知力×体力×判断力―バトルロイヤル形式で真剣勝負|弘前駐屯地

第39普通科連隊

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緊要地形での交戦シーン

防衛日報 2025年7月2日付


 弘前駐39普連(連隊長・萱沼1陸佐)は5月30日、うっすらと残雪が残る弘前演習場で「令和7年度第1回分隊競技会」を実施した。

 

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姿勢を低くしての射撃


   競技会は年度内に3回実施される分隊競技会の1回目。バトラー(人員用レーザ受信装置・小火器レーザ送信装置)を使用した遭遇戦が課目だ。


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識能試験に集中する隊員たち

 戦闘間に必要な知識が問われる機能試験の点数と遭遇戦の戦果に応じた得点の合計により勝敗が決する。

 


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前進する分隊の様子


 9施設大隊と9通信大隊の代表各1個分隊が競技会に特別に参加した。

 

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援護下で緊要地形を通過する隊員たち


 遭遇戦では午前と午後に分けて2回実施し、それぞれで15個分隊の120人がバトルロイヤル形式で戦闘した。

 

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緊要地形で交戦する隊員


 この間、戦場が定時に移動し、徐々に面積が縮小される。時間内に定められた戦場内に移動できなかった隊員は失格となる。

   

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分隊長に装着したアクションカメラの画像①

 こうした状況で、各分隊は体力、地図判断能力、近接戦闘能力などの持てる力を十分に発揮し、激烈な戦闘を繰り広げた。

 

 緊張感あふれる競技会を通じて各個戦闘能力、分隊規模における戦闘・戦技能力、分隊長の指揮・状況判断能力を向上させることができた。

 

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分隊長に装着したアクションカメラの画像②


 3中隊の1分隊が識能試験、遭遇戦で高得点を獲得して見事第1位となり、日頃の練成訓練の成果を示した。


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陸上自衛隊 弘前駐屯地

陸上自衛隊 弘前駐屯地【公式X】


<編集部より>

「バトルロイヤル」と聞いて、何を浮かべるでしょうか? 昭和の男としてはどうしてもプロレスと答えてしまいます。

試合方法の一つで、10人前後のレスラーが全員、一度にリングに上がって行う勝ち抜き戦。初見の客が多い地方における興行でよく見受けられます。自分も地方出。小学生時代、地元に興行に来た団体で初めて生で見て、その形式が実におもしろかったことを覚えています。

「きのうの敵は、きょうの味方」よろしく、敵味方なく協議し合ってターゲットの1人を決め、順番につぶしていくのです。残った者同士は、先ほどまで仲間だったのがそうではなくなる。試合は1人ずつリングから消え、最後に残った人間が勝利者となるのです。通常の試合形式とは別に、その瞬時に変わる光景、「次はだれにするか…」と話し合う時のユーモラスなやりとりなどがリング上で展開され、その姿が人気を集めているのです。

名前に惹(ひ)かれてわが身の拙(つたな)い経験から始めましたが、では、自衛隊に置き換えてみればどうなるのでしょうか。それは、まさに「リアルバトルロイヤル」にほかなりません。

そこで、本日、紹介するのは15個分隊、計120人が参加した弘前駐屯地の「7年度第1回分隊競技会」です。もちろん、プロレスと単純に比較はできません。余興的なプロレスのそれとは違います。自衛隊は実戦を想定するあくまでも訓練。本気のものなのですが、誤解を恐れずにあえて関連付けられることといえば、舞台が演習場(リング)、隊員(レスラー)120人が定時に移動する戦場、徐々に縮小させる面積というルールの中、バトラーを使った遭遇戦をバトルロイヤル形式で行ったということでしょうか。

時間内に定められた戦場内に移動できなければ、失格というのもよりリアルです。戦闘間に必要な知識が問われる識能試験とのセットも「学科+実地」的でさらなる練成成果が期待できるというものです。競技会では、状況判断などさまざまな能力を駆使し、勝ち残った3中隊1分隊が見事第1位となりました。

バトルロイヤルといえば、今はゲームも大人気です。自分のスタイルに合わせてカスタマイズした武者を操作し、戦場を駆け回って痛快な戦闘を楽しむ。だれが勝者になるか分からないところに大きな魅力があると聞きます。ゲームとはいえ、共通することといえば「戦闘」「戦い」。一般人にとっては空想のものとはいえ、その文言に興味が深まるものなのなのかもしれません。

自衛隊にとっては有事のための日々の訓練であり、競技会です。プロレスやゲームと一緒にしてはいけません。承知の上ですが、今回、弘前駐の報告には競技会を「リアルバトルロイヤル」と表現しており、自分も使ってしまいました。

その文言は一般向けのリップサービスもあるのでしょうが、自衛隊にとってはまさにリアルそのもの。こうしたことも、自衛隊への関心や理解につながると思い、紙面では識能試験を含め、写真を多用して紹介してみました。