釧路駐27普連(連隊長・安藤1陸佐)は9月5日から11日の6夜7日にわたり、北海道大演習場でHTC訓練に参加し、併せて旅団訓練検閲を受閲した。
訓練には、27普連を基幹として北部方面対舟艇対戦車隊、5特科隊、5戦車隊、5施設隊、5飛行隊、5通信隊、5高射特科隊、1対戦車ヘリコプター隊、各直接支援隊から所要の部隊が増強。旅団から先遣され、独立的に行動する27戦闘団として参加した。
開始に先立ち実施された編成完結式で、戦闘団長(27普連長)は「健在必勝」を、統裁官の岸良旅団長は、「敵火力から生き残るための周到な防御準備、特に堅固な築城」「情報と火力の確実な連携」「作戦下の安全管理を徹底せよ」の3点をそれぞれ要望した。
約4日間の防御準備では、偽装などにより「見られない努力」に努めつつ「見せて騙(だ)ます」ための偽陣地構築、偽行動などにより空地の敵から企図を秘匿するとともに、時間の許す限り予備・補足陣地を含む堅固な陣地を編成・構成した。
また、戦場監視組織、火力と連携した敵の機動を制限する障害を縦深にわたり構成するとともに、戦闘指導、戦闘予行により戦い方を徹底。防御戦闘に向けて万全の準備を整えた。
8日夕以降、敵の偵察部隊が作戦地域に侵入、9日朝ごろ、敵の先遣群の攻撃が開始された。前方地域の戦闘では、3中隊を基幹とした戦闘前哨により、敵の機動戦闘車などを障害と連携したMPMS火力により減殺し、敵の攻撃を効果的に遅滞した。
主戦闘地域の戦闘では、敵の圧倒的な火力から健在しつつ、敵の翼側からの攻撃に対し、施設中隊や連隊本部の要員で予備隊を結成。予備陣地の占領、縦深にわたる火力の発揮により敵戦闘力を減殺し、11日早朝、訓練の状況を終了した。
訓練では、既存の正倉院などのシステム通信機器による指揮統制、情報共有のほか、戦場監視カメラ、LTE音声システムなどの民生品を活用して、省人化した監視や情報共有について着意した。
27普連は「訓練で得た教訓を踏まえ、さらなる精強化に尽力していく」としている。
<編集部より>
自衛官の戦闘服がなぜ、迷彩柄なのかはお分かりだと思います。
活動する周囲の環境に溶け込み、身を守るため、相手の目を欺(あざむ)き、自らの存在を目立たないようにするためで、植生や地形に合わせており、装備品もまた迷彩効果を持つカバーなどで覆うのです。まさに、生息する環境の色に合わせて自在に体の色を変えるカメレオンのようなものでしょうか。
自衛隊が敵を欺くために行う偽装や欺瞞(ぎまん)は、部隊の位置や規模、意図などを悟られないようにするための重要な戦術。個人の「ドーラン塗り」から大規模な部隊、装備に至るまでさまざまなレベルで行われています。
当然のことながら、「見られない努力」をしながら、今では重要な作戦の一つとなっているのが「見せて騙す」なのです。
上記の「見られない―」と「見せて―」の2つのキーワードを可能な限り意識した訓練を釧路駐屯地27普連が実施しました。防衛日報の本日(10月31日付)2面のトップ記事です。
訓練は6夜7日にわたり、HTC(北海道訓練センター)訓練に参加した上、旅団の訓練検閲を受閲。27普連を基幹として各直接支援隊から所要の部隊が集結し、「27戦闘団」としての行動でした。焦点は戦闘団長(27普連長)がコメントしているように、敵の圧倒的な火力から生き残るための周到な防御準備でした。
そこで威力を発揮したのが、火力と連携した敵の機動を制限する障害。これを縦深にわたって構成しました。本番ではこうした準備が功を奏し、敵の機動戦闘車などに対し、構成した障害と連携したMPMS(96式多目的誘導弾システム)火力により減殺。敵の攻撃を効果的に遅滞させることができたようです。
言うまでもなく、活躍」の「立役者」こそ障害でした。「見られない努力」だけでなく、「見せて騙す」の効果です。敵に虚偽の情報を与えることで判断を誤らせることで、自軍の行動を有利に進める―。重要な防御戦術の成せるワザなのかと思います。
自衛隊の資料などによれば、「騙し」は数多くあるようです。性質上、公(おおやけ)にはしづらい側面はありますが、例を上げれば、主力部隊が展開している場所とは別に、ダミーの陣地をつくり、敵の注意を引き付けたり、昨今の時代背景もあって通信機器から偽の電波を発信し、本隊が別の場所にいるかのように見せかけることなどです。
こうした欺瞞戦術は、偵察衛星やドローンなどによる監視技術の進歩など戦闘様相の変化が著しい現代戦では必要不可欠のもの。「いざ、戦闘」の前の準備段階について自衛隊側も大きな意識改革を求められる時代となっているのだと思います。