「道場化」推進へ 事故なく任務遂行①―ICT×施設技術で演習場を刷新|南恵庭駐屯地

各駐屯地で「春季演習場定期整備」が一致団結で実施!

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マシンガイダンス付油圧ショベルを使用した幹線道路整備(装軌車道)(北海道大演習場)担任部隊:第12施設群


安全管理の徹底、着実な作業を通した整備の推進、そして一致団結

 5月に入り、各駐屯地では恒例の「春季演習場定期(統一)整備」が実施された。

    デジタル技術を活用するDXを駆使し、融雪によって浸食した地面の補修や支障木の伐採から草刈り、野焼きなどのほか、期間を利用した野外炊事能力の向上まで、「道場化」に向け、汗を流した各地の様子をまとめた。


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幹線道路整備(装軌車道)(矢臼別演習場)担当部隊:第14施設群 


 南恵庭駐3施設団(団長・鹿子島陸将補)は5月8日から23日の間、北海道大演習場(恵庭・千歳・島松地区)、矢臼別演習場などで、春季演習場定期整備を実施し、道内演習場の道場化推進に寄与するため、練成訓練で培った施設技術を最大限に発揮するとともに、DXのさらなる推進を図りつつ所命の整備任務を完遂した。 

 

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幹線道路整備(装軌車道)(北海道大演習場)担任部隊:第13施設群 


 整備開始にあたり、団長は、融雪により荒廃している演習場を、各部隊が訓練最盛期を迎えるに先立ち、確実に復旧していくことが重要であることを強調した。

 

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副団長現地指導による民生品を使用した幹線道路整備(装軌車道)(矢臼別演習場)担当部隊:第14施設群 

 

 その上で「施設団たるプライドを持って高いレベルで任務を完遂」「指揮の要訣(ようけつ)、部隊行動の実践」「適切な品質管理および工程管理」「DXの推進」を要望事項とした。

 

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団長現地指導 作業地域と部隊指揮所間における映像伝送(北海道大演習場)担任部隊:第303ダンプ車両中隊

   各部隊は団長要望事項を具現するため、民生品の路盤強化資材などを積極的に活用して演習場の耐久性向上に取り組むとともに、ICT器材(衛星を活用した作業現場と指揮所間の映像伝送器材、マシンガイダンス付油圧ショベル)を駆使。

 

  指揮幕僚活動、工程・品質管理の効率性、施工の生産性を向上させ、装輪車道約261キロ、装軌車道約97キロの路面成形、溜ため桝(ます)浚渫(しゅんせつ)6 90カ所、各着陸場整備、ズリ運搬などの整備を無事故で完遂した。

 

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ズリ運搬作業地域と部隊指揮所間における映像伝送(北海道大演習場)担任部隊:第303ダンプ車両中隊

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幹線道路整備(装輪車道)(北海道大演習場)担任部隊:第12施設群

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駐屯地モニター等の訓練見学(北海道大演習場)

 この間、南恵庭、岩見沢、幌別駐モニターに整備現場を見学してもらい、演習場の広域にわたり整備する部隊・隊員の真摯しんしな姿を通し、自衛隊に対する理解促進、信頼感の醸成に寄与した。


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駐屯地モニター等訓練見学(駐屯地内)


陸上自衛隊 南恵庭駐屯地【公式X】

陸上自衛隊 南恵庭駐屯地【公式Instagram】


<編集部より>

 陸上自衛隊の「縁の下の力持ち」といえば、まずは施設科部隊を取り上げてしまいます。防衛日報ではこれまでも施設科への単独取材を重ね、そのつど特集記事を掲載してきました。一線部隊とは違い、なかなか日の当たることが少ない施設科ですが、個人的には「施設科なくして自衛隊なし」と思っています。その任務は計り知れないほど重要だからです。

 以前、取材した記者に対し、「こういうところ(施設科)にも取材に来てくれるんですね」とびっくりしていたという話を聞きました。それこそ、さまざまな部隊があることは紹介するのは当然。自衛隊というチームの一員であるからこそ、伝える責務があると思っています。

 そんな施設科が力を発揮する「こだわり」の一つに、毎年春秋、演習場などで実施される定期(統一)整備があります。防衛日報ではこのほど、5つの駐屯地から寄せられた春季整備の報告を1ページ特集として掲載しました。

   その中から、本日は南恵庭駐屯地3施設団の報告を紹介します。春季整備では、冬囲いを外し、雑草を刈り取り、倒木を除去し、道路を整地するなどの整備などが行われますが、そこにとどまらないほど進んでいました。ドローンやLTEルーターによる映像伝送などに象徴されるように、デジタルを活用したDXやICT器材など今の時代を象徴する技術をふんだんに駆使していることです。

 かつては、民間に後れをとっていたといわれたこうした器材の扱い一つまでしっかりとこなしながら、装輪車道の整備から装軌車道の路面成形、溜(た)め枡(ます)の浚渫(しゅんせつ)などまで、一連の任務を完遂していました。

ほかにも、真駒内駐屯地105施設器材隊では、衛星通信を活用したり、ドローン測量による地形のデジタル化などを通し、作業をより迅速に進めるさまざまな工夫を施していました。「古き良きものを使いながら、新しいものも積極的に取り入れる」―。時代に即した新たな整備像のようなものが確立されようとしている気がします。駐屯地によっては、普通科連隊や即応機動連隊が任務を担当していました。

   演習場を整備し、「道場化」することは、陸自全体の実効的な抑止・対処能力の維持・向上のために不可欠です。防衛省などの資料を見ると、以前は整備=作業の位置付けだったようですが、現在の陸自には多様な任務が与えられています。訓練時間を一瞬たりともむだにはできません。よって、定期整備は見直され、基本基礎動作を訓練するための演習場整備と位置づけられるようになりました。整備=訓練ということです。

 幹部は管理能力の向上、陸曹は指導能力の向上、陸士は技術力の向上を図ります。始める前には安全教育を行い、不注意によるけがや無理をさせないような配慮をしているのです。

 自分たちが使う大切な場が荒れていては話になりません。日々の訓練を実施するため、こうした整備はとても重要な任務。自衛隊を支える大きな「戦力」となっていることをぜひ、お伝えしたいと思いました。