陸上自衛隊で今年5月、手りゅう弾の訓練中に隊員1人が死亡した事故で、陸自は7月18日、爆発で飛び散った破片を防ぐ投てき壕(ごう)の壁にしっかり身を隠す運用が守られていなかったことを原因とする調査報告書を公表した。陸自は今後、隊員の危機回避行動の教育を徹底していく。

 事故は5月30日、山梨県の陸自北富士演習場で実施された1普連の訓練中に発生。隊員が手順通りに手りゅう弾を投げているか確認する射撃係だった男性隊員の首に破片が当たり、死亡した。

 陸自によると、爆発で飛散する手りゅう弾の破片は回転や空気抵抗で曲線軌道を描くことがあるという。訓練では通常、投てき壕の壁から70センチ以内に体をもたれかけ、頭を伏せるのが基本動作となっている。しかし、死亡した隊員は壁から2メートル87センチの位置にしゃがんでおり、曲線軌道で飛んできた破片が当たった可能性がある。

 指揮監督する立場の上官らは、破片が曲線軌道を描く恐れがあり、壁に身を寄せる動作の必要性を認識していなかった。ほかの一部部隊でも同様の認識不足が明らかになった。

 陸自では、教範を改正し、壁に身を寄せる危機回避行動を図などで分かりやすく解説するほか、投てき訓練の動画を作成し、訓練実施前に必ず視聴させるなどの教育を徹底する方針。