自民党は12月12日、国防部会と安全保障調査会の合同会議を開き、与党ワーキングチーム(WT)がまとめた防衛装備移転に関する提言案を了承した。ただ、日英伊3カ国の次期戦闘機計画を含む国際共同開発の第三国輸出について、公明党側がいったん合意したにもかかわらず、土壇場で反対したことで出席者からは批判が相次いだ。小野寺五典安全保障調査会長は「公明党執行部がバックドロップをしかけてきた」と独特の表現で批判した。

 提言案では、外国企業から技術を導入し、国内で製造する「ライセンス生産」の装備品の輸出緩和などが盛り込まれたが、国際共同開発の第三国輸出の結論は来年へと先送りにされた。7月の論点整理では意見が一致していたが、ここにきて公明党執行部が慎重な姿勢をみせた。

 今週中にも日本で開かれる日英伊の防衛相会談で、政府間組織設立に向けた条約が締結されようとしている中で、自民党側は「ちゃぶ台返し」をしたと、公明党執行部を非難した。会合に出席した関係者によると、小野寺氏は「議論を待っている暇はない。公明党は『嫌だ』というばかりで、理論的ではない。公明党執行部がバックドロップをしかけてきた」と非難した。

国際共同開発の第三国輸出について「早期に結論を出すべきだ」と主張する自民の小野寺安全保障調査会長

 ほかの議員らからは「今月14日は3カ国の防衛相が(政府間組織の設立に向けて)署名する。ちゃぶ台返しは迷惑だ」「与党が自分のはしごをはずしていいのか」「日本の国益を損なう行為だ」など激しい意見が噴出した。また、岸田文雄首相が公明党執行部に対して「強く意思を示してほしい」などの声もあった。

自民、公明の温度差くっきり

 自民、公明両党の溝は広がるばかりだ。公明の山口那津男代表は12日の会見で防衛装備移転に言及し、「期限や対象を絞ることなく議論を深めて、一致したところがあれば、それにこしたことはない」と説明した。さらに国際共同開発の第三国輸出については「しっかりと議論を深めていくことが重要だ」と自民との温度差が改めて浮き彫りとなった。

次期戦闘機の第三国輸出について慎重な姿勢をみせる公明の山口代表

 与党WTは来年、国際共同開発の第三国輸出のほか、現行で輸出可能な「掃海」「警戒」などの5類型の拡大の是非を議論する。防衛装備品の輸出拡大を目指す自民、最小限の変更にとどめたい公明、両党がどこまで歩み寄れるか、議論の先行きは不透明だ。

撮影は全て防衛日報社