久居駐33普連(連隊長・南平1陸佐)はこのほど実施された「令和7年度方面統制演習場第2次教育訓練基盤構築」に、南平連隊長を10師団整備隊長として参加した。
事業は、あいば野演習場の教育訓練基盤の維持・拡充を図り、長期安定使用に寄与する目的で毎年行われている。特に防火帯・弾着地域の整備については、滋賀県との協定に基づいて実施する重要な事業。
各隊員は道路沿いの草刈りから開始。作業当初は降雨が続き、ぬかるんだ地面と湿度の高い気象の中で、ヤマビルによる吸血被害も多発するような環境の中、隊員たちは互いに声を掛け合いながら作業を継続した。
天候が回復した後は厳しい残暑が戻り、体力を消耗する状況下での作業となったが、隊員たちは草刈り機やチェーンソーなどを使用し、作業を進めた。
特に、今年配置されたばかりの新隊員たちは大変な環境の中でも、互いに励まし合い、時には笑顔で会話を交わしながら前向きに取り組む姿勢が見られ、そのたくましさが印象的だった。
整備期間中、重機や機材の故障により作業が難航する場面もあったが、10師団整備隊本部は、関係部隊との調整により最大限の効率的な隊員・機材・車両の運用に努めるとともに、各隊員の任務を完遂するという強い意志により、予定通りの期間で整備を完遂することができた。
また、傾斜がきつく作業が困難な地形の草刈りでは、車両にロープのアンカーを取り付け、ロープを結んだ隊員が斜面に降りて作業を行うなど、危険を局限して果敢に作業に取り組んだ。
小火器戦闘射場は、熟練のオペレーターが巧みに重機を操り、約1000本の樹木の伐根を完了させた結果、作業前は草木が生い茂り、見通せなかった地域が、連日の伐採と整地作業により教育訓練を実施するための良好な基盤を構築することができた。
33普連は「10師団整備隊が整備した地域は、今後多くの部隊が教育訓練に使用して練度を高め、中部方面隊の精強化に大いに寄与することになるだろう」としている。
<編集部より>
防衛日報の編集作業をしていると、毎年春秋恒例の演習場整備の報告がそれぞれのタイミングで各地から寄せられます。
「われわれの『道場』の大掃除」ですが、間もなくどこの家庭でも行われる大掃除とは訳が違います。そこには、どんな状況でも対応できる自衛隊たる「精強さ」を維持するため、という使命がある重要なインフラ整備なのです。
演習場といっても、国土が狭い日本列島。広さや規模だけでなく、砲弾が飛び交う以上、周辺地域との関係(住宅街ならば余計です)もあり、大体が自治体と何らかの契約なり取り決めをしているのが現状のようです。
こうした制約がありながらも、より安全で実効性の高い教育訓練を行うためには、主に春は冬季間、秋は夏季間の訓練などにより傷んだ道路や射場、施設などをリニューアルし、すっきりとした気持ちで次の訓練に臨むのです。
そこで、本日(12月12日付)の防衛日報の2面は久居駐屯地33普連が参加した7年度の「方面統制演習場第2次教育訓練基盤構築」の報告の紹介です。
ちょっぴり長いタイトルですが、演習場の整備であることには変わりなし。組織としての関係でいえば、中部方面隊→10師団→久居駐の隷下関係です。当然のことながら、10師団なども参加しているわけで、その整備隊を担ったのが33普連でした。連隊長は整備隊長を務めました。組織全体として共有する道場の「掃除担当」が33普連とするなら、その責任者が連隊長という構図です。重要な任務を与えられていました。
当然のことながら、最も傷みやすい防火帯や弾着地域は最優先となり、あとは草刈りから樹木の伐根まで、さまざまな任務を予定期間内に完遂したようです。
近年の傾向として、新たな課題もあります。装備の近代化への対応です。高性能化や長射程化に伴い、従来の演習場では広さが不十分になるなどの制約が生じていること。こうしたことに対応するための整備もまた、必要となっているということです。
余談ですが、今回は今年、配置されたばかりの新隊員たちも参加していました。初の演習場整備だったのかもしれません。
かつて自衛隊OBに聞いた話ですが、新隊員には草刈り機を持たせず、先輩隊員が刈った草集めが仕事とのこと。つまらない作業に映るかもしれません。演習場整備の目的の一つとして「安全、事故なく」は必ずあります。慣れない道具を使うには「〇年、早いよ」ということなのでしょうか。
久居駐のコメントにはそれでも、大変な環境の中、互いに励まし合い、時には笑顔で会話を交わしながら前向きに取り組んでいたようです。その姿は、候補生時のコミュニケ―ションにも似たように思えました。
僭越(せんえつ)ではありますが、新隊員たちには、初心に帰り、演習場整備の重要性を理解するための一つの「ハードル」程度に思ってほしいと伝えたいと思います。