こんにちは。「永遠の図書室」店番でございます。
 さて少し前、図書室に来てくださった方がこう言ったのです。

 「僕は山本五十六(やまもと・いそろく)が好きなんですよ」

 店番という重大な役割をしている私ですが、何分まだまだ未熟者。知らないこともたくさんありますし、ご来館者様のほうが深く、広く知ってらっしゃる場合もあります。そのため山本五十六についての知識も、お恥ずかしながらかなり浅く。これ幸いと山本五十六についてのお話を細部まで聞かせていただきました。

 ということで今回も人物棚より、時代を越えて愛される「山本五十六」についてのお話です。

太平洋戦争で連合艦隊司令長官として指揮

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 それではまず知らない人もいらっしゃると思うので、「そもそも山本五十六とは誰か?」というお話をしていきたいと思います。
 山本五十六は海軍軍人。人物棚は今までに三人紹介してきましたが、海軍の人は初めての紹介になりますね。最終階級は元帥海軍大将というあまりに立派な役職でした。
 たまに「山本五十六っていうことは一から五十五もあるのか!?」という感じの冗談を見かけますが、この「五十六」という名前は彼が生まれたとき、お父さんが56歳だったことから名付けられたそうです。当たらずも遠からず………いや、やっぱりちょっと遠いですね。
 連合艦隊の司令長官という立場で海軍を指揮し、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦と名だたる作戦に関わった人物である彼。情報だけ読むとかなり有能なトップ、という印象ですね。ところが悲しいことに、世の流れというものはあまりにも大きく、時として個々の才能や光さえ押し流してしまうもの。ミッドウェーの敗北の一年後、前線の視察中に戦闘機に襲われる……という最後を迎えました。

 日露戦争後渡米した山本五十六は、アメリカと日本の国力の違いをその目でしっかりと見てきました。だからでしょう、こと熱くなりがちな決断において、「いや、それはどうだろう」と冷静に言葉を発してきました。だからこそアメリカとの開戦に反対し、三国同盟の締結へ異を唱えたのでしょう。……それも押し流されたもののひとつ、と思うと「なんという要を流しちゃったんだ……」と思いますね。
 当時の判断の場所からしてみればなんという及び腰!と言われた可能性もありますが、後年の私からしてみればかなり冷静だなあ、などと思ってしまいます。

 そんな五十六さん、ただ言葉を出しているわけではけしてない。三国同盟締結後、「やれと言われればやります。半年か一年は随分暴れてみせましょう」(意訳)との言葉通り、この言葉の翌年に真珠湾で暴れました。それが真珠湾攻撃ですね。うーん、有言実行。
 ちなみにこの言葉だけ見ると「色々言うけどやるときはやっぱりやるんじゃないか」と思われるかもしれませんが、このあとに「でも2年3年となると確信が持てない。三国同盟は締結したからもうしょうがないけど、どうにか日米開戦は回避できないかな」(意訳)と続けています。やはり冷静。

 ちなみにそんな五十六さんのエピソードに、「カジノ出禁」と「たいそうおモテになる」があります。
 五十六さんはもう無類のギャンブル好きであり、しかもめっぽう強いというたぐいまれなる強運の持ち主でした。
「俺を二年ヨーロッパで遊ばせておけば戦艦一隻作れるくらいの費用は稼げる」(意訳)ということを軍事参議官に言ったとのこと。幸運の女神と入籍したのかと思うほどの自信です。なおその後勝ちすぎて出禁になったそうな。そんなに……?

 もうひとつのエピソードですが、彼は特技や余興芸のレパートリーが多く、なおかつユーモアがあり優しい、という今でもおモテになりそうな要素を沢山持っていました。そのため芸妓さんたちから大人気、たくさんの海軍軍人が通っても、一番人気は五十六さん、というおモテ具合だったそうです。ちなみに同性からも「2、3か月もあればたいていの人が尊敬し、懐く」と言われるほどの人物観です。かなり魅力的な人物だったのでしょうな………

 ちなみに人物棚シリーズを始めてからずっと、「辻は石原を崇拝していた」「石原は乃木大将の所にごはんを食べに行った」などどこかしらで繋がっているというお話を前にしたかと思います。五十六さん、海軍の人なのでさすがにここは繋がらないかな……と思っていたら、なんと乃木さんを尊敬していたのだとか。そして辻も彼を「名実ともに元帥だった」と評していたそうです。
 好意的に見ている人がいるなら否定的に見ている人もいるのが人間の常ですが、なんとなく好意的に見ている、というより愛されている印象の強い人ですね。

 余談ですが甘いものがかなりお好きだった様子。頭のキレる歴史上の人物が甘いもの好きだと、一気に親しみが沸いてしまう私です。

 それでは棚を見てみましょう。今回ご紹介するのはこの二冊。

一冊目は「新版 山本五十六」(著:阿川浩之)

 山本五十六という人物について研究し、余すところなく書いた作品。なんと序盤で石原莞爾との「ひとつの可能性」についての話が展開されます。歴史も人も繋がっている、と書いたのは私ですが、まさか人物棚全員とどこかで繋がりがあるとは思わなんだ。

 ちなみに石原いわく「実は山本次官にも会いたいと思っている。海軍で戦争をやめさせることのできる人は山本さんしかいない」、と、その先を知る我々が見ると「本当に石原は先の先の可能性のひとつを見てるなあ……」と思ってしまいます。五十六さんも会いたかったらしいのですが、お互い結局会えぬままだったそうです。
 初版が発売されてから新しく資料が発見され、原稿用紙にして約三百枚の加筆をしたものがこちらの新版。一般的な原稿用紙が一枚400字なので、それを300枚というと………かなりの加筆ですね。かけた時間と労力、ひとりの文字書きの端くれとして見習いたいものです。
 ボリュームのある文章量と挟まれる写真という目で見る資料、どちらも得ることのできる一冊となっております。

 さて二冊目。基本的に普段はやらないのですが、今回は特別に同じ作者の本を紹介しようと思います。それがこちら。

「山本元帥!阿川大尉が参りました」(著:阿川浩之)

 「新版 山本五十六」が本編とするならさながら「山本元帥!」はスピンオフといったところでしょうか。ともかく、著者が「山本五十六」執筆後にどうしようもない気持ちにかられ、山本五十六最期の場所を一目見ようとブーゲンビル島まで旅をした紀行文。果たして著者は山本機をその目で見つけられるのかーーーー。著者本人も海軍に所属していたという点、一人の人物についてひたすら思考し、考えたという点。その点たちが繋がった果ての地がきっとこの本なのだと思います。おそらく「新版 山本五十六」は読み終わってからが始まりなのだと思います。

 余談ですが、阿川さんの執筆した本は他のコーナーでもつらほらと顔を覗かせております。「海軍こぼれ話」もありますよ。

あまりにも有名な格言を遺しています

 しかし、この時代と向き合うこと自体エネルギーがいるのに、一人の人物についてひたすら熟考するのはそれ以上にエネルギーがいります。言葉にするとなったらそれ以上です。
 それでもきっと、山本五十六という人物には人の心をそうさせてしまうほどの、魅力という言葉では足りないような「なにか」があるのです。
 その「なにか」は令和という年になっても、言葉であり資料となって、人の心をつかみ続けて離さないのでしょう。

 ここで彼の遺した、有名な格言を載せておきます。

「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、ほめてやらねば人は動かじ」。

 まったく山本五十六という人は、これだから今も昔も愛されているのです。

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営業時間:13時~16時(土日祝のみ17時まで) 月火定休日
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