大阪地本茨木地域事務所(所長・北口海曹長)は5月12日、大阪医科薬科大学の薬科学生6人を引率し、自衛隊阪神病院(川西駐)を見学した。
事業は、地域担当広報官である前田2陸曹が担当区域に所在する同大学との連携強化のために提案した。大阪地本募集課で臨時勤務中の阪神病院薬剤官の井上1陸尉の案内により、薬剤師を志す2年生4人、5年生2人に対し、自衛隊病院の概要説明と各施設見学を実施した。
概要説明では、自衛隊病院が地域でも役割を果たしており、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う大規模接種センターでの活動実績などを紹介した。また、各施設見学では薬剤官としての業務内容に関する質問のほか、休日の過ごし方に関する質問も飛び交うなど、学生たちは、初めて訪れる自衛隊病院を終始熱心に見学していた。
学生からは、「自衛官にも薬剤官という職業があることを知り、今後の進路の参考になりました」「初めて自衛隊病院の中を見ましたが、雰囲気も明るくて印象が変わりました」などの声が聞かれ、今後の同大学との連携強化や募集への期待を感じることのできる事業となるとともに、大阪府内の各医療系大学、専門学校などへの同種事業の提案などにも多くのヒントを得ることができた。
<編集部より>
自衛官でありながら、もう一つの「顔」を持ち、大谷翔平ならぬ、ましてや宮本武蔵ならぬ「二刀流」で国の安心・安全と隊員の健康・衛生面を担う、とても重要すぎる職種があります。それこそ、自衛隊に所属する薬剤師である「薬剤官」です。
このほど大阪地本茨木所から寄せられたのは、大阪医科薬科大学の薬科学生6人が自衛隊阪神病院を見学した報告です。学生たちは地本募集課で臨時勤務中の同病院薬剤官の案内で、病院の概要の説明を受け、薬剤所を訪れました。
かつて、薬剤師といえば薬科大学や大学薬学部を卒業すれば民間病院の薬局勤務や大学に残って指導者の道…などが普通の流れだったように思います。薬剤官の存在は以前からあったものの、年間の採用が20~25人程度という「狭き門」。まだまだ知られていないという問題もあるように思います。
今回、見学した学生たちから「自衛隊にも薬剤官という職種があることを知り、進路の参考になった」というコメントがありました。防衛省・自衛隊が「二足のわらじ」という大きな意義をさまざまな場で積極的にPRしてはいますが、まだまだ社会に周知できていない一面があるのかもしれません。薬剤官に限らず、地本や部隊からのイベントの報告を見ても、一部ではありますが自衛隊の職種の多さ自体を知らないという感想を見かけます。ここは、とても残念ですが、知ってもらうチャンスはまだまだ、たくさんあります。
薬剤官の任務は多種多様です。
配属された自衛隊病院や駐屯地の医務室で、調剤、服薬指導、衛生資材の調達・管理など隊員が任務を遂行するための健康診断や健康管理全般を担っています。衛生隊員として自衛隊の医薬品の管理、調達、補給の任務もあります。一方で、幹部自衛官として災害派遣や国際貢献活動で医療支援の中心となる衛生部隊の指揮官を補佐する幕僚の任務や、衛生行政機関での薬務行政、陸自学校の教官や研究員なども薬剤官の仕事です。
ここでは書き切れないほど多くの任務、大きな責任がある職種なのです。衛生分野の幹部自衛官ですから、冷静で的確な判断が求められます。切れ目のない医療を提供するためには医療資源の確保や備蓄は欠かせません。大規模災害が多い日本です。こうした事態への対処もまた重要です。
声を大にして言いたいことは、医官(医師)や看護官(看護師)と同様に、自衛隊に専門職としての薬剤官がいることで自衛隊員の健康面の確保・向上が守られ、それこそが国民の安心・安全につながる―という当然の図式です。
そして、広報する立場である防衛日報としても、気持ちを新たに薬剤官の任務を可能な限り、多角的に紹介することで社会にアピールしなければならないと肝に銘じています。