<北海道>南恵庭駐105施設器材隊(隊長・髙島2陸佐)はこのほど、北海道大演習場東千歳地区第2滑走路で、「令和6年度滑走路被害復旧訓練」を実施した。
ドローンよる被害調査も実施
<北海道>南恵庭駐105施設器材隊(隊長・髙島2陸佐)はこのほど、北海道大演習場東千歳地区第2滑走路で、「令和6年度滑走路被害復旧訓練」を実施した。
ドローンよる被害調査も実施
訓練は、団隷下部隊などに対し、滑走路被害復旧に関する普及訓練を実施し、滑走路被害復旧要領の概要を習得させるとともに、ドローン、遠隔スキッドステアローダによる被害調査・進入路確保などDX検証を実施することが目的。想定では、敵の航空攻撃などにより空港の滑走路が被害を受け、空自の支援が得られない状況下で、陸自のみによる復旧の要領について演練を実施した。
普及訓練では、13施設群、5施設隊が参加。被害調査から被害復旧までの一連の行動について、知識教育、展示・説明、機能別訓練、総合訓練などを段階的に実施し、小弾痕の復旧におけるラインオブサイト(復旧範囲の決定)、路盤成形(コンクリート破砕・除去、路盤材の投入、整形・転圧)、復旧作業(早強コンクリート生成、打設)、スポール被害の復旧要領の習得を図った。
滑走路被害復旧作業(コンクリート破砕及びコンクリート除去)
滑走路被害復旧作業(ライオブサイト法 簡易測量)
滑走路被害復旧作業(小弾痕補修のコンクリート打設)
滑走路被害復旧作業(スポール痕補修 ペイブメント打設)
DX検証では、3施設団本部付隊の支援で、ドローン(蒼天)の自動飛行により被害調査を実施。被害箇所の数量・規模、不発弾の識別など所望の成果を得るとともに、遠隔スキッドステアローダにより、クラスター弾などの不発弾の混入が予想される瓦礫(がれき)の除去を実施し、レスカジュアリティーを追求した進入路の確保要領について検証・演練した。
ドローン(蒼天)による被害調査
遠隔スキッドステアローダによるガレキ除去
南恵庭駐は「今後も本訓練で得た成果を踏まえ、施設技術能力の向上およびDXを推進し、『プロフェッショナル』としての誇りを持って任務に邁進していく」としている。
<編集部より>
至極、当然のことですが、空港や飛行場は航空機を安全に離発着させるために必要不可欠な施設。さらには、滑走路が攻撃を受けたり、自然災害などで使用できなくなれば、任務を果たすことはできなくなります。自衛隊にとっても滑走路被害の復旧対策、それも迅速な対応は必須となるわけですから、訓練も随時、実施することが求められています。
思えば、ロシアのウクライナ侵攻の際も、ロシアが当初から空港を攻撃していたことは当時、大きなニュースとなりました。敵に狙われる場所の一つでもあり、空港、滑走路は日本の防衛の中でもとても重要なインフラなのです。
被害を迅速に復旧し、航空機の運航を再開させるための訓練は基本、主として航空領域を担う航空自衛隊が単独で、あるいは日米の共同訓練の中で、さらには航空部隊も持つ陸上自衛隊との共同での訓練などが一般的といわれていますが、想定外を想定することもまた求められるのが有事です。空自の支援が得られないという想定もまた、欠かせません。
そこで、防衛日報の本1月2323日付)2面では、南恵庭駐屯地105施設器材隊が実施した訓練の報告を掲載しました。航空攻撃で滑走路が破壊された上、上記のように空自の支援が得られないというシチュエーションでした。
訓練では、小弾痕の復旧や路盤材の投入などによる成形など一連の要領の習得を図る一方で、最近では当たり前ともなってきたドローンでの被害調査などのDX検証は、「プロフェッショナル」・施設科部隊ならではの演練でした。クラスター弾などの不発弾が混入されている瓦礫の除去や、進入路をどのように確保するのかなどを含め、一連の検証・演練を行ったということです。
かつて、日米共同で実施した大がかりの滑走路被害復旧訓練の報道公開に立ち会ったことがあります。そこにあったのは、「迫力と緻(ち)密」の光景でした。まずは、模擬滑走路を爆薬で爆破し、重機で周囲に散らばった破片を撤去。その後、今回の105隊のように弾痕の復旧やドローンによる被害調査、不発弾処理などなど。訓練はもちろん、復旧能力の向上がメインであることは変わりありませんが、隊員の器材操作の習熟を図るというねらいもまた、あるのだと思います。
もちろん、軍民共用の空港や飛行場もあります。敵にすれば対象は同じ。滑走路が攻撃されれば、一般人も影響を受ける可能性だってあるわけです。一方で、自然災害が頻発する日本ですから、地震などで滑走路が使えなくなるようなケースも想定内です。
いくら性能がすばらしい戦闘機を持っていても、また、前線にさまざまな燃料や弾薬などを運ぶ輸送機を飛ばそうとしても、すべては滑走路が機能していればこその話です。日米共同、空自単独、さらには陸自単独など、訓練の幅は広がりを見せているところです。そこには、さまざまな想定をしないことには、今、日本が置かれている厳しい安全保障環境には立ち向かえないという危機感があるからにほかなりません。
今回の南恵庭駐の報告を受け、改めてこうした意識を強く持たねば、という思いを強くしました。
他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。