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<編集部より>
防衛日報は本日(12月23日付1面)から2回の連載を組みました。タイトルは「人材確保の最前線から―2つの地本の報告」。独自の取り組みなどで成果を挙げている千葉、熊本両地本の情報を基に一つの大きな具体例として紹介し、全国の地本にも参考となればという思いからです。2つの地本はともに令和6年度の「第1級賞状」を受賞していました。
自衛官をめぐる仕組みは「入り口(募集)」と「出口(援護)」。その任務こそ、地本が展開する広報活動です。2つは密接に関係するものです。現状はどうでしょうか。必要な数(定員)に対する自衛官の現員は89。1%(令和7年3月31日現在)。深刻な状況なのです。
これから社会で働こうとする人は、その職場の「今」はもちろんのこと、「将来」に向けての成長性も考えるのは当然です。自衛隊に置き換えてみれば、入ったはいいものの、最後まで勤めても50代半ばで多くの自衛官は退職します。その先への不安は募ります。一般社会では定年が65歳となりつつあり、70歳まで現役で働ける企業も出てきました。要因はさまざまですが、民間との人材確保に向けた争いは喫緊の課題となっているのです。
本日の千葉地本の特徴は、若年層にとどまらず保護者や将来の志願者も視野に入れた多層的な広報が目に止まりました。駐屯地などの見学ツアーに、ある時は体験型のイベントに…と親にも参加を求めることで、親子双方が実情を把握し、相談し合うことで理解を広げてもらいました。
また、退職自衛官の希望(海沿いでサーフィンができるところ)に寄り添い、周辺自治体への再就職を実現させるなど、一人ひとりに徹底的に寄り添いながら、やりがいを丁寧に伝え、退職後のサポートも前例にとらわれず、「変える勇気」を持ち続けたことが大きな成果と信頼につながったということです。柔軟な考え方にほかならないのです。
自衛隊をめぐるイメージといえば、以前なら「きつい」「転勤が多い」「休みが少ない」などがあったかと思いますが、運用・統制面では当たり前であるはずの「上意下達」に係る環境や、近年ではハラスメントなども加味され、募集世代となる現代っ子やその親世代から敬遠されてしまう―。そんな空気感も感じます。中には、ウクライナ戦争などをきっかけに「戦争に行きたくない」「行かせたくない」などと思う人もいることでしょう。
遅ればせながら、今、自衛隊をめぐる国としての考えが大きく変わろうとしているのです。昨年12月20日、石破茂首相(当時)が座長となって構成された自衛官の処遇と生涯設計を考える関係閣僚会議がまとめた基本方針では、「『厳しい環境に耐え続けることが当たり前』とされる組織文化では、人材確保はおぼつかない」と明確に指摘し、処遇や生活環境、やりがい、働きやすさを改善するよう求めました。
自衛隊の任務の特殊性はあります。規律や意識の高さなど絶対に必要なことも多くあります。そこは曲げてはいけません。すぐに改善できるわけでもありません。しかし、環境の整備はやりました。あとは少しずつ、できるところからです。若者たちに迎合するのではなく、コミュニケーションを取りながら理解することこそ現場の役割だと思います。