【特集:空自援護Vol.2】知ってもらうことで広がる、新たな戦力としての退職自衛官|空幕援護・募集課

航空幕僚監部人事教育部募集・援護課長の寺西1空佐に聞く

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防衛日報 2026年2月3日付


退職自衛官の活躍の場を広げるため、航空幕僚監部募集・援護課は今年も危機管理産業展(RISCON TOKYO)に出展した。若年定年制や任期制の制度により、退官後も高い能力を持つ人材が多いことをまず知ってもらうことが目的だ。展示や企業との対話を通じ、退職自衛官の存在を社会に伝える取り組みが進んでいる。今回は、援護の現状と今後について航空幕僚監部人事教育部募集・援護課長の寺西1空佐に話を聞いた。


“知ってもらう”ことが第一歩


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危機管理産業展(RISCON TOKYO)

 寺西1佐は、「危機管理産業展(RISCON TOKYO=RISCON)」に出展した理由として、退職自衛官が中途採用の対象であるという認知がまだ十分に広がっていない点を挙げる。


 社会一般では“定年退職”と同じと受け止められがちだが、自衛隊は50代半ばで退官する若年定年制を導入しており、退官後も長く働ける人材が多い。また任期制隊員に至っては20代~30代と若い年代で退官するケースもあり、そうした人材を積極的に雇用してほしいという思いから出展を始めたという。「実際に雇用すれば即戦力としての能力を発揮でき、隊員・企業の双方にメリットがある。だからこそ、幅広く“退職自衛官”を知ってもらいたい」と語る。


広がる退職自衛官の可能性


 出展を重ねる中で、企業側の関心は確実に高まりつつある。人材獲得競争が激しさを増すなか、退職自衛官の有用性に対する理解が深まり、以前と比べると明らかに『ぜひうちに来てほしい』という声が増えているという。一方で、退職自衛官の数には限りがあり、本人の希望も踏まえながら、いかに企業のニーズに適切に応えられるのかが課題となる。


 こうしたイベントで認知を高め、受け入れ企業が増えていけば、退職自衛官の希望が通りやすくなる。ひいては、企業にとっても自社に合う人材を見つけやすくなるという“双方にメリットのある流れ”が生まれる。


 今回のRISCONの効果が本格的に表れるのはこれからだが、寺西1佐は「多くの企業からの反応を期待している。繋げられるところはしっかり繋いでいきたい」と手応えを語った。


「退職自衛官」を前面に 直接伝える戦略への転換


 また、今回の出展では、「退職自衛官の雇用」という伝えたいメッセージを直接的に訴える展示へと戦略を転換。全面に空自を打ち出した前回までのイメージ戦略の中から、特に「退職自衛官」を強く打ち出した。結果として、足を止める来場者が増え、「そうした制度があることを知らなかった」という声も多く寄せられ、“知ってもらう”という目的が確かな手応えとして現れたという。


 一見すると雇用に“壁”が多いように思われる退職自衛官だが、寺西1佐は「壁は少ないと感じている」としたうえで、「私たちが根気強く説明し、企業側の理解を得られれば、“壁”はすぐになくなっていく」と話した。


見えてきた企業ニーズ「専門性・管理力・危機管理能力」


 例えば今回のRISCONのアンケートでは、「自社の危機管理を担う人材が欲しい」という声が多かった。


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丁寧に説明する隊員


 他にも、「自衛隊で培われた専門知識を生かせる人材」や「マネジメントができる人材」など、多様なニーズが寄せられた。寺西1佐は「企業が求めるニーズを丁寧に聞き出し、それに応じていくことが重要」と強調する。


「援護広報」相互理解を深める取り組み


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雇用企業主を小牧基地見学へ招待


 援護広報としては、雇用企業や雇用を検討している企業を基地に招待し、実際の活動を見てもらう取り組みを年4回実施している。


 さらに、市ヶ谷ツアーも行っている。特にRISCONのように、従来自衛隊に触れる機会のなかった企業にとっては、自衛隊を初めて知るきっかけとなる重要な場となっている。


 逆に、隊員に対しては、企業に関する知識を深めるために説明や見学の機会を設けており、隊員自身が企業を理解することで双方の相互理解が深まるだけでなく、雇用後のミスマッチも減り、双方にとってより良い関係を築くことができる。お互いをよく知ったうえで迎え入れ、迎えられることで、企業にとっても隊員にとっても、充実した毎日が待っている。


地道な積み重ねこそが未来をつくる 寺西1佐の思い


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 今後の取り組みについて寺西1佐は、デジタル社会に応じた認知拡大の方法も必要としつつ、「何よりも、これまで続けてきた企業訪問やイベント出展といった地道な活動が最も大切だ」と語った。

 とにかく“知ってもらう”こと。その積み重ねこそが、退職自衛官と企業を結び付ける力になると強調した。 


 最後に、自衛隊の教育力について触れ、「自衛隊ほど人材育成に投資している組織はないのではないか。人を育て能力を養い、その力を任務に発揮させている。そうした教育を受けた人材を、企業が理解して採用につながれば嬉しい」と述べた。