災害現場での連携を強化 NEXCO東日本と共同訓練|高田駐屯地

第2普通科連隊

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油圧カッターを使用したドアの解放

防衛日報 2025年9月5日付


 高田駐2普連(連隊長・末本1陸佐)は8月21日、小千谷インターで、「令和7年度NEXCO東日本との共同訓練」を実施した。

 

 訓練は、災害発生時における連携の強化を図り、平常時から「顔の見える関係」を構築できるよう行われた。


 訓練項目は、合同調整所の開設、土砂災害により車内に取り残された人員の救出、路面にできた段差の仮復旧を主に実施した。


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負傷した乗員の搬送


 調整所の開設では、お互いの情報の共有や現地(災害地)からの動画・画像受信などを実施し、円滑な指示が出せるよう訓練した。また、乗員救助訓練では、変形によりドアの開閉が困難になった車両をエンジンカッター・油圧カッターなどによりドアを開いて乗員を救助し、アンビ(救急車)での後送までの一連の流れを実施した。


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合同調整所の開設


 段差復旧では、NEXCO東日本と協力し、土のうを用いて段差を復旧し、簡易的に車両通行ができるようにした。

 

  訓練を通じ、連隊長は「各種災害現場における関係機関との連携は、国民の生命や財産を守るわれわれ自衛隊にとっても非常に重要な訓練の一つ。今後とも顔の見える関係を構築し、相互連携を強化して各種災害発生時に迅速かつ的確に対応できるよう将来に備え、継続した共同訓練を引き続き行っていきたい」と述べた。


 2普連は「引き続き即応体制を維持し、各種災害などに迅速に対応できるよう物心両面の準備を継続していく」としている。



<編集部より>

少し古い話で恐縮です。

5年前の令和2年12月16日、新潟県などで降り続いた大雪の影響で関越自動車道の一部区間で車両の立ち往生が発生しました。当時の防衛省の資料によれば、県知事から新発田駐屯地30普通科連隊へ災害派遣要請があり、周辺の駐屯地を含め約430人が出動。ドライバーらへの水や食料、燃料、毛布の配布のほか、輸送支援、安否の確認などを実施しました。

高速道路といえば、ルート、土地の確保のために山あいに造られるケースが多く、地理的に積雪地帯では雪によるさまざまなアクシデントが発生しかねません。それだけではありません。冬季に限らず、主に気象面でも影響を受けやすい山間部を走るため、何らかの事故や自然災害などに巻き込まれ、車の運行ができずに取り残されることも容易に想像できます。事案が大きくなれば、自衛隊の出動は欠かせないところなのです。

5年前、新発田駐とともに派遣された部隊の中には高田駐2普連もありました。ともに新潟県などを隊区とする中で、首都圏とつながる関越道は「守備範囲」。その地域ならではの突発事項への準備もまた、重要な訓練です。

防衛日報の本日(9月5日付)2面では、高田駐がNEXCO東日本と災害時の対応のために実施した共同訓練を取り上げました。合同調整所を設置し、土砂災害を想定して取り残されたドライバーを救助。変形によりドアの開閉が困難な場合も考え、カッターなどで開け、救急対応につなげます。道路に段差が生じれば、土のうを使って復旧し、通行できるようにします。

訓練は、自然災害などが中心だったようですが、災害はさまざま。大事故、大災害につながりやすい高速道路では、想定を超える事案の発生も十分にあり得ます。

何よりも、自衛隊だけで頑張るわけにはいきません。管理者であるNEXCO側との共通認識の上で、お互いの任務や場所のすみ分けなど、有事の際には絶対に必要となる連携は人命に直結しかねません。2普連の報告にもあるように、「顔の見える関係」を普段からどれだけ構築できているのかが、いざというときに生かされるものです。

旧社で社会部在籍時、地方の高速道路をめぐる発生事案を数多く取材しました。たとえば、立ち往生のケース。ドライバーの不安は尋常でなく、子供は泣き続け、トイレの心配も付きまといます。食事面の心配も出てきますが、コンビニも少ない環境となれば、NEXCO側の初動対応ではなかなか解決できません。

車内は極限の状況です。駆け付けた自衛隊の迅速な活動、NEXCOとの無駄のない連携などを見ながら、安堵(ど)するドライバーたちの表情を今も思い出します。気持ちを落ち着かせてくれたのでしょう。

自衛隊の出動は、こうした心理面での貢献も大です。そこにあるのは、普段からの共同訓練を通した隊員一人ひとりの意識の高さがあるからにほかなりません。