「若人として武人として育て上げる」練習艦隊司令官

 海上自衛隊OBで組織する「水交会」(理事長・杉本元海幕長)は5月16日、東京都内で令和5年度「日本国練習艦隊壮行会」を4年ぶりに開催した。水交会関係者や来賓ら約320人が出席。遠洋練習航海に旅立つ、実習幹部らを激励した。

 壮行会の冒頭、水交会の杉本理事長があいさつに立ち、「練習艦隊壮行会は、海上自衛隊の諸活動に対する協力支援の一環である」と述べた上で、実習幹部に対して「健康に留意し、しっかりと実習に励んでもらいたい」と呼び掛けた。

水交会の杉本理事長

 続いて、練習艦隊司令官の今野海将補が「帰国した際には、実際の部隊で活躍できる若人として武人として育て上げる」と述べた。

練習艦隊司令官・今野海将補

 遠洋練習航海は、一般幹部候補生課程を修了した実習幹部を対象に、幹部自衛官としての必要な資質を育成するのが目的。今回は、練習艦「かしま」「はたかぜ」の2隻を派遣。人員は実習幹部約160人を含む約560人(うち女性約20人)で、米国やカナダ、ペルーなど8カ国(11寄港地)を訪れる。期間は5月25日から10月20日までの149日間。総航程は約5万2400キロに及ぶ。

 遠洋練習航海に参加する実習幹部の一人は、「初めてのことなので不安はあるが、今回の練習航海を通じて憧れの海上自衛官になるための知識や技術を身に付けたい」と意気込んだ。

実習幹部ら

 海幕広報室によると、練習艦「かしま」「はたかぜ」は5月25日、神奈川県横須賀市の横須賀港逸見岸壁(横須賀地方総監部)を出発した。

 同港では出港に先立ち、出国行事が行われ、鈴木敦夫防衛事務次官の訓示、酒井海幕長の壮行の辞の後、練習艦隊司令官が出国報告をし、多くの人たちに見送られ、横須賀港を後にした。

令和5年度遠洋練習航海で8カ国を訪問

 海上幕僚監部は5月19日、「令和5年度遠洋練習航海」の実施内容を発表した。

 海幕によると、今回の練習航海の訪問国(カッコ内は寄港地)は、(1)アメリカ(ダッチハーバー、サンディエゴ、パールハーバー)(2)カナダ(ヴィクトリア)(3)メキシコ(マンサニージョ)(4)ペルー(カヤオ)(5)チリ(バルパライソ)(6)アルゼンチン(ブエノスアイレス)(7)ブラジル(リオデジャネイロ、レシフェ)(8)コロンビア(カルタヘナ)。

 初級幹部に対し、外洋航海を通じて学校などで習得した知識や技能を実地に習得させるとともに、諸外国との共同訓練などを実施するほか、日本海、オホーツク海、太平洋、カリブ海、大西洋などの海域を航行することで、諸外国の活動状況を理解させ、国際感覚を涵養(かんよう)するねらいがある。

 また、訪問国との友好親善の増進や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与するのも目的の一つだ。

 遠洋航海は、昭和32年以降、毎年実施しており、今回で67回目となる。


◆関連リンク
公益財団法人 水交会
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<編集部より>

 「船乗り」になる以上、その任務の多くは海の上。それも、いったん大海原に出れば長い期間、陸に揚がることはなくなります。もちろん、外国航路の船員から漁師さんも皆、船乗りですが、個人的には「海の男」といえば海上自衛官がぴったり当てはまる気がします。近年の安全保障環境の厳しさの最たることは、中国による海洋進出。それだけ、「海を護(まも)る」海上自衛隊の責務は重大で、期待の大きさもハンパないのです。さまざまな意味を込めて、最も「海の男」らしいと思う理由なのです。

 こうした、まさに「荒波」に飛び込み、それも牽引する指揮官の道を選択した幹部候補生たちの149日間におよぶ遠洋練習航海は、一人ひとりの意識を大きく変えるだけでなく、日本国にとっても極めて重要な行事です。

 今回、水交社とのご縁でその壮行会の取材をさせていただくことができました。防衛日報社としてはかつてない取材でしたので、トップ記事として大きく紹介しました。立ち会った記者は、練習航海に立ち向かう「海の男の卵たち」のきりりとした表情と熱き言葉が印象的だった、と話しています。約5カ月後、彼ら、彼女らが大きな「土産」を携えて帰還した時には、もう一度、成長した姿をお届けしたいと考えています。

 2面ほかでは、時期ものの「演習場春季定期整備」の報告が多く寄せられましたので、まとめてみました。

その他の防衛日報の記事はPDFにてご覧ください。

→防衛日報5月29日付PDF