日仏で磨く戦術と絆 日仏共同訓練「ブリュネ・タカモリ」|秋田駐屯地

第21普通科連隊

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総合訓練海上機動からの進入

防衛日報 2025年12月11日付


 秋田駐21普連(連隊長・清田1陸佐)は9月1日から11日の間、仏領ニューカレドニアで実施された「令和7年度仏陸軍との実動訓練(ブリュネ・タカモリ25)」に参加した。


 訓練は対ゲリラ・コマンドウ作戦に係る任務遂行能力・戦術技量の向上を図るとともに、陸自と仏軍との相互理解・信頼関係の促進を図ることを目的とし、令和5年より実施されている。仏軍側からは太平洋ニューカレドニア海兵歩兵連隊が参加し、訓練は現地演習場や地元海岸などで実施された。


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駐屯基地にたなびく両国の国旗


 前半の機能別訓練では、戦闘射撃、衛生訓練、UAV訓練、密林内で行われるコマンドウ訓練、仏軍舟艇による海上機動訓練が行われたほか、陸自初の連隊級での日仏共同指揮所訓練が実施された。


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総合訓練負傷者救助の掩護

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海上機動訓

 

 後半に総合訓練として行った日仏共同によるゲリラ・コマンドウ対処訓練は、機能別訓練で学んだことが随所に生かされるように状況が設計され、全日程を通じて日仏双方が最大限効果を得ることができる訓練だった。


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障害走仲間が足で障害を持ち上げて前進


 陸上機動、海上機動による進入、それに引き続く日仏共同でのゲリラの捜索・撃滅などにより、対ゲリラ・コマンドウ作戦に係る作戦遂行能力・戦術技量の向上を図った。


 訓練を終え、仏軍指揮官のルイ・ベルベオック大佐は「陸上自衛隊とニューカレドニアで訓練できたことは相互に多くの学びがあり、非常に意義深く、何より日仏の絆を深め合うことができたのは成果だった」と述べた。


 また、連隊長の清田1佐は「国外訓練ならではのさまざまな困難があったが、仏軍の素晴らしいサポートと秋田隊員らしい粘り強さのおかげで乗り越えることができた。精神面・技術面双方で得るものが多い充実した訓練となった」と語った。


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訓練終了後の集合写真

 陸自と仏陸軍は気候風土の違う異国で他国の軍と共同するという難解でありながらも、極めて貴重な任務を全うし、共に得難い絆と経験を得た。


「ブリュネ・タカモリ」


 幕末から明治維新にかけて活躍した仏軍人のジュール・ブリュネと陸軍元帥の西郷隆盛からとったもので、日仏軍人の「騎士道」「武士道」の相互融合を表現している。特にジュール・ブリュネは、江戸幕府の軍事顧問として函館戦争に榎本武揚らを支援して参戦し、旧幕府軍の副総裁となり最後まで参戦。映画「ラストサムライ」のモデルとも言われている人物。


<編集部より>


ロシアによるウクライナ侵略で国際秩序が揺らぐ中、自衛隊は欧州の国々との共同訓練に力を入れています。

その中の一つに、陸上自衛隊がフランス陸軍と実動訓練を実施する「ブリュネ・タカモリ」があります。今年度は仏領ニューカレドニアを舞台に、陸自から秋田駐屯地21普連が参加しました。防衛日報の本日(12月11日付)2面のトップ記事です。

訓練は、対ゲリラ・コマンドウ作戦に係る作戦遂行能力・戦術技量の向上が主な目的です。その歴史は浅く、2023年度(令和5)にニューカレドニアで第1回が、2回目の昨年度は日本(宮城県、岩手県など)でそれぞれ実施されました。

今回も機能別と総合の2つのパートに分かれ、機能別では戦闘射撃から衛生訓練、密林内でのコマンドウ訓練などなど。総合では陸上機動、海上機動による日仏共同によるゲリラの捜索・撃滅などなどでした。

仏軍アセットも活用し、市街地だけでなく、森林錯綜地内の索(さく)敵・掃討も実施。陸自初の連隊級での日仏の共同指揮所訓練もありました。すべては、両国陸軍種間の相互理解、信頼関係の促進に他なりません。

旧社で防衛庁(当時)担当記者として取材を続けていた際、仏陸軍部隊はゲリラ戦の経験が豊富であることを聞いたことがあります。実戦で培ったノウハウは21普連に大いに参考となったことかと思います。

何よりも、気候・風土の違う異国での共同訓練は、難しい側面がある中、極めて貴重な任務を全うしたことに大きな意義があるのだと思います。

少しそれますが、名称にこだわってみたくなりました。著名人や由来がある人物の名を艦艇などに命名することは日本でもよくあることですが、今回の「ブリュネ・タカモリ」の訓練名の理由にはとても惹(ひ)かれました。

ブリュネは幕末に日本に派遣され、旧幕府軍の副総裁として最後まで参戦した軍人、ジュール・ブリュネ。タカモリは言わずと知れた、「西南戦争」で活躍し、初代陸軍大将を務めた西郷隆盛にちなんでいます。ブリュネは映画「ラスト・サムライ」のモデルにもなった人物というのも拍車をかけてくれます。

資料などを見てみると、この2氏の名を取り入れたことで、「『仏の軍事技術・精神』と『日本の武士道』の融合」を意味しているとのこと。勝手ながら、名前の考案者に拍手を送りたいほどです。名前だけで連携が深まるような気がしてしまうからです。

インド太平洋地域の安定化は沿岸諸国に限らず、欧州各国にも大きな影響を与えています。とくに、フランスは関心が高いとされ、中国の海洋進出などに対応することを念頭に日本との安全保障協力を強化しているのが現状です。

訓練を通してともに手を携え、関係を強化し、お互いの技術や知識を共有することこそが、安定化につながる大きな「道」となるのです。