中学生へ防災教育 AEDを用いた心肺蘇生法の教育も|栃木地本

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止血法体験の様子

 

 栃木地本大田原地域事務所(所長・高井1陸尉)は2月13日、那須町立那須中央中学校で、学校が主催する防災教育を支援した。教育は、「人命救助」というテーマに沿って、身近なものを用いた止血法、固定法の要領の習得や、訓練用のAEDと人形を用いた心肺蘇生法の教育をクラスごとに実施した。 


 心肺蘇生のグループでは、一通り説明が終わって実習の時間になると、われ先にと人形やAEDに向かい、心肺蘇生に挑戦。周囲で見学している生徒も、「人工呼吸の空気がうまく入っていないよ」とアドバイスをするなど、終始、活気ある雰囲気だった。

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心肺蘇生法教育の様子

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心肺蘇生法体験の様子

  

 止血法を受講した生徒は、実際に出血しているという想定で速度を追求するグループもいて、練度の向上のために積極的に参加していた。

 ある生徒は、「これは役に立つと思う。いざという時に身を守れる技術が身についてよかった」と笑顔を見せていた。

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止血法教育の様子

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止血法体験の様子

 

 また、固定法のグループでは、慣れないロープの扱いに手間取っていたが、自衛官のアドバイスを受けると、みるみる上達。「きょう一日でいろいろなことが学べた。自衛官って何でも知っていてすごいですね」と語っていた。

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固定法教育の様子

 

 2月17日には、那須塩原市立日新中学校で、学校が主催する防災教育を支援。止血法、固定法の要領の習得や、訓練用のAEDと人形を用いた心肺蘇生法の教育を男女別で実施した。

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教育前挨拶

 

 心肺蘇生では、並べられた4体の訓練用人形にグループを作りながら「AED、持ってきて!」「119番に連絡をして、救急車呼んで!」といった実際の場面を想定した実習を行い、疑問を感じた場合はすぐに近くの自衛官に質問するなど集中して取り組んでいた。

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心肺蘇生法教育の様子

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心肺蘇生法体験の様子

 

 止血法、固定法のグループでは、包帯の巻き方といった基本的事項をはじめ、身の回りのものを用いた応用的な講座を行った。ごみ袋を使った骨折の処置方法を展示すると、生徒たちから拍手と歓声があがった。

 実習の時間になると、ペアを組んでタオルを使い、お互いの腕を止血しながら「脈、止まった?」「止まってるよ。すごい。これで止まるんだね」と止血法の効果に感銘を受けていた。

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止血法体験の様子

 

 大田原所は「今後も引き続き多くの学校との連携および信頼関係を強化し、『地域密着型』の広報で邁進まいしんしていく」としている。


自衛隊栃木地方協力本部

<編集部より>

「人間は忘れる生き物である」は、19世紀のドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが実験を通した説として知られています。覚えたものの約40%が1時間後には約半分を忘れているというのがその論拠とされています。

3月11日は東日本大震災から14年の節目でした。「1000年に一度」とまで言われた未曽有の大震災でした。さすがに、1時間後はあり得ないとしても、地域によって、あるいは自分事として捉えようとしなければいつしか、忘れてしまいがち。これはどうしようもないことなのかもしれません。

個人的には、「3.11」は旧社で仙台市勤務中でした。被災した一人として「防災」への意識がぐんと高まり、五体満足で生きられたこともあり、その後の記者人生のライフワークの一つとなりました。「忘却」の2文字は自分としてはあり得ません。

しかし、それ自体も温度差があることは否めません。地震大国でいつ、どこで起きるかわからない日本列島に住んでいても、自らの経験や身内、知り合いなどが被災していないと、たしかに難しいものなのかもしれません。

だからこそ、防衛日報はメディアの端くれとして、読者に国民に対し、発生したことだけでなく、「なぜ、起きたのか」、「何が足りなかったのか」、「じゃあ、どうしたらいいのか」…の情報を可能な限り提供するという使命があると思っています。

防衛日報では今回、「3.11」の紙面で、防衛省・自衛隊が大震災を大きな教訓として取り組みを大幅に広げた防災への各地の取り組みを取り上げました。栃木、茨城、和歌山、京都、神奈川の5地本、神町駐屯地20普連、青野原駐屯地8高射特科群の2部隊の報告を基に、教育からスクール、実習、訓練、フェスに至るまで、防災と名の付くイベントの総まとめです。

防災関連の報告は、連日のように全国から寄せられます。14年前の「あの時」の自衛隊の活動は世界に称賛されました。その自衛隊員たちが目の前でさまざまな説明や実技などを通して教えてくれるわけですから、説得力がそもそも違うのです。

防災の知り方は何でもいいのですが、イベントに参加することで忘れかけていたその記憶が甦り、とくに学校などで受けた子供たちは必要性、重要性の一端を感じて理解し、自宅で親御さんや兄弟に話し、家族が同じ意識を持つきっかけとなったりします。その「先生」の最適任者こそ、隊員ではないでしょうか。

今回は、14年の節目でもあることで、被災地の現状や被災3県(宮城、岩手、福島)の知事がインタビューなどに答えていた様子も合わせて紹介した2ページ特集を組みました。

昨年元旦には能登半島でも大きな地震がありました。実際に発生すれば、そのときだけは全国が注目します。でも、日が経つにつれてとくに、離れた地域などでは忘れがちとなってしまいます。少しでも、日常の中で頭のどこかに意識を持ってもらえるよう、防災に向けて頑張る自衛隊の姿を紹介していきたいと思います。