令和6年(2024年)3月16日(土)、北陸新幹線の金沢・敦賀間が延伸開業され各駅の開業イベントに合わせてブルーインパルスが展示飛行を実施した。翌々日の18日(月)には今年元日に起きた令和6年能登半島地震被災者への激励飛行として能登半島上空を飛行した。

強い決意をもって実施された能登半島激励飛行

令和6年3月17日(日)に小松基地ランプ地区に並んだブルーインパルス。順延となり18日(月)に激励飛行が実施された(写真・西岡幹宏)

 いずれも小松基地に展開し同基地を母基地としたリモート展示として実施された。以前にはあった、小松基地航空祭の前日に佐渡分屯基地開庁記念行事で飛ぶなど、一展開で二つの展示飛行を行うカップリング展示が復活した。しかし、既に発表された4月からの新年度の日程にカップリング展示は見られず、能登半島の激励のために特別にカップリング展示を一度だけ再開したようだ。

令和6年3月18日(月)に能登半島激励飛行より帰ってきた6番機。小松基地第303飛行隊出身の加藤拓也1尉が操縦した(写真・西岡幹宏)

 東日本大震災で自身も被災者であるブルーインパルスは避難先より松島基地に帰還して10年となった。能登半島での激励飛行は地元石川県からの要望もあっての展示飛行であるが、訓練飛行の範疇でなく公式な日程に明記され飛んだこと、通常天候不良であれば中止となるところを順延で翌日に繰越してでも飛んだこと、などを鑑みれば、防衛省ならびにブルーインパルス自身の強い決意が感じられた。
 能登半島激励飛行は、主催者がいて、警備員を配備し、臨時駐車場や仮設トイレを設けた展示飛行ではない。この激励飛行を現地に赴くことなく小松基地で見守ったブルーインパルスファンネット協力アカウント@Sky Cloudの西岡幹宏氏のようなファンがいたことも記しておきたい。同氏はブルーインパルス到着から撤収までを小松と福井で過ごし、これを見届けた。
 

福井県では20年ぶりとなる北陸新幹線開業記念行事での展示飛行

平成15年9月15日の若狭路博2003は前日の小松基地航空祭とカップリング展示の日程で実施されたが、あいにくの天候でワンパスで終了となった(写真・藤吉隆雄)

 北陸新幹線の延伸に伴う開業記念行事もまた大変な盛り上がりを見せ、ブルーインパルスが福井県で展示飛行を実施したのは、公式展示記録に残らない平成30年(2018年)福井しあわせ元気国体の予行飛行を除けば、平成15年9月15日の若狭路博2003以来の(年度で)20年ぶりとなった。

パレード飛行と二カ所の編隊連携機動飛行を組み入れた画期的展示飛行

 北陸新幹線の延伸区間に沿って飛び、途中福井駅と小松駅では編隊連携機動飛行を6課目ずつ実施した、今までにない展示飛行だ。瀬戸大橋上空をパレードして高松市上空で編隊連携機動飛行を実施した例は記憶にあるが、各駅をあいさつしながら行きのパレードをし、帰りにはパレードの途中二カ所で編隊連携機動飛行をしたはじめての画期的展示飛行である。当初、行きはスモークなしとの案内であったが、これもスモークオンとなり各駅会場を盛り上げていた。編隊長は第11飛行隊長の名久井朋之2空佐が務めた。
 ここでは発表された時程に沿って展示飛行の全容を振り返りたい。

《12:35頃 小松基地 離陸》

kanaさんの頭上を超えて離陸していった1番機。GPSでアジャストされたスマホのタイムスタンプは常に正確で12:34を示している。定刻通りの離陸で展示飛行が始まった(写真・kanaさん)

小松基地を離陸し私の頭上を通過した時に真下から携帯で激写した写真と小松市上空での展示飛行『さくら』です。風の影響が心配でしたが、青空にとても綺麗なさくら※を咲かせくれました。小松駅イベント会場にいらした、川島3等空佐※を激写しました。 (kana)
 
※さくらと川島3佐は後半の小松駅のところで掲載させて頂きます。by ファンネット(ˆ ˆ)

12:36頃 加賀温泉駅 航過飛行
12:38頃 芦原温泉駅 航過飛行
12:40頃 福井駅 航過飛行
《12:42頃 越前たけふ駅 航過飛行》

越前たけふ駅上空を通過するブルーインパルス。小松から離陸したブルーインパルスの交信は聞いており、車で高速を使って1時間ほどの距離であるが、気が付いたらあっという間に来ていたという印象だった(写真・今村義幸)

《12:45頃 敦賀駅 航過飛行》

越前たけふ駅方向から敦賀駅上空に現れたブルーインパルス。終点敦賀駅の手前の高架の先は車両基地となっている(写真・藤吉隆雄)

《12:46頃 敦賀駅 航過飛行》

敦賀駅で折り返して2回目の通過をするブルーインパルス。1回目のスモークが残っている。敦賀駅東口の新幹線口側より撮影。タイムスタンプは12:48(撮影・Yuka Miyamoto)

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《12:49頃 越前たけふ駅 航過飛行》

越前たけふ駅の裏山より撮影された復路2回目のブルーインパルス。正面やや左に見える山は越前富士とも呼ばれる日野山である。越前たけふ市を最寄駅とする田舎を持つ筆者には心の故郷的な山となっている(写真・藤吉隆雄)

《12:55~13:10頃 福井駅 編隊連携機動飛行(6課目)》
 福井駅上空では、トレイル・ローパス、デルタ・ローパス、フェニックス・ローパス、サクラ、ビッグ・ハート、レベル・サンライズの6課目が実施された。

福井1課目目のトレイル・ローパスは縦一列のトレイル隊形で北陸新幹線をイメージしたという(写真・えみさん)

唯一綺麗に撮れた写真です。
当日待ってて来たと思ったらアタフタしました(笑)
動画撮ってると思ったら撮れてなかったり(笑)
写真もうまく撮れなくて(汗
家のベランダで撮ってたら思ったより大きくて全て入り切らなかったり(汗
この写真がお気に入りです。
ブルーインパルスに感動しました(^^ (えみ)

足羽川に沿って左手の福井駅へデルタ・ローパスで向かうブルーインパルス(写真・塚田圭一)

3課目目のフェニックス・ローパス(写真・塚田圭一)

4課目目のサクラ(写真・西岡幹宏)

5課目目のビッグ・ハート(写真・伊藤宜由)

福井駅では最後となる6課目目のサンライズ(写真・伊藤宜由)

福井駅近くの足羽川の特設会場では総括班長の林幸一郎3空佐と2番機の東島公佑3空佐(写真左)がファンサービスに立った。東島3佐はこの展示飛行の翌週にラストフライトを迎え転出した。2番機後任の松永大誠1空尉は展示飛行デビューとなった(写真・伊藤宜由)

13:12頃 芦原温泉駅 航過飛行
13:14頃 加賀温泉駅 航過飛行
《13:20~13:35頃 小松駅 編隊連携機動飛行(6課目)》
 小松駅上空でも、トレイル・ローパス、デルタ・ローパス、フェニックス・ローパス、サクラ、ビッグ・ハート、レベル・サンライズの6課目が実施された。

小松駅での1課目目は南から進入のトレイル・ローパス(写真・庄山遼太さん)

小松駅にあるKOMATSUの重機と駅舎を取り入れて観客が見上げるような写真を撮りました。
予想以上に観客が多く皆関心があるように感じました。これからの北陸の発展が期待できるイベントでした。ありがとうブルーインパルス!(庄山遼太)

2課目目のデルタ・ローパスは北からの進入。小松駅新幹線口にある巨大なKOMATSUの重機と(写真・庄山遼太さん)

3課目目のフェニックス・ローパスは東側から日本海方向へ(写真・庄山遼太さん)

小松駅4課目目のサクラ。左旋回で描かれるサクラ全容が見事に捉えられています(撮影・kanaさん)

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5課目目のビッグ・ハート(写真・庄山遼太さん)

北陸新幹線開通記念行事展示飛行の最後を飾ったレベル・サンライズ(写真・庄山遼太さん)

小松駅前会場では飛行班長の川島良介3空佐らがファンサービスに対応した。展示経路上に二カ所も会場を設け、幹部を派遣した展示飛行をこれまで聞いたことがない。ブルーインパルスも全力で北陸を応援した(写真・kanaさん)

13:40頃 小松基地 着陸

各駅で盛り上がった開業記念イベント

 北陸新幹線が延伸した福井県は筆者の父の田舎である。夏休みには、東海道新幹線で名古屋で乗り換え特急しらさぎに乗るか、米原に停まるひかりに乗って米原乗り換えで武生駅や鯖江駅まで行ったものだ。南越前市の南条駅近くには先祖の墓もあり、20年前に墓参りした際にはじめて小松基地航空祭に行ってから20年にもなった。上記の若狭路博2003前日の小松基地航空祭である。お墓から数百メートルのところにトンネルの出口があって立派な高架橋が通った。その下には特急しらさぎで通った北陸本線が今も通っている。遮断機もないような踏切がいくつもある。正面には越前富士とも呼ばれる日野山が構える。この辺りの人にとっては心の故郷となる山だ。日野山の左側、麓の裏側には越前たけふ駅ができた。20年前、この景色の中に新幹線が通りブルーインパルスが飛ぶとは夢にも思わなかった。父は2年前に他界したが見せてあげたい光景だった。

越前中平吹高架橋を敦賀駅へと走る下り始発のつるぎ1号。下を在来線の北陸本線が走り、後ろには日野山がそびえる(写真・今村義幸)

越前たけふ駅前では早朝から地元紙の号外が配られた(写真・今村義幸)

越前たけふ駅の改札口。ほとんど来ないだろうと思った北陸新幹線はたくさん来た。富山と敦賀の間でも多く行き来しているようだ。ブルーインパルス通過時も来ていたがちょうど駅に入っており絡めて撮ることはかなわなかった(写真・今村義幸)

動画班長には越前たけふ駅から敦賀駅まで一駅乗ってもらい手分けして撮影することにした。記念すべき開業初日の乗車券である(写真・Yuka Miyamoto)

越前たけふ駅前のイベント会場では1日駅長の小泉孝太郎さんがトークショーを行ったほか、陸自鯖江駐屯地からは81式自走架柱橋が展示を行い、子供たちが運転席に体験搭乗して人気となっていた(写真・今村義幸)

福井駅からほど近い福井中央公園では北陸新幹線ウェルカムフェスタが開催され、福井地本が高機動車や軽装甲機動車を展示した(写真・伊藤宜由)

各駅前には自衛隊地方協力本部のブースが設けられ募集活動や広報活動が実施された。写真は加賀温泉駅前にて(写真・藤吉隆雄)

 北陸新幹線延伸開業、誠におめでとうございました。北陸には綺麗な雪解け水を背景にしたおいしい食べ物や観光地がたくさんあります。ご紹介できるのは子供の頃から何度も遊びにいった福井県くらいですが、多くの戦国時代の遺跡が残るほか、永平寺や永平寺の修行寺である宝慶寺は山の上の大野盆地の外れにある静かな伽藍(がらん)です。車で走り通しで宝慶寺まで行き、帰りにエンジンが掛からずお寺の電話を借りてJAFを呼んだものの来てみればエンジンがかかったことがありました。その間に山の静けさの中で飛んでいるオニヤンマなどを見て心が洗われ落ち着きを取り戻しました。大野盆地からさらに山道を上がると九頭竜ダムがあります。昭和の電力を支えたロックフィルダムと石積みのダム壁は圧巻です。今では恐竜が人気の福井県ですが、以前には司馬遼太郎さんが「街道をゆく」で訪れた土地として、それらを巡るのも味わい深いものでした。勝山市には司馬さんも泊まった板甚旅館もあります。大野の宝慶寺などは道に迷うほどでしたが、司馬さんの街道をゆくのおかげで立派な交通標識が盆地の真ん中にできました。東尋坊の景観も有名ですが、少し外れたところに江戸時代末期の砲台跡があります。松平春嶽の治めた越前藩の名残です。海の幸としては越前ガニが有名ですが、イカやサザエもおいしいです。地元の人は越前海岸のスーパーで安く美味しいお魚を買って食べています。越前たけふ駅の近くには「越前そばの里」という武生製麺直営のおそば麦屋さんが絶品です。紫式部がいた土地として記念館もできました。羽二重餅も甘さ控えめで独特の柔らかい食感とともに大変おいしいです。

 これまでにもブルーインパルスは小松基地航空祭や砺波チューリップフェア、輪島分屯基地開庁記念行事などで飛んできましたが、新年度でも既に小松基地航空祭の日程が決まっています。北陸新幹線は小松基地航空祭へのアクセスでも最も便利な交通手段となります。

 今年度は防衛日報デジタル読者の皆様から写真や動画の投稿を頂き記事を作成する試みを開始いたしました。たくさんの応募をありがとうございました!

 そして今回の応募で防衛日報社賞に輝きましたのは、kanaさんの「小松基地を離陸し私の頭上を通過した時に真下から携帯で激写した写真」です!
 kanaさんには防衛日報社賞、えみさんと庄山遼太さんにはブルーインパルスファンネット賞の記念品を贈らせて頂きます。

 これからも読者の皆様と一緒にブルーインパルスの展示飛行を記録し、行きたくても行けなかったファンの皆様に、少しでもその様子をお届けできるよう募集・掲載していきますので宜しくお願い致します。
 

令和6年度ブルーインパルス・ツアーマップ(作成・伊藤宜由)

【投稿写真・動画(受付順)】えみさん/kanaさん/庄山遼太さん
【文・写真・動画】ブルーインパルスファンネット 今村義幸/伊藤宜由/Yuka Miyamoto/藤吉隆雄/塚田圭一/西岡幹宏(@Sky Cloud)