令和5年(2023年)8月27日(日)、松島基地航空祭が開催された。昨年の入場者抽選や飲食物販売が制限された諸条件は撤廃され、制限のない航空祭としては4年ぶりの松島基地航空祭だ。カメラのレンズ長40cm以内の制限やレジャーシート使用禁止のルールは継続されたが、小型の折り畳みいすの使用が許可されるなど、新しい試みも画期的であった。各基地の航空祭はこうしたルールを独自に設けており、コロナ禍後の航空祭再開では、持ち込めるレンズのサイズが基地によってまちまちなど、入場者側の受け止めに若干の混乱もみられたが、航空祭は各基地が独自に開催する個性を持ったイベントであることが理解され、新時代を迎えたと実感される松島基地航空祭となった。
オープニングでは、ブルーインパルスの隊長機が、松島基地第4航空団第21飛行隊のF-2B、2機を従えて航過飛行し、松島基地航空祭らしい開幕を演出した。
ブルーインパルスの本拠地である松島基地航空祭では、午前の訓練飛行と午後の展示飛行で、2回曲技飛行が見られる。多くの観客がブルーインパルスの松島オンリーの2回の曲技飛行をお目当てに来場した。
松島基地からは、第21飛行隊のF-2Bが2回の機動飛行と1回の訓練飛行で展示した。F-2の戦闘機操縦課程を担う教官たちの展示飛行は摸擬対地攻撃を含むF-2の機動性を十二分に証明するものとなった。
松島救難隊のU-125AとUH-60Jも救難展示を実施した。救難展示の開始に当たっては、3名のメディック(救難員)が降下可能高度に達したUH-60Jからパラシュート降下を実施した。陸自の空挺レンジャー課程にも入校する屈強なメディックたちは、過酷な条件で救難活動を行う高い身体能力の一部を披露した。
外来機からは三沢基地配置の米空軍F-16デモチームが昨年に続き曲技飛行を展示した。単機ながらループやロールといった曲技飛行をふんだんに取り入れた展示飛行で観客を圧倒した。F-16デモチームは昨年とコロナ禍前の4年前にも参加し恒例となっている。
当日の滑走路はランウェイ25の運用であったが、F-16デモチームの離着陸だけはオポジット(反対向き)のランウェイ07で、航空機が苦手とする追い風をも辞さない全開の離陸を見せた。その離陸は、会場から見ると正面奥からこちらに向かってくる。その後、ランウェイ33上に達し目の前に切り返してくるという迫力のあるものとなった。オポジットも辞さずに発進する姿は、戦闘機の緊急発進を体現しているとも考えられる。
地上展示機としては、空自からは三沢基地警戒航空隊E-2C、千歳基地第2航空団第201航空隊F-15Jが、陸自からMV-22B(オスプレイ)、海自から哨戒機P-1、救難機US-2が参加した。
終日曇りの天気予報は、早朝に視界が遮られるほどの豪雨に見舞われたものの、開幕してみれば空は開けていた。遠い雲、点在する雲、上層の薄い雲は見られたもののおおむね晴れで、午前、午後を通して全展示飛行が実施された。
オープニング早々にはブルーインパルスJr.の展示飛行もあったほか、グッズなどの売店も活況を呈した。「東松島ステッチガールズ」「清水畳店」といったご当地手作りグッズの売店や、全国の航空祭やイベントに出店する航空&ミリタリー専門グッズ店からは「まっぴい」や「れんがはうす」などが軒を並べた。
ラジオ石巻(FM76.4)が今年も現地中継テントを出して航空祭の実況中継を行った。ラジオ石巻はその中で、東松島市各所に設けられた臨時駐車場の空き状況や交差点の渋滞状況をリアルタイムで伝えるなど、航空祭の一体的な運営に貢献していた。
展示飛行終了後には、退場するブルーインパルスメンバーにファンが集まり、長い列にファンサービスが行われた。MV-22B、US-2、P-1は当日帰投で、最後まで多くのファンが見送った。
松島基地航空祭の特徴
松島基地航空祭の展示飛行の特徴は、何といっても日頃の飛行場訓練とは違う、伝統あるランウェイ33/15で展示飛行を行うことだ。これについては吉田信也元2空佐が航空祭に先立って説明した【説明しよう!】を引用したい。
日常の飛行場訓練はRWY25/07(東西の滑走路)を使用して行っておりますが、この日ばかりは通称「ランウェイ33パターン」といって、観客の皆様がいるランプ(駐機場)地区から最も見やすいパターンに変更して午前、午後共にフライトを行います。
展示基準点(※)は大体「ベースオペレーション(BOPS)」を背にして、ランウェイ33/15(ほぼ南北の滑走路)を直角に結んだラインが中心となります。
(※展示基準点とは、概ねランプ地区などの観客のスペースの真ん中から使用滑走路を直角に結んだライン上の滑走路上の1点をいう。展示はすべてその基準点に向かって行い、交差するものもその1点でできるように調整している)
ブルーインパルス・ハイライト
ブルーインパルスが午前の訓練飛行、午後の展示飛行と2回のフライトを行う松島基地航空祭では、展示区分を変えることで、より多くの課目が実施された。そのハイライトを見てみたい。
松島基地航空祭 午前 訓練飛行
訓練飛行実施課目(4区分)
インディビジュアル・テイクオフ
ダイヤモンド・ダーティー・ローパス
ローアングル・キューバン・テイクオフ
ロールオン・テイクオフ
ファン・ブレイク
4ポイント・ロール
チェンジ・オーバー・ターン
インバーテッド&コンティニュアス・ロール
レベル・オープナー
インバーテッド・ロール
スロー・ロール
レター8
ダブル・ナイフ・エッジ
トレイル・トゥ・ダイヤモンド・ロール
オポジット・コンティニュアス・ロール
4シップ・インバート
スラント・キューピッド
シングル・クローバー・リーフ・ターン
オポジット・トライアングル
ボントン・ロール
デルタ・ローパス
ローリング・コンバット・ピッチ
コーク・スクリュー
訓練飛行実施メンバー
1番機 川島良介3空佐(飛行班長)、後席・松永大誠1空尉
2番機 東島公佑1空尉
3番機 藏元文弥1空尉
4番機 手島孝1空尉
5番機 江口健3空佐、後席・藤井正和3空佐
6番機 加藤拓也1空尉
地上統制官 林幸一郎3空佐(総括班長)
ナレーター 佐藤裕介1空尉
松島基地航空祭 午後 展示飛行
展示飛行実施課目(1区分)
インディビジュアル・テイクオフ
ダイヤモンド・ダーティー・ローパス
ローアングル・キューバン・テイクオフ
ロールオン・テイクオフ
ファン・ブレイク
4ポイント・ロール
チェンジ・オーバー・ターン
インバーテッド&コンティニュアス・ロール
サンライズ
バーティカル・クライム・ロール
スロー・ロール
チェンジ・オーバー・ループ
ハーフ・スロー・ロール
レター8
オポジット・コンティニュアス・ロール
4シップ・インバート
バーティカル・キューピッド
ライン・アブレスト・ローパス
360°ループ
ワイド・トゥ・デルタ・ループ
デルタ・ロール
フェニックス・ループ
バーティカル・キューバン8
スター・クロス
タック・クロス1
ローリング・コンバット・ピッチ
コーク・スクリュー
展示飛行実施メンバー
1番機 名久井朋之2空佐(飛行隊長) 後席・江尻卓2空佐(飛行隊長付)
2番機 東島公佑1空尉
3番機 藏元文弥1空尉
4番機 手島孝1空尉
5番機 江口健3空佐 後席・藤井正和3空佐
6番機 加藤拓也1空尉
地上統制官 川島良介3空佐(飛行班長)
ナレーター 佐藤裕介1空尉