坑道中隊の特徴はこうだ。トンネルは車両や資器材の格納保管場所となり、指揮所など前進拠点を設けるにも好都合。防御陣地のベースになり、大勢の人員の身を守る場所であると同時に、作戦拠点にもなる。地対艦ミサイルなどの重特科火力をトンネル状の坑道型陣地から運用することを想定している。
掘削作業工程
作業工程はまず、設計班が(1)地質調査(2)弾性波探査(3)ボーリング調査(4)設計図作成などを行う。
坑道班が安全祈願を実施した後、主要器材にお浄きよめを行い、掘削を開始する。通常、1メートルを掘るのに約6時間かかり、約25立方メートル掘削できるという。
安全祈願
その後は、崩落や切羽面からの肌落ちを防止する「コンクリート1次吹き付け」、馬蹄形のH鋼を設置して一時的に支保する「支保工設置」。
掘削
コンクリート1次吹き付け
支保工設置
コンクリート、支保工、地山の一体化を図る「コンクリート2次吹き付け」、鉄筋の補強材を岩盤内の削孔に差し込んで、岩盤と吹付けたコンクリートを一体化させ、ロックボルトの作用効果により、地山の強度を向上させる「ロックボルト打設」などが一連の作業だ。
コンクリート2次吹き付け
ロックボルト打設
全国の坑道中隊は、平成3年3月以降、301から304坑道中隊の4個中隊が編成された。同22年3月に303中隊が廃止され、現在は302のほか、301(上富良野駐)、304(飯塚駐)の計3個中隊がある。
第302坑道中隊の歴史 平成8年3月29日の新編に遡る
岩見沢駐ホームページで紹介されている広報紙「いわみざわ」には、この日の隊旗授与式の様子が取り上げられていた。初代中隊長の熊谷3陸佐は、2年前に編成された301坑道中隊に「追いつけ、追い越せ」を合言葉にし、「『有事、真に役立つ部隊』を目指す」と決意を語っていた。
後輩を育てた成果|302坑道中隊長・高野1陸尉
坑道中隊は来年春の部隊改編に伴い、廃編する予定。302坑道中隊も28年間の歴史と伝統に幕を下ろす。
7月3日から11日の間、302坑道中隊は最後の訓練検閲を受閲した
◇最後の訓練検閲に対する思いを聞きました。
28年続いたのは先輩が後輩を育てた成果ですので、 その成果を最後に発揮して終われたらなと思っています。隊員にはしっかりと最後「牛手獣の帯を飾ろうと。」と伝えました。
(今回の取材を通じて)こういう中隊があるということを知ってほしいです。
その言葉通り、任務を完遂し、「有終の美」を飾った。
検閲終了後、302坑道中隊は「引き続き施設支援能力、戦闘基礎動作、協同連携能力をさらに向上させ、幕を下ろすその日までいかなる任務も遂行し得るよう、日々錬磨していく」とのコメントを寄せていた。
「有事、真に役立つ部隊」は来年3月、302坑道中隊としての役割を終え、新たなスタートを切る。