海上保安庁音楽隊は11月9日、東京芸術劇場(東京都豊島区)で「第29回定期演奏会」を開いた。「海」をテーマにした楽曲や、子どもから大人まで大人気のディズニーアニメソングや映画、ドラマのテーマ曲など11曲を演奏。ホールに詰めかけた約1600人の観客からは大きな拍手がわき起こった。

 演奏会では音楽隊の技術顧問を務める荒井弘太氏がタクトを握った。荒井氏は指揮者としてブリティッシュブラスDOLCE、信州大学吹奏楽団、東京国際大学吹奏楽団音楽監督も務める。

演奏会ではしっとりとした曲からリズムに乗った曲までは幅広く演奏

 第一部では、海をテーマにした楽曲などを演奏。マンハッタン・ビーチやアルヴァマー序曲、ノアの方舟のほか、今年の大河ドラマ「どうする家康」のメインテーマである暁の空も奏でた。

 第二部では、ディズニーアニメソングを中心に魔法にかけられて、私のお気に入りなど5曲を披露。このうち、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」の中で歌われた輝く未来では、音楽隊の瀬戸口崇、前川真澄両隊員がデュエットで美声をとどろかせた。

美声を披露した瀬戸(左)、前川両隊員

 終盤は観客のアンコールに応え、海猿のテーマと、ガーディアンズ・オブ・ザ・ウェーブスの2曲で演奏会を締めくくった。

アンコール曲終了後には、観客から鳴りやまない拍手が会場を包んだ

 また、演奏の合間には音楽隊の隊員が海難事故防止ためにライフジャケットの着用やスマホなどの連絡手段の確保を促したほか、海の事件・事故には「118番」に電話を掛けるよう呼び掛けた。

海難防止に向けた対策を呼び掛ける音楽隊の隊員

海保音楽隊は海自東京音楽隊の「祖」

 海保庁音楽隊は同庁が発足して間もない昭和25年11月に設立。昭和27年4月、海上保安庁法の一部改正に伴い、同庁の付属機関として海上警備隊が発足。広報課に設置されていた音楽隊は同隊所属となり「海上警備隊音楽隊」に名称を変更した。

海保庁創設40周年を契機に再結成された音楽隊

 
 その後、昭和27年8月1日、サンフランシスコ平和条約の発効に伴い、政府は「保安庁」を新設。海上警備隊の業務は保安庁に移管された。さらに昭和29年7月1日には防衛庁設置法が施行され、保安庁は防衛庁へと生まれ変わった。初期の海保庁音楽隊は、これらの組織改編を経て現在の海上自衛隊東京音楽隊に引き継がれた。

 このように音楽隊は、海上警備隊へ移管されて以来、海保庁には存在していなかった。だが、幾度にもわたる音楽隊設立に向けた検討とその機運の高まりを背景に、昭和63年4月1日、海保庁創設40周年を契機に音楽隊が再結成された。

撮影はすべて防衛日報社

【防衛日報デジタルが海上保安庁を取り上げる理由について】
→自衛隊との連携強化 海上保安庁の役割を解説します。