陸自7師団(師団長・武田陸将)は9月10日から13日の間、千歳、苫小牧、釧路各市、釧路町、関係各機関の協力を得て、師団の「長距離機動訓練」を実施した。
訓練は、陸上における公道自走、海上における船舶輸送で7師団が所在する東千歳駐から道東の釧路駐に部隊を移動させるもの。73戦車連隊(連隊長・田近1陸佐)、7偵察隊(隊長・加賀谷2陸佐)を基幹とした訓練部隊として装軌車19両、装輪車18両が参加した。
10日夜、訓練部隊の主力は、船舶輸送の出港地となる苫小牧港へ向け、千歳、苫小牧両市の公道を約30キロにわたって自走。苫小牧港到着後、港湾、船舶関係者、中央輸送隊の誘導により民間貨物船に円滑に乗船した。
船舶輸送の後、釧路港に到着した訓練部隊は安全確実に下船。12日夜、釧路市、釧路町の公道を約20キロ自走して、同日中に釧路駐への移動を完了した。
この間、公道自走の経路沿いでは、千歳、苫小牧両市長、釧路町長をはじめ、隊友会、家族会や関係協力団体から温かい激励があり、また、地域住民からも多くの応援があったことから、隊員の士気は大きく高揚した。
7師団は訓練を通じ、民間貨物船を利用した長距離機動に関する部隊・隊員の能力を向上させた。加えて、港湾管理者、関係自治体、警察、海上保安庁、国土交通省などの部外機関との連携と協力関係を向上させることができた。
7師団は「いかなる任務をも完遂し得る陸上自衛隊唯一の機甲師団として、武田師団長を核心とし、『今、戦える師団への進化』『新生機甲師団の創造』を目指し、引き続き実際的な訓練を続けていく」としている。
<編集部より>
日本は今、南西諸島周辺への防衛対策を「一丁目一番地」としています。いうまでもなく、周辺諸国などによる活発な動きが背景です。
多くの島々を抱える地域だからこそ「国民保護」に向けた対策は極めて複雑であり、有事の際、万全の態勢を取る上で本州から駆け付ける「援軍」となる新たな大組織「自衛隊海上輸送群」が結成されたわけですが、それだけでは足りないこともあります。
全国にはそれぞれに特色を持つ部隊が各地に存在しています。大規模な災害派遣や自然災害の発生などで現地に応援部隊が駆け付けるように、「さらなる援軍」「国レベルの連携作戦」が欠かせません。自衛隊ならではの「機動展開」です。
「いざ、鎌倉」では国全体で国を守り、国民を守るため、迅速で効果的な作戦が重要となり、陸地から海上から多くの部隊が参戦し、自衛隊が「ワンチーム」となるのです。だからこそ、遠方の部隊では普段からの「長距離機動訓練」は必須となります。
防衛日報の本日(10月17日付)2面トップ記事として掲載したのは、陸上自衛隊7師団が担任部隊として実施した報告です。東千歳駐屯地から釧路駐屯地まで、公道を計50キロ走破し、その間には苫小牧港から釧路港までは民間の貨物船で移動するなど、装軌車19両、装輪車18両などによる機動展開能力の向上を目的に実施されました。
上部組織の北部方面隊によれば、短期間で多くの重車両を機動させるためにはさまざまなノウハウの維持や向上、継承が必要ということです。いくつかのポイントに絞ってみれば、やはり、公道自走ではないかと思います。
今回は地域への影響や騒音などを考慮し、夜間の移動でした。地域によってはいまだに、「戦車=戦争を思わせる」などとして公道を走ること自体、抵抗するところもありますが、7師団の訓練は地元の千歳、苫小牧、釧路各市などの理解もあり、毎年、実施されているのです。場所によっては市長らが沿道で激励していました。こうした光景は自衛隊にとってもうれしい限り。参加隊員たちのモチベーションアップにもつながったことでしょう。
もちろん、ホームページを見ると、苫小牧市では沿道の市民らへの周知チラシを事前に配布したり、騒音や振動測定を行うなど配慮をしていました。住民サービスを基本とする自治体ですから、それは当然のこと。関係各所との連携は絶対条件です。
陸自唯一の機甲師団として多くの装甲車両などを装備する7師団ならではの大掛かりな訓練でした。地域にはまだまだ、いろいろな思いがあるかもしれませんが、訓練は必要です。その理由は、7師団の記事の最後のコメントにある「『実際的な』訓練を続けていく」に集約されるように思います。
パレードとは違います。いつ、何時起きるかもしれない有事には北海道だろうが本州だろうが、はせ参じるために行うのが機動展開。長距離であってもそうでなくても、管轄以外の土地に移動するため、自衛隊には絶対に欠かせない大きな訓練なのですから。