令和6年(2024年)6月29日(土)、川崎市市政100周年記念事業の「かわさき飛躍祭」で、川崎市中原区等々力緑地の会場を中心とし、川崎市、東京都、横浜市にまたがるエリアでブルーインパルスが展示飛行を行いました。等々力球場がメイン会場となり音楽フェスが開催され、そのステージの時程にブルーインパルスの展示飛行が組み込まれ、メイン会場内のみならず、等々力緑地一帯や多摩川の土手、あるいは飛行経路上の各地にたくさんの人が集まり空を見上げました。終了後、川崎市中原区の対岸にある東急多摩川駅には花火大会のあとのように人の列ができていました。

【巻頭写真について】
 スワンローパスを等々力緑地の雰囲気がわかるように魚眼レンズで撮影しました。メイン会場の等々力球場やとどろきスタジアム・アリーナ、武蔵小杉の高層マンション群などが写っています。川崎で生まれ育ったので、川崎の空にブルーが飛んで感無量でした。ありがとうございます。
 ビッグハートを撮るために魚眼レンズで待ち構えていたのですが、ハートを描く方向が想定と違って全く見えなくて残念でした(笑)
 (スワン・ローパスのあと)会場では終了というアナウンスがあったので、周りの人も帰り始めてしまったのですが、その後、シシャモの演奏が始まるとデルタローパスが来たのにはびっくりしました。(残念ながら撮り逃し・・・(-_-;))
《撮影・別井圭一 (AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm F/3.5-4.5E, NIKON D810A, 15mm f/8 1/1000sec ISO200)》

 当記事の読者投稿コーナーにもこれまでにないほどの応募があり、ここではそれらの作品を中心にかわさき飛躍祭展示飛行を振り返ってみたいと思います。
 まずは巻頭写真とさせていただきました川崎市出身の別井圭一さんのお写真をご覧ください。フェス会場となった野球場の照明の向こうには武蔵小杉のタワーマンション群が見えています。手前には運動場と白いテントの屋根も。テントでは自衛隊神奈川地方協力本部がブースを出し、江尻卓2空佐によるサイン会も開催されました。雲が多い日でしたが、前日が悪天候で飛べなかったことを思えば、雲間の青空も奇跡的とすら感じます。ほれぼれして、どこから撮ったのだろうとGoogleMapのストリートビューで事後ロケハンしてしまいました。さすがは地元の方といった等々力緑地を良くご存じの方の撮影場所です。それに魚眼レンズは中心から外れるとスモークのラインも大きく歪曲してしまいます。それも加味された完璧な構図で素晴らしい一枚になっています。代わりにご自身のコメントにある通り、多くの人が想定外だった北西から進入のビッグ・ハートは撮り逃したとのこと。でも、この一枚で有り余る成果が得られたのではないでしょうか。

かわさき飛躍祭 ブルーインパルス展示飛行 全課目収録(課目名入・4カメ使用)[4K]

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飛行経路概略図(出典・川崎市報道発表資料)

 当日まで皆さんこの主催者発表の飛行経路図とにらめっこです。概略図にもかかわらず拡大してどこを通るのか目を皿のようにして見返しました。
 レーストラック状の飛行経路において、新横浜駅の西北西、港北ICのやや東を起点とする正面のストレートは、等々力緑地を通り、渋谷駅まで向かっています。目印は渋谷SKYビルに違いない。そんな感じです。こうしたレーストラック軌道は展示飛行でよく使われ、直線1分・半円1分・直線1分・半円1分の4分で一周します。そして直線の長さを変えることで定時定点必達。展示会場上空への到達時間を調整します。この方法は小澤征爾氏指揮の第九交響曲終了のタイミングで上空を通過した長野五輪開会式祝賀飛行で有名です。
 かわさき飛躍祭の場合には、新横浜から等々力緑地までのストレートが1分で、そこから裏側のバックストレートへ折り返し、また新横浜から進入してくる4分コースです。6課目を5周で実施し約20分の展示飛行が構成されました。最後のデルタ・ローパスの前、スワン・ローパスのあとに渋谷まで直進し、渋谷起点の360°旋回を一回行いました。最後の課目の前に渋谷まで経路を延ばし、それをタイミング調整としたようです。フェス会場のステージではブルーインパルスと連携した特別演出ということがうたわれており、このタイミング調整でおそらくはブルーインパルス通過のタイミングでSHISHAMOさんが演奏を開始しようとしたのではないかと思われます。しかし、それはある出来事のために変わってしまいました。このことは後述します。

【多摩川浅間神社境内の展望台からの眺め】
 平成28年(2016年)に公開された映画「シン・ゴジラ」の劇中で、陸上自衛隊がゴジラの東京侵入を阻止するために実施した『タバ作戦』の前線基地として『タバ作戦前方指揮所』が多摩川浅間神社境内の多摩川から武蔵小杉一円が見渡せる展望台に設置されました。ここからは目の前に東急東横線と目黒線の多摩川橋梁が見え、その奥、正面やや左にはとどろきスタジアムの白い屋根が見えています。左手方向は丸子橋や武蔵小杉のタワーマンション群も見渡せます。
 タバ作戦で強靭なゴジラを撃退することはできませんでしたが、多摩川浅間神社は破壊されずに済んだことから、ゴジラの危機から逃れた“災害から守られる”、“災いを跳ね除ける”場所として、ゴジラファンの間で人気の高いスポットなっており、同神社ではシン・ゴジラの御守りなども頒布されています。(写真・今村義幸)

 平成28年(2016年)に公開された映画「シン・ゴジラ」では、鎌倉の海から2回目の上陸を果たしたゴジラが武蔵小杉を通り都内に侵入します。対岸の丸子橋付近では陸上自衛隊の戦車隊と航空自衛隊のF-2戦闘機が東京侵入を阻止するため“タバ作戦”でこれを迎え撃ちました。ブルーインパルスの正面ストレートがシン・ゴジラのルートに近く、象徴的なタバ作戦の舞台である丸子橋付近を通るということから、内輪ではタバ作戦と称しブルーインパルスを迎え撮ると盛り上がりました。(笑)

①デルタ・ダーティ・ローパス

開始課目のデルタ・ダーティ・ローパス(写真・伊藤宜由)

川崎100周年イベントでの感動が冷めません! 
空に向かって心の底から大声で「カッコ良い〜!!」と叫んでしまいました。
11月の入間航空祭も楽しみにしています。 
感動をありがとう!《写真・てんて》

渋谷SKY展望デッキから撮影したデルタ・ダーティ・ローパス(写真・塚田圭一)

 最初のデルタ・ダーティ・ローパスは脚を出して着陸灯を点灯させたデルタ・ダーティ形態でのローパスです。ダーティは着陸形態を意味しますので、脚を出して、着陸灯を点灯して、フラップ(高揚力装置=T-4の場合、主翼の後縁を延ばして主翼面積を大きくするもの)も着陸の位置にセットし、比較的低速で飛行します。メイン会場ではバックスクリーンの後ろからキラキラと着陸灯を光らせながらゆっくり近づいてくるブルーインパルスが見えたと思います。

②デルタ360°ターン(左旋回)

デルタ360°ターン(写真・今村義幸)

 デルタ360°ターンはもともとは右旋回で作られた旋回課目です。ですが、はじめて那覇基地航空祭で編隊連携機動飛行が実施された年、那覇は12月開催が多いのですが、北風で滑走路はRWY36の北向きでした。北向きの滑走路で他の旅客機が離着陸していますから、同じ方向で課目を実施したかったわけですが、デルタ360°ターンを行うと右回りで右側(東側)にある会場や内陸側を回ることになってしまいます。このため、左旋回でデルタ360°ターンで海側を回るようにしたのがはじまりでした。この時、冬場にも関わらず南向きの滑走路だったら、チェンジ・オーバー・ターンを実施する段取りだったそうです。ブルーインパルスの旋回は基本右旋回、右ロールなのだそうです。それを左旋回にしてまで作られた左回りのデルタ360°ターンをここで実施したのは、どうやらレーストラックの飛行経路の内側に収めるようにした配慮があったためと考えられます。

③ビッグ・ハート

ビッグ・ハートの描き始め(写真・伊藤宜由)

 ハートを水平に大きく描いたビッグ・ハートはメイン会場では右手になる北西側からの進入で描かれました。この進入方向は誰も予見できておらず撮り逃した人も多かったようです。なぜこの方向にしたかというと、やはりレーストラックの進行方向で描くと片方が外側に膨らむため、内側に収めるようにこの方角にしたのかもしれません。水平に描く方法のほかに斜めに描くスラントと呼ばれるビッグ・ハートもあります。ビッグ・ハートは5番機、6番機の二機が描きますが、スラント版の場合には4番機がハートの中心に矢を射抜くスラント・キューピッドという課目も存在します。水平、斜め、矢抜き、といくつもの形があるのがこの課目です。これが飛行場での曲技飛行になると、さらに垂直にハートを描き矢が射抜かれるバーティカル・キューピッドに進化します。かわさき飛躍祭で水平に描かれたのは、雲があったからと思われます。雲がなくてスラントで矢を射抜くという選択肢もあったかもしれませんが、時間が長くなりますので、たとえスラントができる雲底だったとしても、矢は予定していなかったのではないでしょうか。

④ダイヤモンド・ローパス

ダイヤモンド・ローパスで等々力球場上空を通過し、そのままスモークを弾いて左旋回するブルーインパルス。渋谷SKY展望デッキより超望遠レンズで撮影(写真・塚田圭一)

会場通過後に反対方向へ向かって進むダイヤモンド隊形のブルーインパルス(写真・今村義幸)

 3課目目はY字を逆立ちさせたような(人の形のような)アローヘッド隊形でのアローヘッド・ローパスという課目が発表されていましたが、ダイヤモンド・ローパスとなりました。旋回してから逆方向を向いてもスモークを曳き続けたことから、ひとつ前のビッグ・ハートで編隊解散していた5番機、6番機がその長いスモークを視認して再び空中集合するための目印としたのではないでしょうか。
 もうひとつこの日の夜には川崎市市政100周年記念試合「川崎フロンターレvsサンフレッチェ広島」が等々力球場隣のとどろきスタジアムで開催されました。ダイヤモンド隊形は平成14(2002年)年6月4日、2002FIFA日韓ワールドカップの日本開幕戦でブルーインパルスが航過飛行を行ったときの隊形でもあります。この課目ではブルーインパルスの記念碑的な展示飛行も思い出されました。

⑤スワン・ローパス

等々力緑地にてサッカーの試合がみんな注目。記念飛行をみんなでお祝いしました《写真・座間孝広》

 鳥が多くいたのですが、タイミング良く6機と1羽が写りました。
 初めてブルーインパルスの飛行を拝見し、とても感動し久々にワクワクしました。多摩川で見ていたのですが、想像以上の川崎市民が集まって拍手も起こりとてもいい記念になりました。またいつか晴れた日に見に行きたいです《写真・APPY》

 この日は土曜日で川崎市市政100周年記念の各種イベントが開催されていましたがいろいろな運動場を備えた等々力緑地ではサッカーの練習試合と思われる光景も見られました。その足を止めれ空を見上げる普通の生活の中のブルーインパルスが捉えられています。嬉しいですね。
 多摩川の土手では、筆者も土手撮影組ですが、鳥がたくさんさえずっていました。APPYさんの写真に写っているのは、その姿形から夏鳥のツバメと思われます。ツバメさんもブルーインパルスと一緒に飛びたかったのですね。

⑥フェニックス・ローパス

かわさき飛躍祭 フェニックス・ローパスと終了のアナウンス(2024.06.29)

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 フェニックス・ローパスが紹介された後、しばらくの間がありました。また見られたのは正面からの進入ではなく会場右手の逆方向でした。飛行経路の裏側でフェニックス・ローパスを実施したようです。その様子はメイン会場のスタンドではないS席からも見ることができました。

「ご来場の皆様に申し上げます。ただいま予定外の他の航空機の飛行のため展示飛行を継続すると危険な状態になる可能性があります。そのためブルーインパルスの展示飛行をここで終了します。ありがとうございました」

 終了のナレーションがあり、ブルーインパルス目当ての観客には会場を後にする人がいました。特別演出のステージを見届けるために入場したファンネット動画班メンバーもその一人です。出口はなかなか球場から出られない混み具合でした。

 この展示飛行の間、筆者は丸子橋の東京都側下流100m辺りの多摩川河川敷にいました。シン・ゴジラのシーンと同じ景色でブルーインパルスを撮りたかったからです。一眼レフの頭にストロボなどを付けるホットシューという部分にスマホを立てるマウンターを付けて、写真を撮りながら動画も撮影していました。その中でビッグ・ハートでは入っていなかったヘリコプターの音が、ダイヤモンド・ローパスでは入っていました。この頃、頭上やや後ろにはヘリコプター2機が飛んでいました。歌で有名な桜坂の辺りでしょうか。飛行経路から直角にまっすぐで約1nm(1.8km)の距離です。

かわさき飛躍祭 ダイヤモンド・ローパス(2024.06.29)

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 このヘリコプターが終了のナレーションにあった予定外の他の航空機のようでした。YouTubeでテレビ局2社ほどがLIVE中継をしており、コメント欄はすぐに炎上状態になりました。展示飛行の情報はNOTAM(ノータム:NOtice To AirMenの略。航空情報の一種で、航空機の安全運航のために関係機関が出す飛行場・運航業務・軍事演習のような危険の存在などについての情報。あくまで「情報」であり法的な強制力はない)にも出ていましたが、ヘリコプターが違法な撮影飛行をしたということにはなりません。

かわさき飛躍祭で出された実際のNOTAM情報

 この日、メイン会場のステージはブルーインパルス以外は撮影禁止という条件でした。そのことからも特別演出というのはブルーインパルスの最後の通過をもってSHISHAMOさんが演奏開始という長野五輪の逆パターンかなと想像しています。いったん終了となって神対応での最初の一曲のみ急きょ撮影がOKとなったことからも“通過をもって演奏開始”だったのではないかと思います。特別演出があるのでお金を払ってでも中で見てほしいという主催者サイドの発信もありました。また、その課目は松島基地飛行場訓練で試されたリハーサルの課目構成から「レベル・サンライズ」だったのではないかとも思われます。一曲目の撮影が急きょ許可されたというのは、終了のアナウンスの後に発表されたのかもしれません。そのために多くの方が撮影許可ありとの言葉を添えて一曲目を撮影し投稿しています。演目リストにレベル・サンライズがなかったのは当初撮影不可だったからでしょうか。
 いずれにせよレベル・サンライズが実施されたとしても、SNSから流れていたリハーサル映像では進入方向はわかりにくく、ビッグ・ハートの進入方向も予見できませんでしたし、レベル・サンライズだとしても正面からだったのか右からだったのかはわかりません。どちらの向きにしても課目終了後に進行方向で大回りして膨らんでから空中集合することに変わりありません。前日に悪天候で予行ができなかったこともあり、本来の全容はわからないまま本番となりました。雲があったことでヘリコプターが十分に高度を上げられず横にいたということもあるかもしれません。羽田空港が近いということもブルーインパルスにとってもヘリコプターにとっても制約があったことと思います。事故は細かい条件の積み重ねで起こるものであり、民間企業であればヒヤリハットといったところでしょうか。

かわさき飛躍祭 ブルーインパルス展示飛行途中終了からSHISHAMO「明日も」航過まで

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 それらのことを考えると、編隊長のBENGAL班長は良く中止(課目変更)の決断をしたと思いました。今回の判断で改めて大ファンになりました。航空自衛隊の飛行班長になる人はやはり違います。こうした中止(終了)の事例は以前にもあり、記憶を思い起こせば熊谷基地開庁祭の予行でブルーインパルスの視界の中にヘリコプターがいて最初の1課目だけで入間基地に帰ってしまったこともあります。どちらが悪いということではありません。筆者の場合には、ブルーインパルスが適切な判断をして飛んでいるかがすごく大きな事柄となっています。他国ではこのような展示飛行で羽田と同じような空港が近くにあるエリアでも空域を占有し、課目によっては橋の下をくぐって曲技飛行を行うチームもいます。その方が安全で合理的であれば橋の下もくぐります。他にも海外ツアーをして国産機のビジネスの成功に貢献しているチームもあります。お国柄の違いもありますが比較もします。その中でブルーインパルスがブレてないと感じられることが自分の中ですごく大きいことに気が付きました。航空自衛隊しいては自衛隊の顔であり得るのか、そんなところが安全保障的な安心感の拠り所となっています。
 一旦終了となって特別演出を動画班メンバーが撮り逃したとわかった当初は憤りも感じました。S席1万円が無断になったと。でも、こうして整理してみれば、見られなかったフェニックス・ローパスも映っているし、終了の文言も完全に聞き届けることができたし、何より、もし特別演出が飛行終了の瞬間の演奏開始であったとしたら、SHISHAMOさんの演奏に耳を傾けることもなかったと思います。「明日も」、いい曲ですね。YouTubeでこのステージを見ました。聞き覚えもありました。予定通り進んでいたら聞くこともなかったと思います。また、多くのSHISHAMOファンの皆さんが喜んで見てくれたことは大きな意義があったと思います。

渋谷上空へ

渋谷SKY上空で旋回するブルーインパルス(写真・塚田圭一)

 フェニックス・ローパスを終えたブルーインパルスは会場上空を避け、バックストレート側を逆戻りして渋谷方面へと向かったようです。そして、予想通り渋谷SKYの真上で旋回を始めました。残念ながらスモークは曳いていませんでしたが、渋谷から新宿や中野を通って杉並方面を回り、一周して再び渋谷に戻ってきたそうです。

⑦デルタ・ローパス

 会場の反対側、多摩川河川敷で撮影しました。関東平野の平らな地形ながら、川崎らしい風景をと思い武蔵小杉のマンション群を入れようと検討しました。
 雲も低く、関東圏という航空交通の多い場所で、予行もできなかった環境でもきっちりとフライトしてくれました。上空、地上共に素晴らしい連携だったと思います。雲は多いながら青空をバックに撮れればと考えましたが何とか綺麗に入ってくれました。
《写真・i.o》

最後のデルタ・ローパスで等々力緑地上空を通過するブルーインパルス。左の白い屋根のとどろきスタジアム、やや中央にメイン会場となった等々力球場のネット、右にはJR南武線・武蔵中原駅前の富士通のビルが見える。渋谷SKY展望デッキより超望遠レンズで撮影(写真・塚田圭一)

 フェニックス・ローパスがアナウンスされた動画のタイムスタンプが14時33分、最後のデルタ・ローパスが上空を通過した動画のタイムスタンプが14時43分でした。こうしたときGPSで時計がアジャストされているスマホは正確でとても便利です。フェニックス・ローパスがアナウンスされたのはバックストレートの中間くらいでした。その後、フェニックス・ローパスのアナウンスからスモークが見えて中止のアナウンスまで1分半くらい、そこからノースモークで会場通過まで1分半くらい、渋谷までの延伸コースが4分、バックストレートの等々力球場真裏辺りから新横浜で旋回して最後のデルタ・ローパスまでが3分、とするとおおよそ計10分で動画のタイムスタンプのつじつまも合っています。

 今回はテレビ局のヘリコプターが2機も出てきたということで、それも天候事情などによりヘリを出せるかどうかは直前の判断になるのかもしれませんが、バラエティー番組などでブルーインパルスや自衛隊も少なからず取材協力しています。自衛隊を取り上げれば反響も良いのでこうした機会にヘリを飛ばすこともできるのだと思います。
 外国のように空域をブロックして曲技飛行を都市上空で行うチームもあります。とはいえ軍隊として強硬的にそれを実施している雰囲気ではなく街はWELCOMEの横断幕が出て大歓迎されています。かといって反対意見がないわけでもないようです。空域をブロックしてというのは我々ファンの希望でもあります。ですが強硬的に軍隊的にこれを行うのは日本らしくありません。みんなに求められてそうなっていくことが望ましいと思います。
 ですが現状のままでもできることはあるはずです。バラエティー番組などでは取材の申し込みから入念な調整を経て撮影から放映までの手間がかかっていると思います。展示飛行の空撮についても、自由取材でなくあらかじめ入念な打ち合わせをもってこれを取材することはできないでしょうか。予定がまだないとしても事前に打ち合わせておくことも有効かと思います。またジェット機とヘリでは速度差があります。例えば高速道路で同じ速度で並走していても恐怖感はありません。ですが法定速度で走っていても止まっている車や人が立っていたら速度差がありますからかなり怖いものです。
 写真集などでの同乗空撮や撮影機からの空撮では入念なブリーフィングのもとにこれが行われています。展示飛行でもこういうことができないでしょうか。以前の同様の事案で取材申請の有無を報道機関に問い合わせたことがありますが、ブルーインパルスが離発着した基地に伝えただけで詳細な打ち合わせがなされた形跡はありませんでした。
 もう少し準備に手間をかけてもらえれば、ブルーインパルスが知らずに「予定外の航空機」となることもないはずです。それどころかもっとファンが見たい映像が撮れるはずです。当方でブルーインパルスOBが同乗した報道ヘリでの空撮も試み、天候や空港との位置関係など条件は違いますが、撮影した事例を公開しています。ぜひ参考にしていただきたいです。(2023.10.10.付Facebook【説明しよう!】「かごしま国体開会式展示飛行について」)

 さて、このたびの飛行経路で入間から離陸しレーストラックパターンの出入り口は調布飛行場付近になっていました。調布飛行場をベースとした、定期便を除き、自家用機や航空測量会社などの軽飛行機が飛行を自粛していたという話を聞きました。その話はほとんど出回っていません。そうした誠意やご協力があって展示飛行ができることにも感謝いたします。誰が悪いとかではなく、そのこともここで皆さんと認識したいと思いました。

お召し機の政府専用機も帰国した晴れやかな日

渋谷SKY展望デッキより撮影された都内上空ルートで羽田空港RWY16Lにアプローチするお召し機(写真・塚田圭一)

 この日は展示飛行に先立ち江尻卓隊長によるサイン会も行われた他、夕方には中村憲剛さんと江尻隊長のトークショーも開催されました。
 改めまして川崎市市政100周年おめでとうございます!いいことばかりじゃないけれど「明日も」いい日になります!

読者投稿受賞作品(防衛日報社賞)

 応募で防衛日報社賞に輝きましたのは、座間孝広さんの「等々力緑地にてサッカーの試合がみんな注目」です!
 座間孝広さんには防衛日報社賞の記念品を贈らせて頂きます。

《投稿写真》別井圭一、てんて、座間孝広、APPY、i.o〈掲載順〉
(映像提供)NAOYUKI-N STUDIO 小菅なおゆき
(文/写真/動画)ブルーインパルスファンネット 今村義幸/塚田圭一/伊藤宜由/Yuka Miyamoto