【特集:令和7年度 富士総合火力演習Vol.2】“諸職種協同”を示し、教育と広報も同時に果たした意義|陸上自衛隊

富士総合火力演習② スタンド・オフ攻撃やAIなどを駆使した“マルチドメイン”戦を披露

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演習見学後に明るい笑顔を見せる自衛隊学校の学生たち


 進化する現代戦の実像を示した「令和7年度 富士総合火力演習」。特集:令和7年度 富士総合火力演習Vol.1」で報じたとおり、スタンド・オフ攻撃、電磁波、AI・無人機の連携による多領域戦を前面に打ち出し、その最前線を国内外に示した。


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演習をじっくり研修した後の希望に満ちた表情を見せる学生たち


演習には、防衛大学校、富士学校、自衛隊体育学校、高等工科学校、防衛医科大学校など全国16校からの学生に、自衛官・予備自衛官もあわせ約5500人が参加。


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ナレーションや図解を駆使し、理解度が上がるよう工夫された

さらに、協力企業関係者や募集対象青少年など一般来場者約4400人が加わり、延べ約9900人が演習場に足を運んだ。


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観覧席の間近に侵入できる機動路を新設し、迫力度もアップ


陸幕によると、研修席周辺への戦車進入ルートの新整備、隊員視点のウェアラブルカメラ映像の大型スクリーン投影、ナレーション付き解説などを導入し、迫力と理解向上を両立させたという。


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12式地対艦誘導弾能力向上型の実物が発射体制を初展示

 最大の注目は、射程約1000キロの長射程スタンド・オフ・ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の実物初公開。


島嶼防衛を意識した塹壕戦や衛星・ドローンなどを用いた情報戦も示され、現代戦の構図が浮かび上がった。


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誘導弾で艦艇を撃破するシーンはスクリーン映像で体感

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初導入の塹壕戦の様子は、隊員に装着したウエラブルカメラを通してライブ配信

諸職種協同とマルチドメイン戦―教育と広報を実現した今年度総火演

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熱心に見学する防大等の学生たち(グレーの制服が防大学生)


さらに、自衛隊は陸自16職種、海自約50職種、空自約30職種という多様な専門分野をもつ。その職種は施設(整備)、通信、衛生(医療)、音楽と幅広く、各職種に対応した教育機関(富士学校、高射学校、航空学校、通信・サイバー学校、武器学校など)が全国に点在している。


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92式地雷原処理車(MBRS)による投射


 今回の演習では、自衛隊学校16校から多くの学生・隊員が参加し、諸職種協同の実像を来場者へ示す側面も見せた。


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上陸成功し、小銃小隊を展開する水陸両用車


本演習は、単なる火力の誇示にとどまらず、情報・サイバー・電磁・宇宙にまたがる「マルチドメイン戦」の初動を示し、若年層や募集対象者に「自衛隊には自分に合った専門分野がある」というメッセージを送る場ともなった。前年に比べ参加者も多く、今年度の総火演は、教育と広報を同時に果たした意義深い演習だったと言える。


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