<北海道>陸自2師団(師団長・井土川陸将)に昨年12月、新たに2人の新隊員が配置された。廣瀬2陸士が同9日から2後方支援連隊(連隊長・野下1陸佐)で「需品」、また、辻本2陸士が同12日から2特科連隊(連隊長・井上1陸佐)で「野戦砲」の新隊員特技課程の教育を開始した。
自分のためだけに教育してくれる
<北海道>陸自2師団(師団長・井土川陸将)に昨年12月、新たに2人の新隊員が配置された。廣瀬2陸士が同9日から2後方支援連隊(連隊長・野下1陸佐)で「需品」、また、辻本2陸士が同12日から2特科連隊(連隊長・井上1陸佐)で「野戦砲」の新隊員特技課程の教育を開始した。
自分のためだけに教育してくれる
新隊員が各部隊1人ではあるものの、昨今の厳しい隊員募集状況の中でも、国防を志して入隊した新隊員は自衛隊の宝。各部隊は、教育隊長以下約20人の要員が万全の態勢で新隊員を温かく迎え、教育に臨んでいる。
通常であれば、数十人の同期とともに、絆を深めながら切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、職種の知識や技能を学ぶ教育だが、今回は、それぞれ同じ職種に同期が存在しない。
しかし、2後支連の廣瀬2士は「前期は同期で助け合い、互いに高めあうことができましたが、今、それはできません。しかし、今は教官の方々が私一人に集中して親身に教えてくれているので、その期待に応えて立派な自衛官になれるよう頑張ります」と溌剌(つらつと)はした笑顔で述べた。
2後支連 着隊 廣瀬2士
2後支連 座学 廣瀬2士
また、2特科連の辻本2士は「課業外に同期と会話ができないのは寂しいが、その分、全てが自分のためだけに教育してくれているので、とても充実した教育を受けています。部隊配置になっても困らないようにしっかり学びます」と力強く話していた。
2特連 訓練開始式 辻本2士
廣瀬2士の教育を担任する区隊長の杉本3陸尉は、「廣瀬2士は、とても勉強熱心で、吸収も早く、今後がとても楽しみな隊員です。教育間は、失敗を恐れず、何事にも積極的に自分らしく挑戦してほしい」と優しいまなざしで語った。
2後支連 無線機の取扱い 左・廣瀬2士
辻本2士の教育を担任する区隊長の片山3陸尉は、「隊員目線で教育を実施して、隊員の悩みなどを解決しながら、自主性、積極性を重視した教育を通じて一人前の自衛官に育成したい」と情熱的に述べ、それぞれ職種の後輩育成に全身全霊を尽くして教育にあたっている。
2特連 重機関銃の取扱い 辻本2士
2師団は「引き続き貴重な2名の新隊員に寄り添った教育を実施し、健全で、あらゆる事態に対応できる隊員の育成に真摯(しんし)に取り組んでいく」としている。
※辻本2士の「辻」ですが、本来は「1点つじ」となります。
<編集部より>
陸上自衛隊2師団から昨年12月、溌剌(はつらつ)とした新隊員2人の着任の報告が届きました。内容を読んでいるうちに「これは、ぜひ紹介せねば…」と、すぐ採用させていただきました。防衛日報の本日(1月21日付)2面のトップ記事です。
同じ職種に同期がいない。候補生時にはなかなかない、こうした環境に2後方支援連隊の廣瀬2陸士と2特科連隊の辻本2陸士が飛び込んでくれました。これからの大きな成長の前には通らなければならないハードル。基本面から応用面へと移ることで、ここからが本番です。自衛隊員としてのド真ん中をくぐり抜けるための新たなスタートでもあります。
「集中して親身に教えてくれる」「自分のためだけに教育してくれている」という2人の言葉があります。これからお世話になる以上、当然の言葉かもしれませんが、人数が多ければ「分散」される上司・先輩の教育・指導がモロに自分だけにしか来ない分、とてもキツいと思います。しかし、組織全体を考えれば新しい息吹、それも新隊員の「威力」は良くも悪くもとても大きいものがあるのです。
というのは、受け入れる側もどことなく緊張するものなのです。コミュニケーションをどう取ろうか、自分の言葉がしっかりと伝わるだろうか、嫌がられないようにしないと…期待もある中で、どことなく不安も入り混じった複雑な気持ちが生まれたりもします。
私事ですが、旧社在籍時代、入社後の同期との研修を終え、地方の支局に一人で赴任した時、寂しく強烈な不安感に陥ったことはありましたが、ここから10数年ほど過ぎ、地方で管理職として新人一人を迎えた時の経験もしました。教える側もまた、一つの勉強であり、確認にもつながるわけで、必ず通る道といはいえ、こちらの方が経験を積んでからであった分、考えることは多かったように思います。
何よりも重要なことは、新しい「風」です。経験不足の新隊員の一挙手一投足を見つめ、まさに「人の振り見て我(わ)が振り直せ」的な要素が、組織としての活性化につながります。もちろん、自衛隊ならではの指揮統制の厳しさは絶対に必要なのですが、自衛隊といえども「時代」を無視できない、そんな時代にきていることも事実です。
昨年暮れに発表された自衛官の待遇改善などの関係閣僚会議による政府方針では、旧態依然とした「組織文化」にクサビが打たれました。若者のライフスタイルを意識した業務の見直しなども提唱されました。
決して若者に媚(こ)びるわけではありません。「命令下達」は自衛隊ならば必要不可欠なことですが、一方で、コミュニケーションを取り、理解しながら組織を運営することにより、明日の自衛隊を担う若者たちとの付き合い方もより、ベターな方向へと進むのだと思います。今、こうした節目のタイミングに差し掛かっているともいえ、今回、教育し、支える上司や先輩たちにとっても、一つ立ち止まって考えて対応することが求められています。
ただし、周りが一生懸命に新しき風土の形成に励もうとしても、若者たちが理解して動かなければ意味がありません。特別ともいえる環境に置かれたことを前向きに捉えて、日本のために奮闘してもらいたいものです。2人の今後に注目しています。
他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。