奄美駐(司令・長谷川1陸佐)は5月26日から29日の間、徳之島天城町役場の職員を対象とした隊内生活体験を実施した。奄美群島の自治体職員を対象とした体験入隊の受け入れは、平成31年3月の同駐開設以来、初めて。
奄美駐(司令・長谷川1陸佐)は5月26日から29日の間、徳之島天城町役場の職員を対象とした隊内生活体験を実施した。奄美群島の自治体職員を対象とした体験入隊の受け入れは、平成31年3月の同駐開設以来、初めて。
隊内生活体験に参加したのは、役場の主任級を中心に森田弘光町長が選抜した職員6人。3泊4日の予定で、駐屯地に居住する隊員と同じ日課時限で隊員と起居をともにして行動し、団結・規律・士気を養うのが目的で、主に基本教練や各種訓練を体験した。
訓練体験では、基本教練における停止間、動行進間の動作について実施し、各個の動作について習得するとともに、規律について理解した。体力検定では自身の体力の現状を確認し、体力の向上のために各種目の目標に対して練成することを目的としていることを理解した。
また、徒歩行進訓練では、駐屯地内の約8キロの経路を2行程で実施。15キロの背のうを交代で背負い、相互に連携しながら団結心を養い、目的地に必ず全員で到着するという達成感を体験した。
災害発生時には職員も被災地で状況を判断し、避難誘導や住民の受け入れなどに対応する必要がある。
歩行進訓練は道路の分断により車両での救助、支援活動が困難となり、徒歩での物資輸送を想定したものであり、職員として災害に対処する上で物資、時間見積もり、体力など何が必要となるのかを実感した。
また、判断力やリーダーシップの重要性も併せて理解した。
職員は最後まで真剣に取り組み、訓練の目的は十分に達成できたものと強く感じている。訓練終了時には、「隊内生活体験に参加することで、チームワークの大切さを学んだ」などの所感があった。
奄美駐は「今回のような取り組みを通じ、引き続き地域とのさらなる連携強化を図ってまいります」としている。
<編集部より>
本日(7月3日付)は陸上自衛隊奄美駐屯地の報告です。徳之島天城町役場を対象にした隊内生活体験でした。奄美群島の自治体職員を対象としたのは駐屯地初。その内容を2面トップ記事として掲載しました。参加した6人の職員は3泊4日の日程で、基本教練や体力検定などを中心に、隊員と同じ日課時限で起居をともにしました。
自治体に限らず、民間企業や学校などからの自衛隊への体験入隊はどこでも実施されています。内容もそんなに変わるものではないでしょう。今回、大きく取り上げてみたのは奄美駐が平成31年3月の開設という「後発」であり、また、特別な事情がある中での「地域とともに」を実践する姿を紹介したかったからです。
実際、「遅ればせながら…」となるのかもしれませんが、状況は少し違います。地続きではない多くの離島を抱える環境の中、奄美大島内ではなく、北に位置する徳之島内の天城町を対象としているのがミソなのです。
天城町は駐屯地所在の奄美警備隊の災害担任隊区。有事には航空機を利用します。昨年11月、周辺地域に大雨特別警報は出された際には、初動対応として2人の連絡員が派遣されたり、徳之島で昨年6月に実施された「トライアスロンIN徳之島大会」では、大会の運営業務支援を行っていました。こうした「縁」がさらなる交流を生む形となったのです。
台風の襲来や大雨など、自然災害が発生しやすい地理的な環境がある地域です。「何かあれば、奄美から自衛隊が来てくれる」。自衛隊に対する信頼感が少しずつ大きくなっていると思うのです。
そう思うのには、理由があります。奄美警備隊とは同町の施設内に陸自の物資を事前集積するという全国初の協定締結の取材が縁で(5月15日付1面「特集 防衛力強化の現場から」で掲載)、今回の隊内生活体験のことについても報告をお願いした経緯がありました。協定自体、これまでの災害などによる初動の結果を踏まえたものでもありました。天城町の関係者にも取材を通して、自衛隊への思いを肌で感じた次第です。
災害時には自治体の業務が一気に増します。被災地で状況を判断し、避難誘導や住民の受け入れなどの対応が求められます。そこで重要なことは、判断力やリーダーシップ、そしてチームワーク。自衛隊ならば当然、身に付けておかなければならない「得意分野」。今回は大きな体験となったに違いありません。
何よりも、普段からのこうした地元とのコミュニケーションはいざという時の連携の力となり、住民にとっては自衛隊の存在をさらに認識することで、自衛隊にとってのメリットも大きくなるというものです。