防衛関係費、過去最大の9兆円 |防衛省

予令和8年度予算案可決

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1602億円を計上した日英伊が共同で進める次世代戦闘機開発計画「GCAP」のイメージ画像(防衛省HPから)

防衛日報 2026年1月7日付


 防衛省は昨年12月26日、令和8年度予算案を発表した。厳しい安全保障環境の中、日本を守り抜くために必要な予算として、防衛関係費は過去最大となる9兆353億円(SACO=米軍再編関係経費=などを含む、歳出ベース)を計上した。


 4年目となる「防衛力整備計画」に基づき、無人アセットを活用した多層的沿岸防衛体制「SHIELD」の構築やスタンド・オフ、統合防空ミサイル両防衛能力、宇宙・サイバーを含む領域横断作戦能力の整備を加速する。

 あわせて、南西地域の防衛体制の強化や弾薬・施設の強靭(きょうじん)化 、「令和の時代にふさわしい処遇の確立」など人的基盤への投資も進め、装備・人・基盤を一体で整える構えだ(写真、図、グラフなどは発表資料から)。


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令和8年度予算案の主なポイント

 

 防衛省によると、8年度予算案は整備計画期間中のこれまでの事業の進捗(しんちょく) 状況や予算の執行状況を踏まえ、予算額を着実に増額。計画の実施に必要な金額(契約ベース)の43.5兆円に対する計画対象経費として、8兆8093億円を計上。今回の予算案を含めると、81%に達した。これにSACO関係経費を加え、初の9兆円台に達した。

 

 政府が防衛費の対GDP比2%水準を前倒しで措置するとともに、国家安全保障戦略などの「戦略三文書」の改定の検討を開始する方針を打ち出す中、8年度予算案では、装備品の取得や体制整備を着実に進める考えで、無人アセットの活用や人的基盤の強化といった新たな課題への対応にも重点を置く。

 

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無人機「グローバルホーク」(防衛省HPから)


 また、抑止から対処、事態の長期化も見据えた防衛力を段階的に構築する観点から、引き続き、①スタンド・オフ防衛能力 ②統合防空ミサイル防衛能力 ③無人アセット防衛能力 ④領域横断作戦能力(宇宙・サイバー・陸海空領域) ⑤指揮統制・情報関連機能 ⑥機動展開能力・国民保護 ⑦持続性・強靱性―の重点7分野を柱に編成された。

 

 近年、諸外国で無人アセットの導入、技術革新が進展したことで、戦闘様相は大きく変化した。こうしたことから8年度予算案では、無人アセット防衛能力に約2773億円を盛り込んだ。

短期間で安価に取得でき、危険な環境下での長期運用が可能な特性を生かし、有人装備に依存した従来の防衛態勢から、無人アセットを組み合わせた非対称的な防衛態勢への転換を進める。

 

 中核となるのが、無人アセットを活用した多層的沿岸防衛体制「SHIELD」の構築だ。関連経費として1001億円を充て、UAV(無人航空機)、USV(無人水上艇)、UUV(無人水中艇)を組み合わせ、島嶼(しょ)部や沿岸部を中心に、偵察・監視から攻撃、輸送までを担う体制の構築を本格化させる。

 一方で、複数の無人アセットを一元的に指揮・管制する同時管制機能の導入に向け、22億円を計上して実証試験を行う。

 

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相手の射程圏外からの攻撃を期待される12式地対空誘導弾能力向上型(地発型)の発射試験の様子(防衛省HPから)


 敵の射程圏外から高精度で攻撃する整備として約9733億円を計上。島嶼部を含む東西南北約3000キロに及ぶ日本の領域で、艦艇や上陸部隊などに対し脅威圏の外から対処する能力を強化する。

 具体的には、12式地対艦誘導弾能力向上型の取得を引き続き進めるほか、新たに音速の5倍以上で飛ぶ極超音速誘導弾と地上装置などの取得に301億円を盛り込んだ。あわせて、能力の早期補完として外国産スタンド・オフ・ミサイルの取得も進め、この一環としてF15能力向上機に搭載する「JASSM」の取得に17億円を充てる。

陸自15旅団(那覇市)に1個普通科連隊などを新編し、15師団(仮称)として改編。島嶼防衛を担う部隊運用体制を強化する。あわせて、「SHIELD」や南西各地に電子戦部隊の配備を進める。

 

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新田原基地に配属されたF35B(空自Facebookから)


 また、昨年7月に開設された佐賀駐へのV22輸送機(オスプレイ)配備、F35B戦闘機の運用を見据えた体制整備を進めるとともに、南西島嶼部への部隊展開を担う海上輸送力を補完するため、補給品(コンテナ)輸送に特化したPFI(民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)で船舶2隻を確保する。このため民間海上輸送力として110億円を計上した

 約5091億円を計上した。弾道ミサイルや巡航ミサイル、航空機、無人機など、多様化・複雑化・高度化する経空脅威に適切に対処するため、探知・追尾から迎撃までを一体で運用する体制を強化する。

 迎撃アセットではイージス・システム搭載艦関連に797億円、弾道ミサイルなどへの対処能力を向上させるため、「ペトリオット・システム」の改修に77億円、03式中距離地対空誘導弾(中SAM改)の能力向上に51億円などを充てる。

 

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FPS警戒管制レーダー(防衛省HPから)

 領域横断作戦能力では、「新領域」の宇宙・サイバー・電磁波を組み合わせた能力強化を進める。宇宙(衛星の活用による情報収集機能の強化など)、サイバー(セキュリティー対策の強化、サイバー要員の育成など)、電磁波(電子戦能力、電磁波管理機能の強化など)の組み合わせにより非対称的な優勢を確保するねらいがある。

 

 具体的には、宇宙領域には約1740億円を計上し、Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」(7年2月運用開始)を含む通信基盤を強化する。宇宙空間での能力を強化することなどを背景とした「航空宇宙自衛隊(仮称)」への改編や「宇宙作戦集団(仮称)」の組織改編も見据えたものとなっている。


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宇宙領域把握体制構築に向けた取り組み(防衛省資料から)

 

 また、サイバー領域には約2331億円を計上し、高度化・巧妙化するサイバー攻撃への対処能力を強化。情報システム防護に加え、外部人材の確保にも0.4億円を充てるほか、電磁波領域では、ミサイル対処用レーザーシステムの研究に10億円を計上したほか、対空電子戦部隊の配備を進める。

 このほか、陸海空各領域の能力強化として約9929億円を計上。多目的誘導弾システム(改)などに242億円、新型護衛艦(1隻)に1043億円、潜水艦(1隻)に1208億円、F35A戦闘機(8機)に1493億円をそれぞれ充てる計画だ。

 人的基盤の強化には約5814億円を計上した。自衛官の確保と定着を図るため、若年定年退職自衛官の再就職支援(11億円)や、子育てと勤務の両立を支援する臨時託児(2億円)などのソフト施策を講じる。

 あわせて、宿舎整備や老朽化対策(819億円)、隊舎・庁舎などの整備(4517億円)も進め、居室の個室化など勤務環境の改善も図る。

 

 研究開発分野には約7095億円を計上した。このうち、次期戦闘機の開発は日英伊3カ国によるGCAPとして進められており、関連経費として1602億円を盛り込んだ。7年度以降は、3カ国が設立したGCAP国際政府機関(GIGO)の下で、機体やエンジンの設計作業などを一元化する。あわせて、次期戦闘機と連携する無人機の構想設計にも着手する。


 また、防衛装備品を安定的に製造・維持するため、防衛生産基盤の強化に約957億円を充てる。防衛装備移転の円滑化や、生産基盤の維持・強化に向けた体制整備を進め、供給網の強靱化や製造工程の効率化を図る。

 防衛省は8年度予算を通じ、無人アセットやスタンド・オフ防衛能力の整備を進めるとともに、統合防空、南西地域の体制強化、人的・生産基盤の整備を含め、防衛力を総合的に強化する方針だ。