旭川駐屯地司令、宮崎陸将補にインタビューいたしました。
 街とのかかわり、隊員について、現在の防衛についてなどを語っていただきました。

まず、旭川市との関係についてお聞きします

 宮﨑司令 「一般的に駐屯地は、古くからある都市の近郊や市町村の誘致により開設されますが、旭川駐屯地は旧軍の第七(しち)師団が明治の開拓期に当時は原野だった旭川に札幌から移駐したことにより開設されました。同時に、それに伴って移住した人々とともに旭川の街が形成され、発展してきました。即ち、旭川の起源は軍であり、まさに軍都旭川なのです。よって、旭川駐屯地は旭川の街・市民とともに歴史を重ねており、自衛隊に対する深い理解と熱烈な応援をいただいています」

令和4年度旭川駐屯地夏まつり
新型コロナウイルスの早期収束と地域・全国の皆さまの励みとなればとの思いを込めて(2師団YouTubeより)

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 「例えば、平成15年からのイラク派遣では、旭川からも多くの隊員が派遣されましたが、市民の皆様からは隊員の無事の帰還を願って街の中心部にたくさんの黄色いハンカチを掲げていただきました。このように、市民の皆様とは歴史的な経緯もあり、大変良い関係にあると思っています」

隊員の無事の帰還を願って掲げられた黄色いハンカチ(旭川駐屯地提供)

隊員の気質はどうですか

 司令 「駐屯地に所属する隊員は、北海道出身者だけではなく全国から集まっているので、地域の強い特性があるといった感じではなく、逆に多様性が豊かだと思います。また、特に道外出身の若い隊員たちは、スキーをはじめとした北海道ならではの訓練やレジャー、地域行事の協力を通じて団結を深めているように感じています」

旭川冬まつりへの協力(2師団Twitterより)

旭川冬まつりへの協力(2師団Twitterより)

3年ぶりに開催された沼田町夜高あんどん祭りに参加(2師団Twitterより)

地本長(札幌)から駐屯地司令に代わり、募集への取り組み方は変わりましたか

 司令 「地本長としての募集業務は、自治体の首長や高校の校長先生、大学・専門学校の職員に加え、募集相談員や家族会などの協力者との連携が主になりますが、駐屯地司令としては、『われわれの意志を継いでくれる後輩は、自ら見つける』という隊員自主募集制度に基づく隊員への啓発や地本と連携した活動を行っています。この際、募集活動は部隊の任務であることを強く意識して募集業務に取り組んでいます」 

地本との連携は

 司令 「総合的な学習の時間や職業体験などで地本の広報官に引率されて駐屯地を訪れる学生さんに職業としての自衛官や職場としての駐屯地の魅力を感じてもらえるように、見学や研修の内容を充実させたり、実弾射撃を含め、演習場で行う訓練や競技会の場にも学生に加えて募集や援護の関係者に来ていただいて、自衛官の活動する姿を直接見てもらい、職業や人材としての自衛官の魅力を発信するといった連携ですね」

旭川駐屯地見学会(旭川地本Twitterより)

退職後の安心が募集につながると思いますが

 司令 「定年退職であれ、任期満了退職であれ、自衛官としてのキャリアや資格が退職後の仕事に生かせる、または自衛官としてのキャリアに高い付加価値を付けてくれる企業に安定的に再就職できる環境は、長い人生の中の一時期を自衛官として過ごすことの魅力になりますので、自衛官を志すインセンティブになると思います」

旭川駐は毎日、ツイッターでお昼ご飯のメニューをあげていますね

 司令 「自衛隊の魅力や活動紹介の一環として、普段の駐屯地のことを広報する目的もありますが、遠くに住む隊員の親御さんらにフォローしてもらい、『うちの息子(娘)はきょう、何を食べたかな」「自衛隊に入ると毎日、おいしいご飯が食べられるんだね」など、日々の生活環境も充実していることを発信し、安心してもらう意図もあります」 

北鎮野菜カレーほか(陸上自衛隊旭川駐屯地【公式】食事Instagramより)

毎日の食事を配信!
(左)陸上自衛隊旭川駐屯地Instagram(右)陸上自衛隊旭川駐屯地【公式】食事Instagram より

SNS以外にも、隊員の親御さんに安心してもらうために何かされていますか

 司令 「コロナ禍で制約もありましたが、入隊式、教育修了式にはできる限り保護者やご家族を招待するようにしており、教育の成果に加え、生活隊舎などの生活環境も確認していただくようにしています」

 《司令によると、陸自隊員は北海道に3万人以上いる。日本の人口比率で見ても北海道の自衛官人口は多く、北海道の自衛隊を維持するのに、道産子だけでは維持できないのだという》 

隊員に言ってほしいなと思うことはありますか

 司令 「特に『Z世代』といわれる若い隊員からの声を聞きたいですね。この世代の考えや気持ちは、われわれ昭和世代にはなかなかわからない(笑)。

 われわれの価値感や尺度とは違うので、われわれの考えを押し付けても理解されないように思います。ですので、Z世代の若い隊員から駐屯地をより良くするためのアイデアや気付きについて提案してくれるとうれしいですね。

 生活の場としての駐屯地の環境は、自らが当事者として考え、主体的に改善していくべきものだとも思いますので、『下意上達』でいきたいなと思っています」

 また、若年隊員の職場や生活環境に対する満足度は、募集効果にも直結するものだと思っています」

インタビュー中、笑顔で応える宮﨑司令

昨年12月に「安保3文書」が改定され、自衛隊が国民に注目されています

 司令 「今年は『防衛力強化実行元年』という位置づけの年です。第一線部隊である第2師団・旭川駐屯地として、示された戦略や計画をいかにスピード感をもって具現していくか。事態が起こった時、それに対応する対処能力の実効性をどう高めていくかが、われわれに課せられている課題ですね」

任務遂行に向け、覚悟の年となりそうですね

 司令 「今までは装備が古いから、予算がないから、環境が整っていないからなどの言い訳ができたかもしれませんが、これからはできません。周辺の脅威対象国からは試されていますし、国民が期待する役割にしっかり応えられる能力を付けなければいけません。このことを隊員にしっかり伝え、意識改革を図り、実行していくことが私の仕事だと思っています」

最後に、その中で2師団、旭川駐屯地が持つ意義をお願いします

 司令 「昨年、第2師団は『北鎮機動師団』に改編されました。

Twitter: @JGSDF_NA_2D tweet

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 従来の『北鎮』に加えて日本全国へ展開する『機動』を担う役割が付加されました。新たな役割である『機動』の能力を強化するのは当然ですが、一方で、積雪寒冷地に所在する部隊・駐屯地は限られています。道北に位置する第2師団・旭川駐屯地は積雪寒冷地の中でも極めて厳しい環境にあり、ここで培っている技術・戦技能力という伝統を継承していくことも極めて重要です。1月に師団冬季戦技競技会(射撃を伴うスキー)を実施し、技量の維持向上を図りましたが、この分野については歴史と伝統のある北鎮師団として、矜持(きょうじ)をもって取り組み、それをしっかり継承していかなくてはならないと思っています」 (聞き手・河合恵)

師団冬季戦技競技会(2師団Twitterより)

師団冬季戦技競技会(2師団Twitterより)


 宮﨑 章(みやざき・あきら)陸将補 福岡県久留米市出身。平成6年入隊。第5地対艦ミサイル連隊長、陸幕防衛部防衛協力課長、札幌地本長など歴任。防大38期。51歳。


◆関連リンク
陸上自衛隊 第2師団
https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/

陸上自衛隊 旭川駐屯地
https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/unit/butai/asahikawa/tyuutonnti/tyuutonnti.html


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→防衛日報3月24日付PDF