われている。近年の豪雨災害などにおける人命救助活動にも必要な技能とされ、与えられた任務を確実に遂行するため、定期的に実施されている。


役割を理解し連携して舟を進める


 渡河ボートの操作はかい手・ろ手・さお手・舫(もやい)手・舟長の連携で成り立つ。


 398、399中隊の若手隊員が競技に先立ち、両中隊の若手隊員が、操作手順を確認。「いち、に」の掛け声に合わせてかい手が息を合わせ櫂(かい)を操作し、ろ手の操舵により推進力を得ながら前進。


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声を掛け合い、舟を進めていく


 操作に不慣れな場面もあり、ボートの進行方向が乱れることもあったが、ろ手が舵を切って修正し、元の方向へと戻していった。


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的確に舵を切る399中隊、ろ手の平野士長

訓練成果を発揮し競技会で激突


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競技会を前に気合を入れる398中隊


 訓練後に行われた競技会では、これまでの訓練成果を発揮し激しい勝負が繰り広げられた。スターターの合図とともに両チームが一斉にスタート。


 櫓(ろ)と櫂(かい)を駆使し、すぐにトップスピードとなる両チーム。


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息の合った櫂さばきで、スピードに乗る398中隊


 折り返し地点までは398中隊が先行していたが、399中隊が猛追。


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必死に398中隊を追う399中隊


 「追いつかれるぞ!」「後ろに来てるぞ!」「粘れ!粘れ!」と398中隊班員から激しい檄(げき)が飛ぶ。


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檄に応えて、前を譲るまいと最後の力を振り絞る398中隊


 399中隊の舟長、岡3陸曹も負けじと隊員に檄を飛ばし、最後の力をふるい立たせる。


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仲間に檄を飛ばす舟長の岡3陸曹


 疲労から落ちていた398中隊のスピードが再び加速し、すぐ後ろまで迫っていた399中隊を一気に引き離し、そのままゴール。398中隊が見事勝利を収めた。


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勝利を喜ぶ398中隊

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勝利の喜びを爆発させる398中隊隊員

 

 勝利を収めた398中隊には、両中隊長から景品として冷たい飲み物が贈られた。


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左:長谷川2尉 右:丸山士長

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喜びを分かち合う398中隊の隊員たち

中隊長「認識統一が重要」


 訓練を総括し、399施設中隊長の松村1陸尉(当時)は、「渡河訓練の目的は普通科部隊を安全かつ確実に対岸へ渡すこと。そのためには各操作要員が統一の認識で臨むことが重要。渡河訓練は貴重な機会であり、参加した隊員は経験者として貴重な存在となる。今回得た教訓事項を次の訓練に生かしてほしい」と述べた。


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訓練の重要性を丁寧に伝える松村中隊長(当時)

最後までリードを許さず勝利を収めた398中隊

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猛追も及ばず、惜しくも敗れた399中隊

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【解説】地下足袋着用の理由

 渡河訓練では、隊員が地下足袋を着用して任務に臨む。舟内は水しぶきなどで滑りやすくなるため、安全確保が重要となる。地下足袋は半長靴に比べて靴底のゴム素材が柔らかく、接地面との摩擦力が高いため、滑りにくく安定した動作が可能となる。


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取材時ももちろん地下足袋を着用

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 2日間の訓練を通じ、川面には若手隊員の力強い掛け声が響き渡った。軽門橋構築と漕舟操作という実践的な課目に臨み、互いに声を掛け合い、支え合いながら経験を積んだことで、技術だけでなく結束も一層強まった。初めて生地(河川)に挑んだ若手にとって、この2日間は成長の証となり、今後の渡河任務や災害派遣に生かされていく。