【新春特別インタビュー②】防衛力の中核は人 いかなるときもシームレスな態勢を 内倉統幕長インタビュー|統合幕僚監部

内倉浩昭 統合幕僚長 令和8年度へ

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ロゴマークの掲げられた統合幕僚監部入口に立つ内倉氏

防衛日報 2026年1月6日付


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――日米同盟に加え、日英、日豪、日比、ASEAN(東南アジア諸国連合)などとの多国間連携が進んでいます。こうした同盟・同志国との連携強化にどのように寄与していきますか。


 内倉氏 「オーストラリアとは『特別な戦略的パートナー』として、外務・防衛閣僚級協議(2+2)や共同訓練、防衛装備・技術協力などを通じ、緊密な関係を築いてきました。今後は、昨年12月の日豪防衛相会談で設置を合意した戦略的調整枠組み(FSDC)も活用し、運用面を含めた協力関係をさらに深化させていきます」


「英・フランス・イタリア・ドイツなど欧州主要国とは、インド太平洋と欧州の安全保障が相互に影響し合うとの認識の下、関与を強化しています。こうした連携の一環として、昨年秋には航空自衛隊の戦闘機が北米・欧州親善訪問『Atlantic Eagle』で初めて欧州に着陸。インド太平洋と欧州の安全保障が相互に関係しているとの認識を、具体的な行動で示した例ともいえます」


 「フィリピンを含む東南アジア諸国とは、ASEANの中心性と一体性を尊重しつつ、それぞれとの間で2国間・多国間協力を推進していきます。自衛隊としては、ハイレベル会談や共同訓練・演習、部隊間交流を通じ、同盟国・同志国との多角的な防衛協力を積み重ね、自由で開かれたインド太平洋の実現に寄与していきたいと考えています」

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インタビューに対し真摯に言葉を紡ぐ内倉氏


――欧州展開を含め、日本の安全保障が広域化する中で、宇宙領域の重要性も一段と高まっています。「航空宇宙自衛隊構想(26年度に発足)」や、将来の防空・ミサイル防衛の方向性について、どのように見ていますか。


 内倉氏 「各国の活動において、通信や偵察、測位といった機能を宇宙領域に依存する度合いは高まっています。遠距離にある艦艇や航空機の指揮統制や通信には通信衛星が用いられ、巡航ミサイルなどによる運用においても、偵察衛星による目標把握や測位衛星による位置情報が重要な役割を果たしています。

 防衛省・自衛隊としては、相手方による宇宙の利用を妨げる能力の構築を進めてきました。今後は、情勢の変化に対応できるよう、宇宙領域における能力を段階的に拡充していく必要があると考えています」


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統合幕僚長室に掲げられる書「風林火山」と内倉氏


――将来の防空・ミサイル防衛の方向性については。

 

 内倉氏 「弾道ミサイルの能力向上に加え、極超音速兵器などの出現により、経空からの脅威は一層多様化・複雑化・高度化しています。このため、探知・追尾、迎撃の各能力を強化し、ネットワークを通じて各種センサー・シューターを一体的に運用できる体制の構築に取り組んでいます。こうした防空・ミサイル防衛の取り組みに、相手の領域で有効な反撃を行う能力を組み合わせることで、わが国に対するミサイル攻撃そのものを抑止していく考えです」

 

――宇宙のほか、サイバー・電磁波の新領域は、現代の部隊運用を支える重要な基盤となっています。これらの分野における国際協力について、どのように取り組んでいますか。


 内倉氏 「各領域は、国民生活の基幹インフラであるとともに、防衛の観点からも領域横断的な作戦を支える重要な分野であり、安定的に機能させることが不可欠です。

 宇宙は情報収集・通信・測位の安定利用に向け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など関係機関や民間と連携を強化します。サイバー領域では、同志国などとの情報共有や部隊間交流で対応力を高め、電磁波領域では、民生用の周波数との調整を含めて関係省庁と連携して、必要な周波数の安定利用を確保していきます」

 

――AI共創イニシアチブ(【メモ②】参照)や無人化システムなど、新技術の導入も進んでいます。統合運用の観点から、課題と期待をどのように見ていますか。


 内倉氏 「無人アセットは、人的損耗を抑えつつ長期間の連続運用が可能で、情報収集や警戒監視に加え、戦闘支援など幅広い任務に活用できると考えています。

 また、AIは戦いの行方を左右し得る重要な要素になりつつあります。指揮統制や無人アセットの運用などで活用を進め、意思決定の迅速化と隊員の負担軽減につなげていきたいと考えています。あわせて無人アセットやAIを有人装備と組み合わせ、空中・水上・水中など複数領域を横断して、非対称的な優位を確保できるよう、統合運用能力の強化に取り組んでいきます」


【メモ②】

AI共創イニシアチブとは 

防衛分野のAI活用に向け、官民や研究機関が連携して技術開発や実証を行う取り組み。無人アセットは遠隔操作や自律的に運用される装備。


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温かみにあふれ説得力ある言葉の数々が印象的


――AIや無人技術の活用が進む中、戦いの様相は情報面にも広がっています。情報優越や認知領域(【メモ③】参照)の確保に向け、どのような体制強化を進めていくお考えでしょうか。


 内倉氏 「国際社会では、偽情報やプロパガンダなどを通じて他国の世論や意思決定に影響を与え、有利な安全保障環境を形成しようとする動きがみられます。わが国としても、その影響を可能な限り抑え、意思決定を守りつつ、有利な情報環境を構築していくことが重要です。

 このため自衛隊では、令和7年度に陸自情報作戦隊(仮称)と海自情報作戦集団を新編する予定で、情報収集・分析・発信の体制を強化していきます。

 あわせて、AIを活用した公開情報やSNSの自動収集・分析機能の整備を進め、対応の高度化を図っています。関係機関や同盟国・同志国などと連携し、戦略的な情報発信などを通じて政府全体の取り組みに寄与していきたいと考えています」

 

――防衛力の強化が進む一方で、人口減少や少子高齢化の影響も指摘されています。人的基盤をどのように維持・強化していくお考えですか。


 内倉氏 「防衛力の中核は、自衛隊員一人ひとりです。人口減少や少子高齢化が進む中にあっても、優れた自衛官を安定的に確保し続けることが不可欠だと考えています。同時に、隊員には高度な知識・技能・経験が求められ、偽情報などに惑わされない素養も必要となっています。全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、能力を十分に発揮できる環境を整えることが重要です」


 「このため、生活・勤務環境や処遇の改善、家族支援、人事管理の柔軟化、女性隊員の活躍推進、ワークライフバランス、若年退職者の再就職支援などに取り組んでいます。特に高い即応性や長期任務、社会から隔絶された厳しい環境で勤務する隊員には、状況に応じた配慮も必要と考えています。

 また、ハラスメントは組織の根幹を揺るがすものであり、決して許されません。全ての隊員が認識を共有し、一切容認しない組織環境の構築に努めていきます。統幕としてこうした取り組みを着実に進め、隊員が誇りと使命感を持って任務にあたることができる人的基盤の強化を今年も進めていきます」


【メモ③】

認知領域とは 

情報を通じて人々の認識や判断に影響を与える分野。


 小泉進次郎防衛大臣は昨年10月の就任会見で、「約25万人の自衛隊員とともに、国民の負託に応える。全力を尽くす」と述べた。内倉統幕長も、防衛大臣を支え、新設された統合作戦司令部と緊密に連携しながら、「各種案件に確実に対応できるよう万全の態勢を確保することこそが、自衛隊の存在意義だ」と語る。

 急速に変化する安全保障環境の下、統合運用の実効性を高め、隊員一人ひとりが持てる力を十分に発揮できる体制づくりに、強い責任感をもって任務に向き合っていく考えを力強く示した。


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