陸海空の各自衛隊を平時から一元的に指揮する新しい常設の「統合作戦司令部」が3月24日に発足し、東京・市ケ谷の防衛省で新編行事などが行われた。
陸海空の各自衛隊を平時から一元的に指揮する新しい常設の「統合作戦司令部」が3月24日に発足し、東京・市ケ谷の防衛省で新編行事などが行われた。
陸海空やサイバー、宇宙の主要部隊を運用し、事態の状況や推移に応じた柔軟な防衛体制をより迅速に構築することが可能となるほか、米軍などとの情報共有や運用面での協力などを通して日米の共同対処能力の向上を目指す。司令部は防衛省内に置かれ、同日午前0時、約240人体制で発足した。初代の統合作戦司令官に就任した南雲憲一郎空将(59)は、「国民の命と平和な暮らしを守るため、平素から有事に至るまで、シームレス(切れ目なし)に事態に的確に対応する」と述べた。
すべての自衛隊の運用に関わる大規模な組織改編は、2006年(平成18)に統合幕僚監部を新設して以来となる。
司令部は従来の陸海空に宇宙・サイバーも加えた広範囲をシームレスに指揮。それぞれの分野を組み合わせる「領域横断作戦」の能力向上を図り、常設とすることで、領空・領海の警備や、弾道ミサイルへの対処、周辺国の軍事的挑発や大規模災害が同時に起きる「複合事態」が常態化する中での円滑な対処など、平時から有事まですき間なく対応できるようにするのが狙いだ。
□「極めて大きな意義」□
防衛省では同日午前、南雲氏に対する栄誉礼などを実施。午後からは部隊の新編行事などが開かれ、中谷元防衛大臣から南雲氏に隊旗が手渡された。
中谷氏は新たに司令部の一員となった隊員たちの前で訓示。「(司令部の新設は)わが国の安全保障上、極めて大きな意義を持つものだ」とし、その根拠として(1)自衛隊の即応性の向上(2)同盟・同志国との連携による情報共有や運用面での協力の一元化―を挙げた。
その上で、国内での大規模な災害の発生、周辺諸国やウクライナなど国際情勢の緊迫化を基に、「防衛省や自衛隊に期待される部分がより一層、重くなっている。使命の重要性に思いを致し、高い技術と緊張感を保ちながら任務に精励してほしい」と述べた。
南雲氏は「先達の労苦に思いを致し、その礎(いしずえ)に立って新たな歴史を一歩一歩、隊員一丸となって邁進(まいしん)する」と決意の言葉を語った。
□看板は大臣が筆を執る□
この日夕方、中谷氏は防衛省で自ら筆を執ったとする司令部の看板を南雲氏とともに掲げ、改めて新編について「自衛隊のオペレーションは多機能化しており、災害派遣なども複雑になっている。一元的な指揮により、部隊行動のスピード化、統合運用の実効性の確保が実現される」と力を込めた。
南雲司令官は24日午後、記者会見に臨み、「われわれの任務は、国民の命と平和な暮らし、わが国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、平素から有事に至るまで、継ぎ目なく事態に対処すること」とし、「この重要な任務を防衛大臣の指揮の下、的確に果たすため、より精強で健全な部隊を不断に追求していく」と述べた。
また、ロシアによるウクライナ侵略を引き合いに出し、「同様の事態がわが国周辺を含むインド太平洋地域で起こらないとはいえない」と説明。司令部の任務として(1)望ましい安全保障環境の構築(2)事態発生の抑止(3)発生した事態への的確な対処-の3つを挙げた。
さらに、複数の事態の発生など「複合事態」については「柔軟に対処する」と述べたほか、司令部の発足で重要な任務となる米軍との連携について、「ともに力を出し合って、作戦能力を結集していきたい」などと強調した。