海田市駐屯地から呉病院まで 学生が研修通じ自衛隊医療の現場を学ぶ|岡山地本

海田市駐屯地、多用途支援艦「げんかい」、自衛隊呉病院

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患者護送訓練の様子

防衛日報 2025年10月1日付


 岡山地本(本部長・小松1陸佐)は9月5日、陸自海田市駐、海自多用途支援艦「げんかい」、自衛隊呉病院で、川崎医療福祉大学の学生24人と講師2人に対し、部隊等研修を行った。


 海田市駐では、衛生科部隊の概要や陸自における医療従事者のキャリア形成について説明を受けたのち、第一線救護訓練や救急車両の見学、救護体験を行った。


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救護体験の様子

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第一線救護訓練を見学する様子


 臨場感あふれる訓練の様子に、「緊迫した状況下での冷静な医療行為を初めて見て、これが自衛隊かと実感できました」「第一線救護員として緊急救命行為ができることを知ることができたので、自衛隊に就職もいいなと思いました」といった声が聞こえた。


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第一線救護訓練の様子


 「げんかい」では、動きが制限された艦内での医療について説明を受け、患者護送訓練を見学した。「通常の救急現場では見ることのない高度な技術や限られた資機材、時間の中で冷静に処置する様子を目の当たりにし、救急救命士としての現場で求められる判断力や対応力の重要性を改めて感じました」という感想が寄せられた。


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患者護送訓練の様子

 

 また、呉病院では、医療に従事する海上自衛官から説明を受け、3グループに分かれて懇談を行った。


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自衛官の話に聴講する様子


 学生たちは「海上自衛官であり、救急救命士でもある立場は大変ですか」「どうして海上自衛隊の医療機関で働こうと思ったのですか」と積極的に質問をしたり、自衛官の話に身を乗り出して聴講する姿が印象的だった。


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積極的に質問する様子


 研修を通じて、学生たちは医療活動に対する理解を深め、専門職としてのキャリアに対する新たな視点を得た様子だった。


 岡山地本は「今後も医療従事者としての専門性を高める研修を継続的に実施し、医療分野における自衛隊の重要な役割を理解してもらうとともに、資格を生かせる環境が自衛隊にあることを広く伝えていきます。これにより、学生たちが卒業後の進路を選ぶ際に、自衛隊を選択肢として考えることが増えることを期待しています」としている。



<編集部より>


10月に入りました。記録的な酷暑に見舞われた日本列島はようやく、秋の気配が漂い始めてきたようです。体も心も落ち着く一方で、将来の職業選択を考える大学生たちにとっては「夢」を追うか、堅実な道を選ぼうとするのか、はたまた…。その見極めがとても重要な時期となります。

防衛日報では、各地本から寄せられる中で学生を対象にした報告には、「学生を求めて」のタイトルカットを添えて紹介しています。幹部自衛官として将来の自衛隊を牽引(けんいん)する立場となる人間だからこそ、目立たせる意味で少し、特別な扱いを考えた結果です。

本日(10月1日付)の1面ではトップ記事として、岡山県にある川崎医療福祉大学の学生24人と講師2人に対して実施した「部隊等研修」を取り上げました。岡山地本の報告です。

医療系の学生を対象とした研修といえば、自衛隊病院などを訪れ、医療器械、薬局、病室などの見学や病院で勤務する医官、看護官らとの懇談などが定番ですが、岡山地本の報告は違いました。陸自海田市駐屯地の衛生科部隊で第一線救護訓練や救急車両を見学し、海自の多用途支援艦「げんかい」では、動きが制限された艦内での医療や患者護送訓練を、さらに自衛隊呉病院で医療に従事する海上自衛官との懇談…。

1カ所だけでも十分な研修なのに3カ所もです。自衛隊で医療福祉分野を担当するといえば、まさにこうした現場です。その場を一度に体験できる「フルメニュー」は貴重すぎる研修となったことでしょう。

医療福祉といえば、一般的に「医療」と「福祉」の2つの分野を教育・対象分野としていますが、川崎医療福祉大学は創設者である川崎祐宣(すけのぶ)氏独自の考えがあったようです。単に医療と福祉という「足し算」的な捉え方ではなく、2つが融合して新しい理念と価値観を表すものとし、生まれてから生を終えるまで、人の一生を通して追い求め、持続されるべきもの、という理念があるということです。

真っ先に思うのは「治療=医療」でしょうが、そこにはリハビリやケアなど精神的、肉体的にサポートする「治療=福祉」の任務も存在します。それぞれを分けて考えるのではなく、足し算でもなく、限りなく融合するものなのだと思うです。

今回は川崎医療福祉大学というネーミングにひかれ、具体的な大学の理念などを知ることで自衛隊と密接に関係する要素を持つ大学なのだと思いました。

学生たちにすれば、まずは自衛隊のイメージが先に出て医療福祉との関係の部分への認識は少し、弱かったのかもしれません。それでも、自分たちが受けている教育が自衛隊でも生かすことができるんだという意識がさらに強くなった学生がいたかもしれません。入隊へ期待するばかりです。