親子を支える仕組みを実証 隊員の安心と即応力を両立する訓練|姫路駐屯地

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防衛日報 2025年8月29日付


 姫路駐(中部方面特科連隊長兼駐屯地司令・奥村1陸佐)は8月7日、隊員の緊急登庁支援に係る実動訓練を実施した。


 当日、管内で大規模災害が発生したとの想定の下、隊員の緊急登庁に際し、子供を親らに預ける手段を確保できない状況で、駐屯地が隊員の子供を一時的に受け入れ、災害派遣など出動勢力の最大化が図れるよう部隊の行動における環境を整備するもの。


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一時受け入れの受付風景

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一時受け入れの受付風景


 訓練は、当該施策に事前に登録された子供(全26人)7人とその親(隊員)の参加を受け、施策の実効性・有用性を確認した。


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笑顔で対応する隊員


 また、親族らへの引き渡しまで長期化する懸念などを踏まえ、今年2月に駐屯地コンビニ店(株式会社ファミリーマート、株式会社髙倉商店)と締結した相互支援に係る覚書に基づき、子供の食事など必要物資の確保に向けた具体的協議を行ったほか、臨床心理士により受け入れの子供や隊員が抱えるストレスの実態を把握、改善意見の収集なども行った。


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子供たちの対応をする隊員

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不安なく楽しく遊ぶ子供たち


 成果として、全登録子供数の約3割ということもあり、おおむね円滑に行われたが、年齢層に応じた対応やさまざまな状況の変化など、まだまだ現用施設を含めた運用改善と整備を要するとの教訓を得た。


 姫路駐は「今後もこうした訓練を継続させ、施策を最大限に活用し、あらゆる事態に適切に対応する態勢を維持したい」としている。

<編集部より>


今の時代、社内に託児所を設ける企業は珍しいことではありません。背景には女性の社会進出や施設利用の費用を抑えるなどさまざまだと思いますが、長らく「男性社会」だった自衛隊といえども社会の流れには逆らえなくなってきました。

もちろん、国防という任務、突発事案の対応などを考えれば、一般企業とまったく比較はできません。一つ言えるとすれば、女性にも広く門戸を開放したことで、当然のことながら女性自衛官は増加し、共働きとなる→育児と仕事の両立が欠かせない→異動が多く、いざという時、祖父母らに預けにくい…の構図ができてくるものです。ここだけをみれば、企業人と共通した思いとなるのかなと思います。

社会から見れば、「遅ればせながら…」かもしれませんが、隊員だって家族を持ち、子供を養っています。そのサポートで登場したのが、災害派遣時などで子供の預け先の確保が困難となる隊員のため、駐屯地に開設される「緊急登庁支援施設」。預ける隊員にとっては、安心して任務を遂行できるということが最大のメリットなのです。

この防衛省・自衛隊が推進する託児支援策は今や、各地の駐屯地で実施されるほどポピュラーなものとなっていますが、防衛日報の本日(8月29日付)2面トップ記事で掲載した姫路駐屯地の報告は、実際の受け入れの流れなどを具体的に検証した実動訓練でした。訓練では施策の実効性や有用性を確認し、その成果として得た教訓などを共有したようです。

駐屯地の一部が一時的に「保育所」となり、担当の隊員たちが「親代わり」となるのが支援施設です。面倒を見る隊員からすれば、自分に子供がいて、ある程度の育児の経験があったとしても、相手は小さな子供。言わずもがなですが、親しくなるのは容易なことではありません。

駐屯地にこうした施設が一時的に開設された初期のころ、取材したことがありました。対応するのはすべて子持ちの隊員。ほぼ女性でしたが、そこは上記のように大変です。

泣く子供をあやしてあやしてあやしまくる場面がありました。話しかけても答えない子供も普通にいます。子供の年齢によって対応も変わってくるでしょう。一筋縄ではいかないであろう任務ですが、そこは自衛隊。チームとしての団結心は「必要十分条件」の組織。次第に空気が変わり、笑顔と大声が響くようになったのです。

本来ならば24時間、365日、常に「有事」を意識しなければならない自衛隊だからこそ、必要な制度なのではないでしょうか。姫路駐では、臨床心理士のサポートで子供や受け入れ隊員が抱えるストレスの実態を把握し、改善するための意見を収集したとのこと。親がより預けやすく、受け入れ隊員がより受け入れやすい環境にすることで制度自体はより整備され、充実したものとなっていきます。

そのためには、今回の姫路駐のような日頃からの訓練も欠かせないところです。