小泉防衛相、就任3週で初外遊 ASEAN会議で連携強化を呼びかけ|防衛省

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日米豪比4か国会談 左から/ヘグセス米国防長官、マールズ豪副首相兼国防相、小泉防衛大臣、テオドロ比国防相

防衛日報 2025年11月12日付 


 小泉進次郎防衛大臣は11月1日、マレーシア・クアラルンプールで開かれた「第12回拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)へ出席した。防衛相として初の外遊。会期中には、相次いで各国国防相と個別会談を行い、地域の安定と連携強化に向け、具体的な協議を進めた。

 就任から3週間余。直後には米国との防衛相会談で防衛力強化に向け、強い意志を表明したほか、今回の各国との個別会談では、中国に対して懸念事項を毅き然と指摘するなど、スタートから存在感を示している。


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国防相会議のほか、各国とも積極的に個別会談を行った


 「インド太平洋地域の安定には、ASEANの中心性と一体性が不可欠」

 

 防衛省によると、小泉氏は今回のASEAN会議で、東シナ海や南シナ海の情勢、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアと中国の軍事協力など、地域の安全保障環境がかつてないほど複雑化している現状を踏まえ、信頼と法の支配に基づく国際秩序の再構築が不可欠と強調。日ASEAN防衛協力を「防衛関係の強化」から「相互連結性の重層的な網」づくりへと発展させる考えを示した。

 会期中は相次いで各国国防相と個別会談を行い、地域の安定と連携強化に向け、具体的な協議を進めた。防衛省発表資料から、主な国との会談内容をまとめた。


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日米防衛相会談で握手(防衛省Xから)


 【米=ヘグセス国防長官】

 米国の国家防衛戦略(NDS)の進捗やしんちょく 、韓国への原子力潜水艦建造許可などをめぐり地域抑止の在り方を議論。北東アジアの安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟の抑止力と対処力をスピード感をもって強化することで一致。

 また、日米韓3カ国の防衛協力を「地域の平和と安定の柱」と位置づけ、同志国連携の深化に向けた具体的取り組みを進める方針を確認した。

 

【中国=董軍国防部長】

 東シナ海や太平洋で活発化する中国軍の動きに「深刻な懸念」を表明し、中国海警船から発艦したヘリによる領空侵犯のような行為の即時停止を求めた。南シナ海情勢や台湾海峡の平和と安定の重要性にも言及し、北朝鮮の弾道ミサイル発射や露朝軍事協力の進展にも懸念を示した。

 10月31日の日中首脳会談で確認された「戦略的互恵関係」「建設的かつ安定的関係」を踏まえ、「懸案から目を背けず率直な意思疎通を重ねることが重要」と指摘。両氏は、防衛当局間ホットラインの適切な運用や部隊間交流の継続に向け、具体的調整を進めることで一致した。



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左から/アン・ギュベク韓国防部長官、ヘグセス米国防長官、小泉氏


 【韓国=安圭伯国アン・ギュベク国防部長官】

 北朝鮮による核・ミサイル開発の継続や、ロシアとの軍事協力の進展に対し、「地域の安定を脅かす深刻な動き」との認識を共有し、日韓、さらに日米韓3カ国での緊密な連携を維持する方針を確認した。

 9月の防衛相会談で合意した協力事項を踏まえ、両国防衛当局の定例協議や人的交流を一層活性化させることで一致した。

 

【日米豪比=ヘグセス国防長官、マールズ豪副首相兼国防相、テオドロ比国防相】

 自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向け、連携を確認した。

 4氏は、中国による東・南シナ海での不安定化行動に深刻な懸念を示し、力や威圧による一方的な現状変更を断固として認めない姿勢を共有。国際法や航行の自由の尊重、2016年の南シナ海仲裁判断(フィリピンが勝訴)の遵守を再確認した。

 

 情報共有や共同訓練を進めるほか、新たに「日米豪比防衛協力委員会」設立を支持し、来年のフィリピン軍主催演習「バリカタン2026」に4カ国が参加することで一致。これらの協議を踏まえ、4カ国は同日「日米豪比防衛相共同発表」を表明した。


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ニュージーランドのコリンズ国防大臣と小泉氏(防衛省公式Xから)

豪・NZ国防相と「もがみ」型護衛艦の能力向上型が話題に


 海上自衛隊の「もがみ」型護衛艦の能力向上型が豪州の次期汎用フリゲートの優先プラットフォームに選定されたことに関連し、豪州など関係国との会談でも話題に上がった。

 

    11月2日朝、マールズ豪国防大臣との朝食会談では、「日豪防衛協力を新たな段階に導く成果」と位置づけ、契約締結に向けた協議を加速させる方針で一致した。

 また、地域の抑止力向上に向け、あらゆる分野での連携拡大を確認し、今後、二国間と日米豪の枠組みで協議を重ね、防衛装備・技術協力を一層深める考えを共有した。

 一方、同日には、ニュージーランドのジュディス・コリンズ国防大臣と会談。コリンズ氏が同国海軍のフリゲート更新の意向を示したことを受け、今後も緊密な意思疎通を図ることで一致した。

 8月に海自護衛艦「いせ」と「すずなみ」がニュージーランド艦「カンタベリ」とともにウェリントン港へ入港したことに触れ、近年の共同訓練の活発化を歓迎。情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)など法的枠組みの整備も進展していると確認した。


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