陸自12旅団(旅団長・栁陸将補)は9月1日から5日の間、関山演習場で「令和7年度旅団統制総合戦闘射撃訓練」を実施した。
訓練は普通科中隊固有の編成・装備に連隊固有の全ての機能を増強し、各種機能を連携させた実戦的かつ総合的な戦闘射撃を実施し、戦闘力の組織化を演練・評価するもの。普通科中隊が戦闘準備から目標奪取までの一連の状況下で、各級指揮官の射撃指揮、諸職種部隊間の火力調整、機動と射撃の連携などを演練し、諸職種部隊の統合された火力発揮能力を向上することを狙いとして実施された。
各連隊は実射部隊として、小銃小隊(89R、MG、LAM)、狙撃班(対人狙撃班)81ミリ迫撃砲小隊(81M)、重迫小隊(120M)が参加した。
小銃小隊は分隊単位での制圧射撃を行い、前進部隊への支援を実施した。狙撃班は、高価値目標の無力化のための射撃を実施し、戦場の混乱を狙った。81ミリ迫撃砲、重迫撃砲両小隊は間接火力による目標制圧を通じて、連携の実効性を確認。各部隊はそれぞれの特性を生かした火力支援や制圧射撃を実施し、近接戦闘における連携要領を確認した。
非実射部隊としては、中隊本部(普通科中隊、救護員)、障害処理隊(普通科中隊)、中多分隊(対戦車小隊)、斥候組(情報小隊)が参加した。
中隊本部は全体の統制を担い、状況に応じた指揮命令の即応性を確認。障害処理隊は前進経路における障害物の処理を模擬し、機動展開の円滑化に貢献した。中多分隊は実射部隊との連携を通じて弾薬運搬や射撃支援を実施し、斥候組はドローンを活用し敵情偵察・目標指示などにより、部隊全体の戦術行動や、情報収集、戦闘支援行動の実戦に重点を置いた訓練を行った。
また、2普連は中距離多目的誘導弾(中多)を、13普連は01式軽対戦射誘導弾(01ATM)を、30普連は個人携帯対戦車弾(LAM)を運用し、敵の装甲車両などに対する射撃の練度向上を図った。特に2普連の中多部隊は、中多の長距離と高精度を生かし、迅速な射撃判断を行い、確実な命中を図った。
102旅団は「訓練を通じて、各連隊は実戦を想定した環境下での任務遂行能力を練成するとともに、戦闘行動下における指揮統制能力、火力、運動、通信との連携、火力発揮の実効性を総合的に確認する機会となった。今後も練度向上と連携強化に努めていく」としている。
<編集部より>
自衛隊の訓練活動の中で、「統制」は訓練の管理や指揮を、「総合」は車両や兵站(へいたん)、戦術など複数の要素を組み合わせた訓練とされています。
その名の通り、これらを兼ね合わせた陸上自衛隊12旅団の「旅団統制総合戦闘射撃訓練」がこのほど、関山演習場で実施されました。報告は防衛日報の本日(10月15日付)2面のトップ記事として紹介しました。
訓練は普通科中隊(旅団広報室によれば、今回は3個)の機能を増強した上で実戦的、総合的な戦闘攻撃を実施するのが主眼ですが、ここに多くの諸職種部隊がそれぞれの特性を生かしながら加わることで、指揮統制や連携、火力を発揮するための戦闘力の組織化を目指す。これこそが最大の狙いということのようです。
たとえば、小銃小隊は制圧射撃で前進部隊を支援すれば、81ミリ迫撃砲小隊や重迫撃砲小隊は火力による目標制圧を通じて連携に実効性を確認するなど、戦場の混乱を図るのです。
さらに、非実射部隊も「参戦」し、障害物の除去や弾薬の支援などを行います。そこにあるのは、「連携」に他なりません。いざという時の戦闘でこそ、こうした連携が必要不可欠となるわけですから、訓練の意義は大きいものとなります。
しかし、多くの部隊がこのように一度の訓練に参集するのはなかなか大変です。それぞれ、個別の訓練があるわけです。
今回の訓練について、広報室に尋ねてみました。原因にはコロナ禍などにありました。一度に多くの隊員が集合し、行動するため、ここ4~5年、部隊がまとまっての総合訓練は控えていたようです。
では、「なぜ、今回?…」。すると、「11月中旬に旅団競技会があり、ここに向けたもの」という答えで、その間は普通科中隊の中でバラバラに行っていたようです。
12旅団としては、ようやくできた今回の総合訓練です。当然のように実戦を想定したものであり、そこには前進する部隊を支えるためには後方部隊との連携はもとより、その結果としてたとえば火力がどれだけ発揮でき、それが組織としての戦闘力にどれほど貢献できるのか―が確認できるメリットがあります。
統制と総合。この2つの要素は総合訓練にはなくてはならないものです。昨今、巷でもよく囁(ささや)かれる「ワンチーム」と言えるでしょうか。
一つの部隊が活躍しても限界はあります。根っこに通じる「連携」を確認することで、組織の力を知り、さらなる練度の向上を目指す―。それこそが、訓練の最大の意義であり、任務遂行能力の練成につながるものといえるのだと思います。
訓練で得た教訓や反省などが、11月の競技会で発揮されることを願ってやみません。