自衛隊体育学校(校長・江頭陸将補)は10月11日、朝霞駐三宅記念体育館で「学校創立64周年記念行事」を行った。
学校職員と学生が使命の自覚を新たにし、支援への感謝を表すとともに、来年2月にイタリアで開幕する「ミラノ・コルティナ冬季五輪」出場をめざす冬季競技の選手9人を激励した。
自衛隊体育学校(校長・江頭陸将補)は10月11日、朝霞駐三宅記念体育館で「学校創立64周年記念行事」を行った。
学校職員と学生が使命の自覚を新たにし、支援への感謝を表すとともに、来年2月にイタリアで開幕する「ミラノ・コルティナ冬季五輪」出場をめざす冬季競技の選手9人を激励した。
記念行事には、岸田光広衆議院議員をはじめ、国会・自治体関係者や後援団体代表ら125人が参列。学校関係者61人とあわせ186人が出席した。
江頭学校長はあいさつで「64年にわたり、輝かしい歴史と伝統を築いてこられたのは、関係各位の支援と協力のおかげ」と謝意を述べ、「自衛隊における優秀な体育・格闘指導者の育成、国際級選手やオリンピアンの育成に一層尽力する」と決意を示した。
また、岸田衆議院議員は祝辞で、体校の長年にわたる活動を称たたえた。
行事では、功労者への感謝状贈呈や祝電披露に続き、体校後援会の川合良平会長が乾杯の音頭を取った。
その後、冬季競技を専門とする「冬季特別体育教育室」の9人の選手が紹介され、
バイアスロン班の立崎幹人1陸尉と佐々木美紗2陸曹、クロスカントリー班の山下陽暉2陸曹らが一人ずつ五輪出場への決意を述べた。「自分の強みである強気の射撃と攻めの走りを発揮したい(佐々木2曹)」など熱意あふれる言葉に、会場からは盛大な拍手と声援が送られた。
ミラノ・コルティナ五輪の出場枠獲得に向け、体校では11月から海外遠征を計画している。バイアスロン班はワールドカップやIBUカップ(国際バイアスロン連合主催)第1~第5戦に、クロスカントリー班はFIS(国際スキー連盟)レースやワールドカップへの出場を予定し、それぞれ上位入賞をめざす。
バイアスロンはスキー距離走とライフル射撃を組み合わせた競技で、クロスカントリーは起伏のある雪上コースを滑走してタイムを競う。
五輪代表の内定は2026年1月19日に発表される見込み。選手たちは海外遠征に向け、真駒内駐(札幌市)の競技場やトレーニングセンターで技術に磨きをかけている。
体校は1961年(昭和36)の創設以来、五輪出場者を延べ181人輩出し、メダル獲得は28個(金11、銀8、銅9)を誇る。江頭学校長は改めて「今後も体育・格闘指導者の育成、国際競技力の向上に努めていく」と述べ、会場では来賓や隊員が選手を囲み、意気軒高にエールを送った。
ミラノを目指す体育学校の9人
自衛隊体育学校からは、ミラノ・コルティナ冬季五輪出場枠獲得を目指し、バイアスロン班8人、クロスカントリー班1人が海外遠征に臨む。欧州各地でワールドカップ、FISレースなどに出場し、上位入賞を目標に出場枠獲得を目指す。
【バイアスロン班】
立崎幹人1陸尉、郷翔一朗2陸曹、山本大晴2陸曹、小島清雅陸士長、西本ひのき陸士長(集合訓練生)、佐々木美紗2陸曹、福田光3陸曹、竹内美琴3陸曹
【クロスカントリー班】
山下陽暉2陸曹
体校によると、バイアスロンは男女最大各2人が個人ポイント上位12位以内で五輪代表となる見通し。クロスカントリーはワールドカップで15位以内1回、または30位以内2回が参加基準とされる。
体育学校のメダリストたち
自衛隊体育学校は1964年(昭和39)の東京大会以来、すべての夏・冬季オリンピックで選手を送り出してきた。延べ181人が出場し、メダル獲得は28個(金11、銀8、銅9)に上る。レスリング、ボクシング、柔道など格闘系競技を中心に、多くのオリンピアンを輩出してきた。
主な金メダリストは、三宅義信(重量挙げ・東京=1964、メキシコ=1968)、乙黒拓斗(レスリング・東京=2021)、山田優(フェンシング団体・東京=同)、濱田尚里しょうり(柔道・東京=同)など。20年東京大会(21年開催)では、体育学校出身者5人がメダルを獲得した。
<編集部より>
子供心に1968年(昭和43)のメキシコ夏季五輪に大きな衝撃を受けました。重量挙げ競技で三宅義信、義行の兄弟がメダルを掲げた表彰台のシーンです。
当時、「世界最強」といわれた兄の義信が実力通り、前回の東京大会(1964年=同39)に続く連覇を達成すれば、弟の義行が銅メダルを獲得。五輪の1個人種目の同じ大会、同じ種目、兄弟でというくくりでいえば、表彰台に立ったのは日本では初めてのことでした。現在もこの一例だけなのです。
当時は「兄弟で? すげーなー!」程度の受け止めです。子供ですから。何よりも「どうだ!」といわんばかりに金メダルを誇らしげに挙げる兄、その魂を受け継いだ弟は少し、照れくさそうににこやかな表情。2人のあふれた笑顔がとても印象的だったのです。
当然のことながら、その三宅兄弟が自衛隊体育学校(体校)の出身で自衛官であることなど知る由もありませんでした。
「オリンピアンを輩出し、メダルを獲得する」。体校の使命は明確です。昭和36年、陸海空自衛隊の共同機関として陸自朝霞駐屯地に創設され、以後、夏冬オリンピックでは合わせて延べ181人を輩出し、28個のメダルを獲得するなど、スポーツ界では一大勢力となっているのです。
このほど、来年2月に開催されるミラノ・コルティナ冬季五輪に向け、出場枠獲得を目指す9人の自衛官アスリートを激励する場がありました。体校創立64周年記念行事の一環です。今後、海外の大会で好成績を収めることが出場枠に直結するため、バイアスロン、クロスカントリーの2種目の選手たちは、記念行事という学校にとっては大きな行事に合わせた場に身を置くことで、意欲を新たにしたことでしょう。
体校には第1教育課(体育班、格闘武道班)、第2教育課(レスリング、ボクシング、柔道など主に夏季向けの各班)、そして今回の9人が所属する冬季特別体育教育室の3つがあり、競技種目班は計13。メダルを獲得できる選手を育成しています。
かつて、ある体校の五輪代表選手の練習を取材したことがあります。総合トレーニング場や屋内プール、ライフル射撃訓練場、研修センターなど自衛隊のスキルを生かした多種多様な施設があるほか、近傍には自衛隊病院もあり、医療体制も充実しているのです。とにかく、練習環境は抜群。そんな印象でした。
もう一つ言えば、「体校=オリンピアン」を育てるだけでは自衛隊の自衛官たる所以(ゆえん)にかかわってきます。
言うまでもなく、自衛隊には精強性が求められます。部隊の体育・格闘指導者を育成することも大きな使命。第1教育隊が存在する理由です。隊員に対する体育指導法を教育し、格闘においては武器等使用制限下での必要な技術や練成要領の研究・普及、上級格闘指導官の育成などを通じ、部隊の精強化に寄与しているのです。
オリンピアンだけが注目されがちですが、かつての各自衛隊による個別的な育成から、共同機関による効果的、効率的な体育指導へと移行して誕生したのが体校です。部隊を育てることはすなわち、日本の守りを強固にすることにつながるわけです。