陸自2師団(師団長・井土川陸将)創立73周年、旭川駐(司令・宮﨑陸将補)開設71周年記念行事が6月18日、同駐で挙行された。「威風堂々~地域と共に~」をスローガンに、約4年ぶりに一般開放。観閲式や観閲行進、装備品展示、体験搭乗などのほか、太鼓チームの演奏や音楽隊などが行事を盛り上げた。折しもこの日は、沖縄・宮古島沖のヘリ事故で殉職した10人の隊員の「葬送式」が熊本・健軍駐で岸田文雄首相出席の下、実施されており、参列者や一般参加者らは黙とうを捧げ、10人を偲しのんだ。
午前10時から始まった観閲式には、旭川市の今津市長、衆参国会議員ら多数の来賓が参列。自衛隊からは、2師団隷下の17個部隊、約1000人の隊員が参加した。観閲官の井土川師団長は式辞で、「わが国を取り巻く安全保障環境は極めて厳しい状況にあり、ロシアと国境を接する道北地区に配置され、機動運用を基本とし、わが国防衛の重要正面に戦略機動して任務を遂行することが期待される第2師団としては、一時も目を離すことはできない」と述べた。
その上で、「今後とも、最も重要な正面で最も厳しい任務を完遂して、道民、国民の皆様の負託に応えるという使命を果たす」と強調。改めて、道北地区、日本のあらゆる正面における抑止力・対処力の要としての役割を果たす決意を表明した。その後、旭川駐のほか、2師団隷下の各駐屯地から集まった合同太鼓チームによる太鼓演奏が行われ、豪快なバチさばきに会場は一気に盛り上がりを見せた。
観閲行進では、2師団の車両や戦車などが威風堂々と進み、会場ではその迫力ある姿にくぎ付けとなっていた。さらに、2音楽隊よる音楽演奏では、同隊の男性ボーカル、鎌田3陸曹と女性ボーカル、鍋澤3陸曹が地元・北海道出身の松山千春さんの「大空と大地の中で」、安全地帯のボーカル、玉置浩二さん作曲の「あなたがどこかで」、中島みゆきさんの「糸」の3曲を華麗な歌声で魅了し、注目を集めた。
このほか、駐屯地内では午後から2師団の車両などの装備品を展示したり、90式戦車、高機動車の体験試乗も実施。旭川地本は広報ブースを設置し、制服試着体験などを行い、多くの人たちが足を運ぶなど、地域との交流に努めた。
参加者からは、「観閲式では隊員の一糸乱れぬ動きに感動した」「目の前を通過した2戦車連隊の迫力に圧倒された」「住民や隊員家族らのにぎわいを肌で感じ、(コロナが収まり)、開催できてよかった」などの声が上がっていた。
ヘリ事故の殉職者へ黙とう
2師団、旭川駐の創立・開設記念行事は、ヘリ事故の10人の殉職者を悼む葬送式が同じ6月18日に営まれたこともあり、会場には紅白幕はなく、国旗には弔意を示した喪章リボンがつけられた。
遠く離れた熊本の地で、自衛隊最高指揮官である岸田文雄首相が、「南西防衛の要衝で、強い覚悟と責任感をもって、職務の遂行に全身全霊をささげていた隊員を失ったことは、わが国にとって大きな痛手であり、無念でなりません」と弔辞を述べた同じ日、旭川でも観閲式の冒頭で黙とうが行われるなど、厳かな雰囲気に包まれた。
中でも、10人のうち、前8師団長の故坂本雄一陸将(当時55歳)は地元旭川市の出身で、かつて、2師団に所在する3普連の連隊長兼名寄駐司令を務めていた。2師団によると、坂本陸将はその以前にも、9普連(旭川駐)で小隊長、3普連(名寄駐)で情報幹部、28普連(函館駐)で3中隊長として勤務するなど、出身地だけでなく、任務としても2師団、北海道に大きな関わりがあった。
この日の観閲式では、井土川師団長が式辞の最後に、「2師団の精強化にただならぬ貢献をされた坂本陸将を含む10人に追悼の誠を捧げるとともに、その遺志をわれわれ2師団の全隊員がしっかりと引き継ぎ、2師団の使命を果たし続ける」と誓っていた。式典で音楽演奏を実施した2音楽隊は、曲目紹介とともに「故坂本雄一陸将を偲んで」との思いも込めてメロディーと歌を届けた。