採点係として、命中弾痕を射手へ伝達する普通科中隊小銃小隊の女性陸士隊員

 <香川>陸自14旅団15即応機動連隊(連隊長・徳淵1陸佐)は5月上旬、日本原演習場(岡山県)で連隊野営訓練を実施した。
 
野外炊事能力向上も

 訓練では、16式機動戦闘車、各種部隊装備火器の実弾射撃訓練、連隊狙撃手集合訓練を実施して、連隊の射撃練度向上を図った。また、連隊集成による炊事班を編成し、野外炊事能力の向上を図った。

5.56ミリ機関銃MINIMIによる軽装甲機動車(LAV)からの車上射撃

16式機動戦闘車(MCV)による105ミリ砲射撃

84ミリ無反動砲射撃(演習弾)

訓練中(彼我識別)の連隊狙撃手

個人携帯対戦車弾(縮射弾)

隊員へ美味しい食事を届けるため、炊事車の取り扱い及び調理要領について意見を交わす隊員達

 特に、個人携帯対戦車弾(縮射弾)射撃では、連隊初の普通科中隊小銃小隊に配置された女性陸士隊員が参加した。

110ミリ携帯対戦車弾射撃(縮射弾)を実施する連隊初の普通科中隊小銃小隊の女性陸士隊員

 女性隊員は「射撃動作を具体的かつ実践的に学ぶことができ、自分の身になることばかりで良い経験ができた。第15即応機動連隊初の女性小銃小隊陸士隊員として、体力面で男性隊員より劣ってしまうので、その他の面では負けないよう日々精進していきます」と今後の勤務に対する意欲を見せた。

真剣な眼差しで訓練に取り組む連隊初の普通科中隊小銃小隊の女性陸士隊員

 15即機連は「引き続き『健全かつ精強な連隊』を目指し、女性が働きやすい環境づくりに努めつつ、着実に部隊の練度向上を図り、国民の負託に応えてまいります」としている。


◆関連リンク
陸上自衛隊第14旅団
https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/

<編集部より> 

 防衛日報の本日(6月18日)付2面で紹介したいのは、トップ記事の陸自14旅団15即応機動連隊が日本原演習場で実施した「連隊野営訓練」の報告です。各種部隊の射撃練度の向上などを目指すのが主な内容でした。その中では、「個人携帯対戦車弾射撃」(縮射弾)など、対戦車火器を使用しての訓練も実施されていました。

 対戦車火器は文字通り、戦車や装甲車など装甲を施した車両に対して有効な兵器とされます。もともと個人が携行できるサイズ。主に肩に担いで射撃するタイプの火砲や誘導弾(ミサイル)発射機などがこのように呼ばれています。その射撃操法から「肩撃ち兵器」などと言われることもあるようですが、何と言ってもその威力はすさまじいものです。目標とする装甲をぶち抜くわけですから。

 以前、野営訓練の取材でほんの一瞬でしたが、肩にかつがされた経験がありました(もちろん、発射はできないようにしたものです)。肩にズシッとくる重さは今でもはっきり覚えています。車とは違い、人間が操るもの。より正確無比な部分は求められますから、練度の向上は必要不可欠なのだと思います。

 今回は、連隊初の普通科中隊小銃小隊に配置された女性陸士隊員が参加したことも併せて報告がありました。その女性隊員の活動中の写真に写る表情もよかったので採用しました。今では「女性初の…」の時代ではなくなりつつありますが、まだまだ男性が圧倒的に多い自衛隊です。報告には、女性隊員のコメントもふんだんに盛り込まれていました。

 「体力面で男性隊員より劣ってしまうので、その他の面では負けないよう日々精進していきます」。とくに個人携帯対戦車弾自体を操る上で、相当の体力が必要となると聞きます。こうしたことも意識した内容なのかと推察されますが、一方で「射撃動作を具体的かつ実践的に学ぶことができ、自分の身になることばかり」だとも話していました。

 そこなのです。経験は大きな財産です。その経験を積むことで、もしかしたら男性隊員に負けないほどの射撃練度を向上させることができるかもしれません。

 もちろん、ほかの面でのアピールは大事ですが、15即機連がこうした形で以前はなかった女性隊員の中隊小銃小隊への配置という「英断」をしたことが素晴らしいこと。この「前例」が単なる前例に過ぎず、常態化していくことになれば女性自衛官が活躍する場も一層、増えることだと思うのです。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報6月18日付PDF