キャリアインタビュー第5弾
元自衛官キャリアインタビュー、ライターの太田です(私の経歴は以前の記事をご覧ください)。
いつもご覧いただきありがとうございます。今回は、自衛隊看護官として勤務後、ブランディングトレーナー・印象管理研修トレーナーとして活躍する大久保美帆さんのインタビューです。
大久保さんは、民間病院に勤めた後に自衛隊入隊し、総理大臣随行の緊急医療チームでも活躍していました。
本日はそんな大久保さんの自衛隊時代のエピソード、自衛隊への思い、また自衛隊で培われた能力から仕事観までお話を伺いました。
経歴
ーー本日はお忙しい中、退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、大久保さんの経歴を教えていただけますか。
大久保さん:看護師として新卒で大学病院に4年勤務した後、防衛省に転職しました。約10年間自衛隊で看護官として自衛隊中央病院に配属、途中総理大臣官邸内の緊急医療支援チームでの勤務などを経て、結婚を機に自衛隊を退職しました。
転職・起業活動における印象作りの戦略や消費者向けサービスの事業内容のブランディングサポート、プロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」の立ち上げやブランディング・選手スタッフのブランドマネジメント、法人営業に従事しました。
「ヴィクトリーナ姫路」の立ち上げでは、初代監督が竹下佳江さん、眞鍋政義さんがジェネラルマネージャーとして就任し、一緒に働いていました。私は、チームがプロ化を進めていく中で、チームブランディングのサポートをし、最短でトップリーグに昇格するところまでをご一緒しました。
現在は、主に一般企業、病院職員向けの接遇・印象管理研修のプログラム構築・講師を行なっていたり、また、転職・起業の準備段階で必要な、「自分の強みを言語化して相手に伝わる見せ方」のサポートを行っています。
病院研修は、航空会社のCAさんが行っているケースもありますが、必ずしも現場に即していないこともあり、そうした現場目線や現場に合わせた研修を看護師経験と自衛隊勤務の経験をもとに研修をしています。
民間看護師から自衛隊への転職
ーー自衛隊時代は、緊急医療チームでも活躍されたんですね。では、自衛隊に入隊された背景や在職時の職務内容を教えていただけますでしょうか。
大久保さん:看護師として新卒で大学病院に4年勤務していましたが、大学病院での勤務だけで無い経験も得たいと考えていました。
父の同級生が地方連絡部の仕事をしていた関係で、自衛隊別府病院の見学をする機会があり、自衛隊で看護の経験は通常なかなかできないことと、民間で経験のある看護師の公募枠があると知り、受験しました。
無事合格し、入隊後は自衛隊中央病院で看護官として内科系・外科系の病棟に勤務したのち、内閣府技官を兼任。総理大臣官邸内の緊急医療支援チームに配属され、官邸内での医務室業務、総理大臣の外遊や国内出張などの随行員として医療支援活動をしていました。
首相外遊同行や緊急医療チームでの経験
ーー総理大臣への随行もしていたんですね、自衛隊在職中の思い出・エピソードを教えていただけますか。
大久保さん:大学病院等民間組織ですでに社会人として生活していたため、自衛隊内での生活、自衛隊員としての振舞いや訓練など、すべてが自分の想像のはるか上で驚くことばかりでした。
それまでは大学病院で過ごす時間が大半だったので、大きな声を出すこともほとんどなかったのが、衛生学校での基本教練は、今まで出したこともないような大声で号令を出したり、他にも上官への報告の作法、時間の表現の仕方、一般社会では見聞きすることのない場面がたびたびあり、教育中面食らったことは今でも鮮明に覚えています。
衛生学校で教育を受けた後に正式入隊し、自衛隊中央病院に勤務しました。陸曹長として階級はスタートし、翌年に幹部に昇進。途中、総理大臣官邸内の緊急医療支援チームに配属された時には、かなり印象深い経験をさせてもらいました。
実は、首相が乗るための政府専用機は航空自衛隊が運用しており、そのため搭乗員はみんな自衛官なんです。客室乗務員も航空自衛官ですが、当時整備運行等の支援を担当していたJALへ研修に行き、民間のCAさんと同じような作法を習得して勤務しているんです。
スマートで細やかな気づかいが感じられる所作はとても居心地がよく、素晴らしかったです。
私は医療チームでしたが、首相外遊の同行時には政府専用機に、普段お茶の間で見ているニュース番組のアナウンサーの方がいらっしゃったり、テレビで見たことのある外国の首脳陣を、遠目ではありますが拝見する機会も多くありました。
そうした点で、各国の首脳陣の振る舞いやリーダーシップ等を間近に見たことも、その後のブランディングの仕事への興味関心に繋がっています。
看護師としての経験と自衛隊の経験を生かした病院向け研修を開発
ーー現在は、研修のお仕事をされているかと思いますが、お仕事やご自身の今後のキャリアをお聞かせください。
大久保さん:病院職員向けの接遇研修に力を入れています。病院では、企業の接遇研修で学ぶ内容が必ずしも適切ではなく、現場とのミスマッチを痛感している関係者が多い現状です。
たしかにお辞儀の角度や敬語の使い方といった形式的な接遇も大切ですが、健康になんらかの問題を抱える人は、その時にどんな援助や言葉がけが必要か、普段とは違った配慮が必要です。
看護師のキャリアのある講師が伝える接遇は、今後ますます病院をはじめとする医療の現場で必要になってくると確信しています。
自衛官が生かせる能力
ーーたしかに最も必要なのは患者さんに寄り添うことですね。そうしたキャリアを重ねている大久保さんが考える、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等ありましたら教えてください。
大久保さん:まず調整力があると思います。調整力はとても重要で、どんな職場でも活用できる能力です。自衛隊は任務を遂行する上でさまざまな部署間の調整があります。
大学病院の時は、小さな個人が他部署との調整をする機会が少なく、自らの与えられた仕事を着実にこなすことが求められ、部署の垣根を超えた仕事がそこまでありませんでした。
ただ、自衛隊は組織が大きく縦割りでもあるため、その調整に力が大変求められました。そうした調整力が、民間に行った際に調整する意識が根付いていることで、組織を円滑に進めるための仕事に役立っていると感じています。
このコロナ禍において、リモートワークがどれだけ活用されるようになっても、人と人のコミュニケーションがなくなるわけではありません。むしろ、齟齬が起きないようにお互いの認識にズレがないかを確認し合う作業は今まで以上に重要です。そのため、調整力は今まで以上に求められてくるのではないでしょうか。
あわせて、コミュニケーション能力も生かせると思います。自衛隊では、今まさに、現場に何が必要かを見極めたコミュニケーションへ力を入れること多かったです。
それにより組織が円滑に動き、とくに自分が当たり前と思っていたことや、経験を相手が持っているという認識にはしないように注意していました。そうしたことは円滑な組織運営が求められる自衛隊において、心がけている人が多かったように思います。
民間からの転職組だった私自身が自衛隊特有の専門用語や職務内容にとまどったのと同じように、退官後に新しいことをはじめるときには、わからないことは正直にわからないと言葉で示したり、自分の理解したことと相手が伝えたいことに相違がないかを確認する作業=調整力が、民間企業への転職後も信頼関係にもつながると考えます。
ーー調整力、コミュニケーション能力はどこでも必要とされる能力ですね。本日は、元自衛官のキャリアに関してお聞かせいただきありがとうございます。
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