「今、戦える師団」へ 実効性を高めた検閲訓練|第7師団

第72戦車連隊、第7後方支援連隊、第7施設大隊、第7化学防護隊

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索敵しながら前進する90式戦車

防衛日報 2025年11日18付


 陸自7師団(師団長・武田陸将)は10月2日から7日の間、矢臼別演習場で「令和7年度第2次師団訓練検閲」を実施し、72戦車連隊、7後方支援連隊、7施設大隊、7化学防護隊の練度を検した。


 訓練検閲に先立ち7師団長は統裁官として、全部隊に対し「現代戦の様相を踏まえたレジリエンス・サステイメントに留意せよ」を要望。


 併せて「訓練検閲として防御準備、攻撃準備等をするが、同じようなことが現代戦でも起こりうる。任務完遂を目指して頑張ってもらいたい」と訓示を述べた。


72戦車連隊(連隊長・烏賊1陸佐)


【統裁官要望】「諸職種の戦闘力を組織化し、総合戦闘力を最大限発揮せよ」


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受閲準備完了報告(第72戦車連隊)


 師団の「先遣戦車戦闘団」として、配属・協同部隊と連携し、警戒・偽装・分散・隠蔽(いんぺい)などにより我のレジリエンスを確保しつつ、偵察用ドローンを活用した情報収集、各種システムを駆使した彼我の状況把握に基づく精密な火力発揮によって敵を減殺しつつ、戦車を主体とした果敢な攻撃により、所定の時期までに師団の示す目標線に進出し、師団主力のじ後の作戦に寄与した。


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指揮所活動

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索敵しながら前進する90式戦車


7方支援連隊(連隊長・小島1陸佐)


 【統裁官要望】「作戦の終始を通じた強靭(きょうじん)かつ継続的な後方支援により、師団の継戦能力を確保せよ」


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受閲準備完了報告(第7後方支援連隊)


 空地からの敵の脅威の中、レジリエンスを確保した師団段列を開設するとともに弾薬などの輸送・補給品の保管・交付、装備品の整備・回収などの後方支援活動、負傷隊員の治療・後送などの衛生活動を継続的に実施し、師団の作戦全般に寄与した。


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補給品の受領

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負傷した隊員の治療

7施設大隊(大隊長・關2陸佐)


 【統裁官要望】「戦況、作戦上のニーズに応じた施設支援により、師団の作戦に最大限寄与せよ」


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受閲準備完了報告(第7施設大隊)


 師団の広大な作戦地域で、保有する施設力を効率的に発揮。障害の処理、機動路の整備、MSR(補給幹線)の損壊に伴う機動支援橋の架設などに加えて、抗堪性ある指揮所施設を構築し、師団の攻撃進展に寄与した。


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機動路確保のための道路整備

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抗堪性ある指揮所施設の構築

7化学防護隊(隊長・大口2陸佐)


 【統裁官要望】「戦況に応ずる化学活動により、師団の作戦に寄与せよ」


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受閲準備完了報告(第7化学防護隊)


 師団の第一線部隊、師団段列に対する敵特殊武器攻撃に際し、作戦地域のMOPP\(防護態勢)統制、汚染地域の偵察、戦況推移に基づく優先順位の設定とそれに応じた地域・車両などの除染活動を整斉・円滑に実施して敵の攻撃を無効化し、師団の安全を確保した。


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汚染地域の偵察

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汚染された90式戦車の除染


 7師団は「今回の訓練検閲を通じ、数々の貴重な成果と教訓を得た。いかなる任務をも完遂し得る陸上自衛隊唯一の機甲師団として、武田師団長を核心とし、『今、戦える師団への進化』『新生機甲師団の創造』を目指し、引き続き実際的な訓練を続けていく」としている。



<編集部より>


旧社で仙台赴任中、東日本大震災(平成23年)で被災し、以後約2年間、取材陣の指揮をとっていました。この間、約10万人の隊員が投入され、自衛隊史上最大のオペレーションが展開されたことは今さらのことですが、当時、定期的に取材をしていた東北方面総監部である時、「レジリエンス」という言葉を聞いたことがありました。

自衛隊におけるレジリエンスは、主に隊員個人の「精神的な回復力や強靭(きょうじん)さ」を指すとされます。言い換えれば、困難や危機的状況に直面した時、それを跳ね返し、活力を回復することなど。今では、ビジネスの世界でも幅広く使われるようになりました。

隊員が過酷な任務やストレスの多い状況に直面した際、これに耐えて回復し、適応していくための心理的な能力を意味します。極めて難しいことなのです。

震災当時、全国から派遣された多くの若手隊員の中には、当初、精神を病むケースが散見されました。総監部も困惑していたことを思い出します。連日の遺体の収容作業のストレス、自宅が被災した住民らとの調整の際、道路一つ挟んだ仲のいい向かいの家と別々の場所への移転を拒否されるストレスなどなど。相手は被災者。家や家族を失っています。担当した隊員たちは、丁寧に、冷静に、被災者に寄り添うようにと上官にも言われていました。そんな経験などしたことがなく、自分で抱えてしまったということでした。

隊員といえども、人間性はそれぞれ。なのですが、隊員にはそれ相応の「回復力」と「強靭さ」はどうしても求められます。そうこうするうちに、飛びつきました。陸自7師団が実施した「令和7年度第2次師団訓練検閲」の報告で、レジリエンスが登場したのです。個人的に懐かしさもあり、「そうだよな」「それは欠かせないよな」…などと思いながら、防衛日報の本日(11月18日付)2面トップ記事として掲載しました。

統裁官で師団長の武田陸将の要望は「現代戦の様相を踏まえたレジリエンス・サステイメントに留意せよ」でした。ちなみに、サステイメントは組織としての「任務遂行能力の維持・持続性(継戦能力)」。今回は72戦車連隊など隷下4個部隊に対して、総合戦闘力が発揮できるか、継戦能力は確保されているか…などを現代に照らし合わせて検閲していました。

師団訓練検閲では、師団が隷下部隊の戦闘組織としての力量を測るため、実戦的なシナリオの中で部隊の能力が試されます。今回はこれまでの訓練検閲の内容だけでなく、現代戦を意識したものにこだわりました。何よりも、そこにはレジリエンスの重要性が欠かせないことを統裁官は改めて強く示し、要望したのではないかと思います。

要は、「強く、折れない、しなやかな心」であるレジリエンスが可能となることで、長期にわたる任務、戦闘作戦を継続的に遂行できるサステイメントにつながります。ロシアによるウクライナ侵攻の例を見るまでもなく、現代戦は長期戦になりかねず、継戦能力が問われているのです。

訓練検閲に先立って統裁官がこれらの言葉を使ったことは、単なる検閲ではなく、隊員一人ひとりが訓練を通して心理面でのさらなる向上や長期戦など、意識の変革を求めているからに他ならないのだと思います。