みんなのブルーインパルス 令和7年〈Vol.3〉「万博から怒涛の連続展示飛行を完遂」

~日本三景の日記念事業、合併20周年記念東北町湖水まつり花火大会、令和7年度第53回ひみまつり~

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氷見漁港内の忍者ハットリくん巨大壁画の上空を飛ぶブルーインパルス。忍者ハットリくんの原作者・藤子不二雄Ⓐ氏は氷見市の出身だ《写真・谷口浩樹》


 ブルーインパルスが、大阪・関西万博での歴史的な二日間の展示飛行からの、4週連続5回の展示飛行を完遂しました。

 ブルーインパルスには、安全対策として、その詳細は明らかにされていないものの、年間の遠征に当てる展開日数や連続展示回数の上限を設定しているとされています。

 今年は例年より早い梅雨明けが記録され、そうした気象条件が予想されたことからも、7月中旬に万博での展示飛行が実現し、この連続展示飛行がスケジュールされました。

 万博でブルーインパルスをはじめて見て興味を持たれ、その後の展示飛行に出かけたファンの方もおられるようです。4週連続はブルーインパルスにとっても忙しいスケジュールですが、追いかけるファンにとっても大変なスケジュールです。関係者の皆様も、ファンの皆様も大変お疲れ様でした。


 ブルーインパルスの展示飛行には、万博飛行の大阪府内で見せた航過飛行、万博会場上空で見せた編隊連携機動飛行、航空祭でのみ見せる曲技飛行(アクロバット飛行)の三種類があります。松島町日本三景の日、東北町湖水まつり、氷見市ひみまつりは編隊連携機動飛行でした。編隊連携機動飛行は、宙返りや背面飛行といった曲技飛行こそ行わないものの、6機で編隊飛行や旋回、隊形変換などを伴う機動飛行を見せるものです。

 ここでは皆様からの投稿写真や動画を中心に東北町、松島町、氷見市での展示飛行を振り返ります。


日本三景の日記念事業(宮城県松島町)令和7年7月21日


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五大堂の上をツリー・ダーティー・ローパスで飛行するブルーインパルス。前日予行で撮影《写真・5兵衛》


 日本三景の日は、江戸時代の儒学者林春斎が著書「日本国事跡考」で松島(宮城県)、天橋立(京都府)、宮島(広島県)を日本三景と紹介したことに由来し、日本三景観光連絡協議会によって、林春斎の誕生日である7月21日に制定されました。

 ブルーインパルスとしては3年連続の日本三景の日の展示飛行となり、松島海岸は2年ぶり、昨年の天橋立に続き、今年は海の日の祝日に松島基地からの離発着で、松島海岸で飛行しました。

 松島海岸は松島基地から約14kmと近く、日頃洋上訓練を行う金華山沖訓練空域までの約35kmよりも近い距離での飛行となります。このため増槽を付けないクリーン形態での展示飛行となりました。


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福浦橋とフェニックス・ローパス《写真・5兵衛》


 予行の日には五大堂とブルーインパルスを撮影された兵衛さんは「日本三景の日本番当日は会場から徒歩10分程度のところにある、福浦橋付近でブルーインパルスを待機した。福浦橋とは福浦島につながる有料の橋で1967年に開通した。朱塗りの色が鮮やかな橋である。とても暑い日だったがブルーインパルスを見るために、福浦橋から会場までの遊歩道も多くの人でにぎわった」とコメントしています。

 5兵衛さんは昨年の天橋立でも素晴らしい写真をいくつもご投稿いただきました。ここでも多くの写真をご投稿いただきましたが紙面の関係ですべてを紹介しきれず申し訳ありません。Xでも作品を紹介されていますので是非とも参考にされてみてください(@gohee212131)。


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スワン360°レフト・ターン。前日予行で撮影《写真・小野寺ひとみ》

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レベル・サンライズ《写真・小野寺ひとみ》


 前日予行から撮影された小野寺ひとみさんからは「希望に満ちた大歓声の中のサンライズでした。松島の空いっぱいに広がるスモークに感動しました」とのコメントをいただきました。


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ナレーターとして来場した4番機練成の下田一輝1空尉と塩竈みなと祭の御座船鳳凰丸〈写真・伊藤宜由〉


 この日は、厳島神社管弦祭(広島県宮島町)、貴船神社貴船まつり(神奈川県真鶴町)と共に日本三大船祭に数えられる塩竈みなと祭も開催されており、展示飛行の時間には「陸奥国一宮」志波彦神社・鹽竈神社の2基の神輿をのせた御座船「龍鳳丸」と「鳳凰丸」が約100隻もの供奉船を従え、日本三景松島湾内を巡幸し、松島海岸の観光船船着場に入港しました。


日本三景の日、展示課目


1)フェニックス・ローパス、2)リーダーズ・ベネフィット・ローパス、3)ツリー・ダーティー・ローパス、4)ナイフ・エッジ、5)チェンジ・オーバー・ターン、6)デルタ・ローパス、7)サクラ、8)ビッグ・ハート、9)720°ターン、10)レベル・サンライズ


合併20周年記念東北町湖水まつり花火大会(青森県東北町)令和7年7月26日


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ワイド・ローパス〈写真・伊藤宜由〉


 令和7年7月26日(土)、青森県東北町の湖水まつり花火大会で、海上自衛隊八戸航空基地より飛来したブルーインパルスが編隊連携機動飛行を実施しました。会場となった小川原湖畔は三沢基地から約8kmと近く、高い建造物や山がないほか、当日は湖面の海上交通も制限されて、低めの高度でダイナミックな展示飛行が披露されました。八戸航空基地からも約25kmと近く、日本三景の日と同様の増槽なしのクリーン形態で飛行しました。

 この時期、三沢基地や松島基地では、米軍主催訓練レゾリュート・フォース・パシフィックで米軍機の展開訓練などが実施され、航空自衛隊も参加しました。八戸航空基地へ展開したことは、この演習との兼ね合いもあるかもしれませんが、会場での取材では「オルタネート(離発着の飛行場に降りられなかった場合の代替飛行場)の関係」とだけ回答が得られました。

 なぜ海上自衛隊の基地にと思わないでもありませんが、日常の松島基地飛行場訓練でも八戸がオルタネートに指定されることもあり、そのときどきの状況で柔軟に最適な離発着の飛行場や展示形態が決められるようです。


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オリジナルの右旋回で実施されたスワン360°ターン〈写真・伊藤宜由


 仮に松島基地からのリモート展示とした場合、東北町まで約260kmもあり、増槽を付けたD2形態の飛行が必須となります。東北町より以北以遠の大湊分屯基地の展示飛行を松島リモートで行った際には、松島基地から離陸し、大湊で編隊連携機動飛行を実施したあと、給油のために三沢基地を経由して松島基地に帰投したことがありました。この時に三沢基地に展開しなかった理由は、米軍との合同訓練が実施されている兼ね合いのようでした。

 今回、八戸航空基地に展開できたことで、万博から帰って以降、日本三景の日と東北町湖水まつりを通して、次のひみまつりの準備までクリーン形態で通すことができ、多忙な展示スケジュールの最中ながら、日常の曲技飛行訓練の進捗にも大きく貢献したと考えられます。他方、震災以前には週3回程度と限られていた飛行場訓練の回数も、震災後は東松島市と地域のご理解もあり、週5回の飛行場訓練も珍しくなくなりました。こうした地元のご理解ご協力もあって、このような4週5回連続の展示飛行が実現したといえるのではないでしょう。


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ポイント・スター・ダーティー・ローパス〈写真・伊藤宜由〉


 湖水まつりでの唯一脚出しでの課目となったポイント・スター・ダーティー・ローパスは、速度もゆっくりでスモークが太くなり、曇天で着陸灯も際立ちました。この課目だけをダーティー形態にした理由は明らかではありませんが、八戸への展開に先立つ松島基地飛行場訓練でのリハーサルは、米軍主催訓練レゾリュート・フォース・パシフィックが松島基地で始まった22日(火)に実施されており、米軍機の国籍マークにも描かれる星が輝く隊形が歓迎の印として喜ばれたかもしれません。


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東北町の現地メンバー。左から島本章太郎3空曹(整備員)、江尻卓2空佐(飛行隊長)、下田一輝1空尉(4番機練成)、渡邉嘉之空曹長(准曹士先任)。前日予行で撮影〈写真・伊藤宜由〉


東北町湖水まつり花火大会、展示課目


1)ワイド・ローパス、2)フェニックス・ローパス、3)グランド・クロス・ローパス、4)スワン360°ターン、5)ポイント・スター・ダーティー・ローパス、6)リーダーズ・ベネフィット・ローパス、7)ピラミッド・ローパス、8)ナイフ・エッジ、9)チェンジ・オーバー・ターン、10)エシュロン・ローパス、11)サクラ、12)ビッグ・ハート、13)720°ターン、14)レベル・サンライズ


令和7年度第53回ひみまつり(富山県氷見市)令和7年8月2日


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射水市の海王丸パーク方向から“ライチョウ”ローパスで進入し展示飛行をスタートしたブルーインパルス〈写真・塚田圭一〉


 4週連続展示飛行の最後は、令和7年8月2日(土)、富山県氷見市の「ひみまつり」でした。富山県での展示飛行は令和3年(2021年)4月22日の「となみチューリップフェア」以来4年ぶりで、4年前と同様に石川県の小松基地から飛来し、増槽付きのD2形態でこれを実施しました。

 能登半島の基部に位置する氷見市もまた令和6年能登半島地震で液状化現象などの被害を受けており、令和6年(2024年)3月18日に能登半島の石川県3市3町で飛んだ能登半島被災者激励飛行に続く復興激励の展示飛行ともなりました。


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スワン隊形は富山県の県鳥に制定されているライチョウに名前を代えて実施された。比美乃江公園「幸福を呼ぶ鐘」で撮影《写真・5兵衛》


 日本三景の日にも投稿をいただいた5兵衛さんは「この日は最高気温35度にも関わらず、広大な比美乃江公園の海岸線がたくさんの人で埋め尽くされた。ブルーが上空を飛ぶと、皆が暑さを忘れて歓声をあげていた」と当日の様子をコメントしています。


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比美乃江公園から見上げたフェニックス・ダーティー・ローパス《写真・庄山遼太》


 比美乃江公園から撮影した庄山遼太さんは「富山の被災地復興を応援する展示飛行で、見ているすべての人に勇気や希望を与えてくれる、素晴らしいフライトでした。ありがとう、ブルーインパルス!」とコメントしています。


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ひみまつりの最後を飾ったレベル・サンライズ〈写真・塚田圭一〉


第53回ひみまつり、展示課目


1)ライチョウ・ローパス、2)ライチョウ360°ターン、3)デルタ・ローパス、4)リーダース・ベネフィット・ローパス、5)ナイフ・エッジ、6)チェンジ・オーバー・ターン、7)フェニックス・ダーティー・ローパス、8)ダブル・ライン・ローパス、9)720°ターン、10)レベル・サンライズ


小松基地からの帰りに石巻川開き祭りで飛行


ひみまつりからの帰り、石巻市上空を経由して松島基地にアプローチするブルーインパルス〈動画・イーグルボム〉


 ひみまつり翌日の8月3日(日)、小松基地から帰投したブルーインパルスは、宮城県石巻市で開催されていた石巻川開き祭りの上空を経由して松島基地にアプローチしました。

 この日の松島基地は東向きの滑走路07で運用されており、通常の着陸であれば西の鳴瀬町方向からの進入となり、石巻市上空は通りません。それを、滑走路25へのアプローチと同じコースで東の石巻市にスモーク・オンで入り、石巻羽黒山鳥屋神社のある羽黒山付近で編隊解散し、滑走路25であれば滑走路にまっすぐ降りてくるところを、アプローチしてきた方向に引き返し、西側に洋上から回り込んで滑走路07に着陸しました。

 この日の帰投は小松基地から(通常は4機と3機に分かれることが多いところを)6機と予備機含む7機が一斉に離陸しました。これはあらかじめ7機全機で石巻上空を飛行することを計画していたためと考えられ、遠回りしてまで着陸したことも含め、地元の石巻川開き祭りのことを忘れていないということを示す、ブルーインパルスの強い意志が感じられるアプローチ方法でした。

 松島基地のブルーインパルス格納庫の向かい側、滑走路07終端辺りでブルーインパルスを出迎えたイーグルボムさんがその様子を撮影してくれました。


日本三景の日、東北町湖水まつり、ひみまつり 展示飛行パイロット


#1) 江尻卓2空佐(飛行隊長)、御厨成祥3空佐(次期飛行班長)/湖水まつりは川島良介3空佐(飛行班長)、御厨3空佐

#2) 松永大誠1空尉

#3) 松浦翔矢1空尉

#4) 佐藤裕介1空尉

#5) 藤井正和3空佐、浦祐眞3空佐

#6) 浅香光司1空尉

地上統制官 川島良介3空佐(飛行班長)/湖水まつりは江尻卓2空佐(飛行隊長)

ナレーター 下田一輝1空尉


令和7年度第53回ひみまつりブルーインパルス全課目収録・課目名テロップ・前後ナレーション入り[4K]〈動画提供・NAOYUKI-N STUDIO〉


 さて、8月最後の週末は、いよいよブルーインパルスの本拠地での東松島夏まつりと松島基地航空祭が開催されます。松島基地航空祭では今年初の曲技飛行が2回も披露されます。3番機・松浦翔矢1空尉と6番機・浅香光司1空尉は満を持しての曲技飛行展示デビュー(アクロ・デビュー)です。

 ブルーインパルスの展示シーズンがいよいよ本格スタートします。


読者投稿受賞作品《防衛日報社賞》

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比美乃江公園から見上げたフェニックス・ダーティー・ローパス


 応募作品で防衛日報社賞に輝きましのは庄山遼太さんの作品です。庄山遼太さんには防衛日報社賞の記念品を贈らせていただきます。


《投稿写真》谷口浩樹、5兵衛、小野寺ひとみ、庄山遼太

〈動画提供〉イーグルボム、NAOYUKI-N STUDIO

(文/写真)ブルーインパルスファンネット みんなのブルーインパルス編集部

今村義幸/塚田圭一/伊藤宜由/Yuka Miyamoto